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OuDiaは「清書」に使う。列車ごとに考えた箱ダイヤを組み上げて路線全体の運行計画をつくる。「たろうじかん」「脱技能化」「ダイヤホール」とは。(最終更新:2025年2月19日)
「OuDia」は、take-okmさん作のダイヤグラム描画ツールです。鉄道ライターの杉山淳一氏が執筆(※カナ入力)した「A列車で行こう9 公式エキスパートガイドブック」で「OuDia」を使った「A列車」の楽しみ方が詳しく解説されています。しかし「ダイヤグラムを描く」ことはゲームの攻略に不可欠ではなく、本書の大部分(ページ数にして87.5%)は「ダイヤグラムを描く」こと以外の重要な知識の紹介に割かれています。その上で本書では「OuDia」より前に「Microsoft Excel」と「Microsoft PowerPoint」を使って「ダイヤグラム」を描いてみせています。そもそも「ダイヤグラム」は小学校の算数で習うもので、定規さえあれば描けるもの。「ダイヤグラムを描く」方法が「OuDia」だけではないことを再確認してください。
スマホとPS4
PS4版「A列車で行こうExp.」のプレーヤーに多いようですが、わけもわからぬままOuDiaを使おうとして、OuDiaがWindows以外のPCやスマホでは使えないことを知ると途方に暮れる人がいるようです。
ドローイング(描画)の方法とデジタイズ(デジタル化)の方法を分けて考えよう
- ダイヤグラムを紙に手書きしてスマホで撮影する方法
- ダイヤグラムを表計算ソフトの「線」のツールで描いて画面を保存(スクリーンショット)する方法
スマホで画像ファイルとして送信や共有したいからといって、ダイヤグラムをスマホで描かなければいけないという決まりはありません。1つの目的を達成するために複数の道具を段階ごとに使い分けましょう。
- 「スキル向上のための訓練です」「模写を自身のイラストの実力と勘違いしている方」(2014年3月7日):
ネットのない時代に幼少期を過ごした僕ちゃんの世代では、自由帳に漫画ヒーローを描きまくって学校へ持って行って見せ合って上手いだの下手だの言い合って遊んだんだな~長年Windowsを使ってきた歴戦の鉄道ファンやゲーマーの間ではOuDiaがデファクトスタンダード(お互いに見慣れているので話が早い)になっています。Windows版「A列車で行こう9」をプレーしているのにOuDia以外の道具(※OuDiaの改造版を含む)でダイヤグラムを描いていると、この業界の常識を知らないという幼稚な感じや、知っていてわざと逆らおうとする反抗的な感じに見えてしまう場合がありますので、じゅうぶんにご注意ください。
※「COSMOS」の読み方(発音)は不明ですが東北っぽく「こずもず」と発音することも許容されると思うし、許容されたいとも思います。ちなみに「cosmos」の対義語は「chaos」なのが趣深い。
※Googleレンズを使うと画像内のテキストを認識して翻訳できる。(上掲画像の英語への翻訳結果は確認済み)
Googleでは「A列車で行こう ダイヤ作成 ツール」という検索をするひとが多いといいます。そんなものはありません。「ダイヤ作成」は知識であり技能であります。「ツール」さえあればできる、逆にいえば、じぶんがうまくできないのは「よいツール」がないからだ、といった言い分で「ツールのせい」にしてしまうきらいがありませんか。「OuDia」は、take-okmさん作のダイヤグラム描画ツールです。OuDiaは「描画」のツールですから、「作成」ということについては何も手助けしてくれません。どのようなダイヤを「作成」するのかは、あなた自身の知識と技能、それに、そもそもあなたは何をどうしたいのかということにかかっています。
ダイヤグラムの線の傾きは速度を表わします。線の傾きを決めて線を描けば、描いた線から時刻と位置を読み取ることができるのがダイヤグラムです。「OuDia」は、これとは逆向きの作業を行なうツールです。(市販の時刻表を入手して)あらかじめわかっている位置と時刻を入力すると線を描いてくれるツールなのです。「A列車で行こう」というゲームでプレーヤーがやりたいのは、「OuDia」とは逆向きの作業です。列車の速度を決めて走らせる。これは、大きな紙にいきなり直線を引くがごとく直感的な作業です。せっかく「A列車で行こう」というゲームがこれほどにも直感的で遊びやすくできているというのに、わざわざ「OuDia」を使うのは冷凍したいものを電子レンジで加熱してから熱いまま冷凍庫に入れるかのような非常に二度手間なことです。
※「たろう」が1往復するのにかかった「じかん」を「1たろうじかん」とする物理の運動、数学の微分積分の説明では「(軸上の点としての)時刻」ではなく「(量としての)時間」ですが、ここではダイヤグラムの話なので「時刻」にしました。
「A列車で行こう9」はゲームです。ゲームソフトを起動して、3Dグラフィックで列車が走り回るのをぼーっと眺めて日が暮れるアクアリウムの休日なのです。「時刻表」の形式で書き下して何がうれしいでしょうか。
「ダイヤ作成 ツール」という検索で、このサイトの「ツール」のページを訪れた挙句、「座標」と「作図」という用語の意味を正しく理解しないまま、このサイトが提供しているツールの使い方がまったく理解できないまま怒って帰っていく人がいるようです。このサイトは高校生以上を対象にしています。中学生ではないのですから「座標」を「数学の時間に出てくる『マス目(?)』のこと」あるいは「数学の時間に描かされる『グラフの線(?)』のこと」などと誤解していてはいけませんし、「作図」といえば「数学の時間にコンパスや定規で『図形やグラフ(?)』を描くこと」以外は考えられないというのもいけません。大人ならなおさらです。このサイト(neorail.jp)の「NMPC-L64」を使えば距離と乗客数を勘案した「ダイヤ作成」ができますが「ダイヤグラム」が描けるツールではありませんし、ダイヤそのものを作成するツールでもありません。「PAL8-CNV」はマップのセーブデータ(のバイナリ)を読み込ませるツールではありませんし、ましてやマップのデータから自動的に「NMPC-L64」や「箱ダイヤ計算機EX(EW72-TPR)」のデータに変換することなどできません。その「箱ダイヤ計算機EX(EW72-TPR)」がダイヤそのものを作成するツールではないのも、もちろんです。ひどい場合には、全角と半角の区別すらわかっていない人がフォームに全角で入力して途方に暮れているようすがあります。いきなり「ダイヤ作成 ツール」を探してしまう前に、用語と概念を正しく理解してください。単に言葉として聞いたことがあるとか覚えているというだけではだめです。「知っている(だけ)」と「理解している」は別のことです。数学の問題は解けていても理解はできておらず説明ができない人がいます。こういう人は目の前で使い方を実演してもらうまで使い方を理解することができず、説明だけを読んで理解するということがまったくできません。まさに「座標」と「作図」という用語を中学校の数学の時間に聞いて「知っている」だけでは、このサイトのツールは使いこなせないのです。その上で、このサイトのツールは考え方を理解するまでの自転車の補助輪のようなもの。考え方が理解できたなら、実際に使う「ツール」は表計算ソフトでもグラフィックソフトでも、なんでもよいのです。このサイトのツールだけを見ると、中高生くらいの年齢の人(14歳や17歳の人)にとっては何か馬鹿にされたような気がして腹が立つかもしれませんが、これは考え方を確実に理解するために、あえて自転車の補助輪のようなことをしているのです。自転車に乗れるようになるまでの間には自転車の補助輪がどれほど大事なものだったかをあなたも知っているはずです。内輪差の概念は児童交通公園のゴーカートで体得しておかないと手遅れです。運転免許を持っているのに台車で荷物を運ぶときにうまく曲がれず縁石に乗り上げたり壁に接触したりする人がいます。
Googleで「A列車で行こう ダイヤ作成 ツール」と検索するほどにも「ダイヤ作成」に興味を持ったのであれば、よい機会です。このページ「ダイヤグラム総合」の目次から順番に読み進み、1つでも多くの知識を獲得し、着実な技能として鍛え上げていってください。そうして体得された技能と確かな知識(繰り返しの経験に裏付けられた実感をともなう知識=「耳学問」ではない)は、ゲーム「A列車で行こう」の些細なバージョンの違いやゲーム機の種類といった表面的なことには左右されない、ずっと楽しめる趣味の礎になるでしょう。自転車の補助輪ではないですが、いつしかGoogleでの検索からも「A列車で行こう」と「ツール」が外れて、「ダイヤ作成」そのものについて検索していけるようになることでしょう。
NIE(Newspaper in Education)は、日本では「教育に新聞を」と呼ばれて知られています。A列車とOuDiaを楽しむための知識を学ぶには、NIEの方法が応用できます。
全国紙の読み比べ | JR時刻表とJTB時刻表の読み比べ |
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ブロック紙・県紙を見る | MY LINE(マイライン)東京時刻表を見る |
業界紙を知る | 貨物時刻表を知る |
灰色文献を集める | ポケット時刻表を集める |
新聞を使った学びの集大成が「新聞を作ること」であるなら、時刻表を使った学びの集大成として「時刻表を作る」ことになるでしょうか。新聞を読むにも書くにも辞書と事典が必要です。OuDiaとA列車に関しては、鉄道模型のカタログにある読み物や用語解説、地図帳の巻末の理科年表、それにウィキペディアが、その役割をよく果たしてくれるでしょう。なお、辞書や事典(それに新聞も)は通常、参考文献には含めません。簡便な方法で容易に学ぶことができる基本的なことがらについて、じぶんで学ぼうとしないまま安易に他人に質問してはいけません。学ぶ機会を奪うようなかたちで事細かな指示だけを出すのもよくないことです。どんどん「考えない人」にされてしまいます。…手遅れかもしれませんが。
※鉄道模型は、小学校低学年のうちにカタログと入門セットから始めるものです。中学生になってから車両セットだけをいきなり買い、カタログもリレーラーも持っていないのでは、鉄道模型に入門したとは言えません。
この業界ではどんな言葉を使うのか。どんなジョークは許されて、どんなジョークは許されないのか。習うより慣れろといいます。
県庁所在地の『駅前大学』と「画材屋」
ピンクのうさぎの「駅前留学」は、言わずと知れた『駅前大学』のもじり。県庁所在地には国立大学があり、国立大学があると中古パソコン屋があり、そして画材屋があります。家庭へのパソコンの普及はいまでも県庁所在地に偏っているのではないでしょうか。「ダイヤグラム」は手書きできるということを考えもせず、「A列車といえばOuDia!」「A列車といえばOuDia!」と1つ覚えしてしまう人が出てくる背景には、実は県庁所在地とその他の地域における何らかの格差があるのではないかと思えてきます。
例えばこんなものがあります
- A3の5mm方眼ノート:A3や5mmに限らず何でもあります
- 複写式の便箋(横罫):便箋に限りませんが要するに伝票ではない様式で複写のものがあります
- ファックス原稿用紙:コピー機やファックスで罫が写りません
- 色模造紙:模造紙は白だけではありません
そんなヘンテコなものは通販で買うか、100円ショップにあったらラッキー、などと思っている人のほうが多いだろうと思いますが、県庁所在地の国立大学からせいぜい2km圏では駅前に画材屋があって、こうしたものをふらっと行ってすぐに買えるのでした。こうした環境を前提に、いわゆる学習塾以外の「習い事」もさかんです。消耗品を子ども自身が徒歩や自転車で買いに行けるというのは、なんと恵まれたことでしょう。
パソコンというものをいわゆる家電量販店で買う時代になる前は、どこでどうやって買っていたでしょうか。NECなどのメーカーに(工場でも営業でもなんでもよいので)勤めている人が「社員価格」で買う(あるいはノルマ未達成の分を自腹で買って親類縁者に配って回る)、農家が農協を通じて買う(個人の買い物ではなく設備投資)、大学生が大学生協を通じて買う(気持ち程度には学割で買える)、ダイエーで山積みされた8万円のコンパックを割賦で買ってマイカーで持ち帰るなど、いろいろなようすがあったようです。これらはあくまで昔話ですが、いまはかえって(私物の)パソコンがなくても生活できるようになり、(私物の)パソコンをどこでどうやって買うのかということが再び、知らない人はまったく知らないという状況に戻っていっているということはないでしょうか。
- 「教育格差に対する家庭レベルでの認識の課題」(2021年11月11日):
“たとえば最近、中学校などで放課後に無償で勉強を教えてもらえるという学習支援のボランティアがさかんに行われていますが、それを利用する生徒が固定してきてしまい、本来であればそこに来てもらいたい子が必ずしも来ないという話を聞いたことあります。”
“「恵まれない家庭では奨学金のハードルを必要以上に高く見積もる」といった意識や認知、情報のバイアスがあり、それが格差解消の壁になっていると指摘しています。”
- Z会エクタス「エクタス社会」(2019年10月7日):
北海道の総人口のうち,札幌市に住んでいる人が37.2%にのぼるということです。/京都府のように人口の過半数が人口1位の都市に集まっているところもあれば,茨城県のように人口1位の水戸市に住む割合は10%に満たない県もあります。/さいたま市や千葉市はいずれも東京都市圏にふくまれ多くの人口をかかえる都市ですが,より都心に近い川口市や船橋市も人口が増加しているため,集中度はさほど高くありません。
- 農業協同組合新聞「地域によってまだ格差が」(2002年2月):
東海64.4%、近畿64.1%の所有率が高く、東北47.1%、九州・沖縄39.4%の所有率が低く東海と九州・沖縄では25ポイントも差がある。とくに九州・沖縄では「パソコンを購入する予定がない」という農家が43.5%もあり、他地域の22.6~35%と際だった対照をみせている。Windows版の「A列車で行こう9」は、Windows版であることと定価が16,800円もすることによって、客層が非常に限られます。そもそも電車になじみがないと興味すら持たれないはずのものです。そうした要求のほとんどは、実は県庁所在地に生まれてからずっと住んでいれば難なく満たすもの。
生まれる前から電車に乗り生まれてからずっと県庁所在地に住んでいるならきっと知っているはずだということを知らない、「ダイヤグラム」は手書きできるということを考えもせず、「A列車といえばOuDia!」「A列車といえばOuDia!」と1つ覚えしてしまう人が出てくるのは不可解なことで、「A列車で行こう9」というゲームに向き合う準備のできていない未熟な態度であるように思います。※沖縄県を除く。
※客層は限られるが人口の集中を考慮すれば実数は多く効率的にリーチ可能。
ここでは「ダイヤグラム」と呼ばれる図表の描き方についての注意やコツを中心に見ていこうと思います。ダイヤの中身ではなく、ダイヤグラムというデータ表現について理解するのが目的です。ここで例示するダイヤがかっこいいかどうかは不問とします。また、ダイヤグラムを描くために使う定番のフリーソフト「OuDia」の使い方は説明しません。「OuDia」の作者が用意している説明を読んで、あらかじめばっちり使えるようになっておいてください。紙の時刻表も手元に何冊かある、できれば貨物時刻表もあるという状況にみなさんがあることを期待します。
ダイヤグラムの描画には「OuDia」を使用しましたが、このような運行を考える作業は(概ね)ゲームの中だけで行ないました。ゲーム内でできたものを「OuDia」で清書しただけです。「OuDia」を使うと何か自動でかっこよい運行ができるというものではないのです。(あたりまえですが念のため。)
ダイヤグラムという図の形式は、一覧性の高さ(1度に全体が見えること)こそが利点です。解像度が低いノートPCなどでスクロールしながら「OuDia」を使うのでは、まったく台無しです。そんな残念なことをするくらいなら、どこのご家庭にもある広い机に大きな紙を広げて手書きしようではありませんか。あるいは外付けのフルHDのモニターをなんとしてでも入手(9,990円~)しましょう。ビバ! マルチモニター。
OuDiaとA列車の誤解には、A列車の誤解とOuDiaの誤解、それにOuDiaとA列車の誤解があります。
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A列車というゲームの中でどのようなダイヤを組みたいかは自分で考えて自分で決めることです。自分では何も考えず現実のダイヤを『完全再現』しようとして、それがA列車の機能ではできないとわかると、途端にA列車というゲームを見下すようになってしまう人がいるようですが、これは適切な態度でしょうか。そもそもあなたは何がしたいのでしょうか。したいこともないのに無理にしようとする必要などありません。ゲームの動画を無理やり作らされるなど、やりたくもないのにやらされているというのは他人の目にははっきりわかるものです。
本物の鉄道には、鉄道以前の技術の集大成として鉄道ができているという面があります。ゲームでも、マップやダイヤを作ることには、プレーヤー自身のそれまでの学習の集大成となる面があります。幼稚園・小学校・中学校・高等学校での学習の集大成として大学入学共通テストに挑む高校生なら問題ないでしょう。A列車のマップやダイヤには、おおげさにいえばプレーヤーの生き方、ひかえめにいってもその人となりが如実に反映されます。給食と昼寝のある認定こども園や保育所に入れられてしまった人には相当の不利がありますので全力で挽回してください。
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※筆者は千葉県人なので、やたら詳しく教わった印旛沼と手賀沼、そこを渡らないとよそへ行けない江戸川と利根川を大きな存在と感じ、A列車でもそのような地形を無意識に選び取るようすがおわかりいただけるでしょう。千葉の鉄道は県内をぐるぐるするばかりでどこへも行かないことから、まっすぐ遠くまで行く東海道線や中央本線には何らかのあこがれがあるわけです。
A列車でダイヤを組むときは、ロボットにでもなったつもりで無心に手を動かします。とはいえ無駄な作業はしません。ポイント分岐設定は、線路を敷いた時点で決まりきった設定というものが自然に決まりますから、これを設定して「全列車に適用」しておきます。ダイヤ設定は車両(編成)ごとに1つずつ設定するのではなく、「発車間隔時間」と「停車時間」を使って、その時刻に実際に発着する車両がどの車両でもよいように設定(いわばワイルドカード化)しておき、「全列車に適用」あるいは必要な数(や種類)の車両(編成)に「コピー」します。「Train」のリストからの「コピー」では駅のダイヤ設定とポイント分岐設定の両方が一度にコピーされます。(折り返しも追い越しもない)途中駅に発車時刻は設定しませんし、ましてや「個別発車」の設定は使いません。これは、設定が面倒だから手抜きするという消極的な意味ではなく、途中駅ではどんな時刻に列車が来ても一定の停車時間で発車もしくは通過するように設定(いわばワイルドカード化)しておくという積極的な意味があります。ダイヤを修正・変更するときは始発駅で「発車間隔時間」を動かすだけでぜんぶ動きます。最初に「全列車に適用」しておいたポイント分岐設定だけでは足りないくらい列車を増やしていくときには、例外的に(英:exceptionally)/変則的に(英:anomalistically)ポイント分岐設定を変更した車両(編成)を用意し、設定値を混同しないよう細心の注意を払って追加的に(英:additionally)/都合よく(英:conveniently)走らせます。
ゲームの中で自分が行なう操作について、英語の副詞を使って客観的に認識しながら操作を行なっていくことは、英語の学習が佳境を迎えた高校2年生からは、じゅうぶんにできることでしょう。高校の英語科の教員がそのようなことを明示的に教えるわけではありませんが、英語科の教員が英語そして日本語をどのように運用しているのかというメタな部分を観察する余力が生徒に出てくるということです。日本語の母語話者にとって、母語である日本語のまま客観的な認識をするのはかなり難しいことなので、ここは英語を借りると格段に楽です。文系でも理系でも英語ができないと大学入学共通テストを突破できません。大学入学共通テストを突破していない大学生(※3年次編入を含む)をただちに全否定するものではありませんが、鉄道会社『で』ダイヤを作成しているのは英語も数学もできて大学を出た人たちであり、鉄道会社『に』どのようにダイヤを作成させるかを決めているのは国語もできて博士号を取った工学博士たちなのです。この意味では、ダイヤ作成に必要なのは英語そして国語だということができます。…いわないかもしれませんが。
箱ダイヤは、ダイヤグラムの中の1本の線つまり1本の列車の行路(仕業)を抜き出して、1枚の紙に書いたもの。逆に、ダイヤグラムはすべての列車の箱ダイヤを1枚の図面にまとめて描いたものといえます。ここでは説明のためにわざわざ箱ダイヤを書いていますが、ゲームの中の機能だけできちんとダイヤ(運行計画)は組めて列車は走りますので、ゲームを楽しむために箱ダイヤを書かないといけないという関係にはないことを理解してください。「鉄道ダイヤ情報」という非常にマニアックで現場的な雑誌には、甲種輸送などの特別な列車の運行予定が文字だけで延々と書かれています。このような雑誌が商業ベースで成り立つとは、つくづく日本という国は不思議な国です。
Googleでは「A列車で行こう ダイヤ 組み方」という検索が多いといいます。この「組み方」という言い方は、どのようなニュアンスやイメージでしょうか。「組む」という言葉は「(野球チームの)打線を組んでみた」「(カードゲームの)デッキを組んでみた」といったことにも使います。「箱ダイヤ」は、まさに野球の打者やカードゲームのカードのイメージです。「箱ダイヤ」というかたちの打者やカードを「組んでみた」という感覚が「ダイヤ 組み方」という言い方のイメージそのものでしょう。このことは「箱ダイヤ」を知ることで初めて理解できるもので、「箱ダイヤ」を知らないままダイヤグラムだけをいくら眺めていても、わかることのないことだとわかります。
(作成:2013年2月14日)
ゲーム「A列車で行こう」の中でプレーヤーが作成したダイヤ(自作ダイヤ)は、自分ではよくわかりおもしろく満足ですが、その「みどころ」を他人に伝えるのはなかなか至難の業。いわゆるゼロ年代(2000~2009年)のホームページやウェブ日記(ブログの前身)では、サーバーの容量が小さかったことや家庭までの回線も遅かったことなどから、ゲームのプレーを動画で紹介することは困難でした。そこでプレーヤーたちが考え出したのが「OuDia」で自作ダイヤを描いてネットに載せることでした。もともと「OuDia」の界隈では実在の鉄道路線の「改善ダイヤ」の「私案」といったものを思い思いに描いてネットに載せるという楽しみが広まっていました。社会のことに関心を持ち、社会とつながろうという欲求はわたしたちの誰もが自然に持つものです。
2011年3月11日、東日本大震災が起きるとネットの空気は一変。携帯電話が通じず公衆電話も減り、地デジ(地上波デジタル放送)のせいで「停電時は総合テレビの音声を乾電池のFMラジオで聞く」という方法は使えないと認識されるようになっていっていた中で、パニック的に「ツイッター」が持ち上げられ、「ツイッター」を使いさえすれば情報が得られるという過大な期待が社会に蔓延してしまったように思います。NTTは発災前から綿密な計画を作成しており、東日本大震災でも避難所などに臨時の公衆電話を用意するなど万全の対応を取っていたのに、わたしたちはあろうことか「公衆電話の列に並ぶ」ということが我慢ならず「いますぐ待たずに使えるツイッター」に飛びつくということが起きていたように思います。
もともと「ツイッター」は「SNS」いわゆる「出会い系」のサービスです。「転職」がさかんな「西海岸」のエンジニアたちが作り、そのうち「新卒」の人も職探し(コネづくり)に使うようになりました。その後の「インスタグラム」ほどではありませんが、職探しという目的ゆえ「自分を飾り立てる」投稿が増えていきました。日本では、2009年にもなると大学生の就活ツールの1つという認識になっていたと思います。2011年3月11日に「ツイッター」に飛びついたのは、そもそも「ツイッター」を(も)使って2010年4月に放送局や新聞社に就職したばかりの、あまりにもよちよち歩きの人たちではなかったでしょうか。いまにして思えば、なんてことをしてくれたのだとしか思えません。
「年寄り」が安易に「あとは若い者にまかせて」などと言い放って若手の指導と監督を放棄するようなことは、どうしても起きてしまいがち。東日本大震災での「ツイッター」には、そういう背景があったと思います。「OuDia」の界隈でも、家庭でのパソコンの普及率がピークだった2005年を過ぎると「年寄り」の姿はめっきり減りました。「パソコン通信」や「掲示板」で「新人」が鍛えられるというシステムが崩れ、いきなり「OuDia」というフリーソフトだけが目の前にあるという状態に置かれた子どもが何をするかといえば、社会への関心をまったく持たないかのような「架空鉄道」をでっち上げて、まったく社会とつながろうとせず自分だけで自分勝手に「架空鉄道」を巨大にしていく、そんなことになっていたと思います。
鉄道ライターの杉山淳一氏が執筆(※カナ入力)した公式エキスパートガイドブックでは「OuDia」について「ユーザーが集う掲示板」を参照せよとしていますが、それが可能だったのは2005年ごろまで。2005年にはかろうじて1997年くらいから大人気を博した「最大手」の「レンタル掲示板」がそのまま動いていましたが、その後、ネットからは完全に消えてしまっています。2011年4月13日に刊行された同書は、その6年前の知識で書かれていたのでした。いまや「ユーザーが集う掲示板」で「OuDia」について「年寄り」から厳しく指導してもらうことは、かなわないのです。同じことはこれからも起きるでしょう。いまある「攻略ウィキ」も、いずれは消え去るのです。
それでも、誰からも何の指導も監督も受けられない状況に追いやられた子どもであってなお、誰しも社会のことに関心を持ち、社会とつながろうという欲求は必ずあるもの。ゲーム「A列車で行こう」のプレー動画でも「架空鉄道」でも、ニュースで聞いた言葉を不謹慎なまでに脈絡なく混ぜたものや、同じ「タグ」をつけることで仲間意識を持とうとするようすなどが見られます。わたしたち「大人」は何をすべきでしょうか。そもそも「わたしたち」は「大人」なのでしょうか。少なくとも「架空鉄道」(※「地図」「路線図」を含む)に没頭する子どもを面白半分でからかい気味に紹介するテレビ番組など放送してはいけないと思います。
※ほめ称えるならよいということではなく取り上げること自体が適切でない。
- 真山隼人「震災カメラマン」(2025年1月20日):
阪神・淡路大震災の状況を撮影し続けたカメラマンの姿を描いた新作の浪曲です。
(神戸大学で収録)1995年1月17日、発災直後は何もわからなかったのです。まだGPSがついていなかったテレビ局の空撮のヘリは、地上の目印が(崩れたり焼けたりして)何もなく「どこを飛んでいるのかわからない」状態に陥ったといいます。「震度の情報が入っていない」地点があるというニュースを聞くと、高速道路が倒壊しているのではと思うようになっています。新作の浪曲「震災カメラマン」では「カメラが3台でサンテレビ」だの「ムーミン」だのといいますが、まさにその段階では何もわかっていないので、そういう「震災カメラマン」になるわけです。これ以来、消防車などの緊急車両の屋根や学校の屋上などに大きく文字で情報(車両の識別番号や学校名)を描いておくことになりました。
ゲーム「A列車で行こう」の自作ダイヤも、まさにプレーの最中には手に取るようにわかるものですが、時間が経つと自分でもわからなくなります。下の図はゲーム画面だけを見てマップをつくり、ゲーム画面だけを見て列車を走らせていった結果を、あとから「OuDia」でダイヤグラムに起こしたもの。このあとも何かいろいろ変えて、もはやこのダイヤグラムの通りには走っていないと思います。
ダイヤグラムという図面として美しい(『幾何学的に美しい』)とか精緻な感じがするといったことを、ゲーム画面を見ずに「OuDia」の画面上だけで追求してしまうのでは本末転倒です。ゲーム画面で列車がそれっぽくかっこよく走り、なおかつオンザライスゲームも進む(「自動発展」がきちんと進み、きちんとした乗客数があり、列車が黒字になる)というのが大前提です。どんなに“すばらしい”ダイヤグラムが描けても実際に運行できないのではだめ。『絵に描いた餅』にならないようにしようではありませんか。
「ダイヤホール」とは
- 「ダイヤホール(ダイヤの穴)」:「ダイヤホール」という俗な言いかたは大昔からある(口語で書かれる電子掲示板や電子会議室を除けば、わざわざ文字で書かれることは最近まであまりなかった)
- 読み飛ばしを防ぐために定規を当てながら読む方法のように、ダイヤグラム(の紙)を折った線に沿って見えるところ(ケーキにナイフを入れた断面のようなもの)を「駅場面」といい、そこにカステラやケーキあるいはチーズの空隙のような「穴」があることを指していう・等間隔など規則的に開いているものは「穴」とはいわない(開いていては困るものを「穴」と呼ぶ)
電信柱とメロンパン数理最適化で解く問題に「充填問題」があるので「空隙」のイメージで言うようになったのでは?(1985年くらいから?)- 鉄道業界(や土木学会の界隈)では「ホームタッチ」など和製英語だらけ:正しいかどうかより一瞬で伝わることを優先する気風(名前をつけて呼ばないと呼べないので何がなんでも名前をつける=月面の岩石の名前が「トイプードル」でいいのと同じ)
こちらもお読みください
このサイトのテーマは「A列車で理数探究」ですが、ダイヤグラムに関して本格的なこと(数理最適化など)をするのはすごく難しいです。ただ、理数探究基礎で学ぶ基本的なことがらは、「OuDia」を使おうとするときにも通用するものです。考察の段階に進んでから実験をやり直してはいけません(※実験データの改ざんにあたります)。実験より前に仮説が必要です。このことを「OuDia」を使う場面に即して言い換えれば、「OuDia」でダイヤグラムを描きながらダイヤを作成しないこと(「OuDia」は「考察」のために使う)、このゲームならではの「自動発展」は理科の実験のような意味合いで観察することができるので、「自動発展」なすがままというのでなく仮説を立てましょう(開発の段取りや目標を決めましょう)といったことになるでしょう。箱ダイヤという形式でいろいろなことを考えながら過程を記録に残すのは、野帳と同様のはたらきといえます。ゲームの動画はポスター(や口頭発表)と同じで、動画そのものが成果物になるわけではありません。動画とは別に、主論文に相当する文章での詳しい説明が必要です。まさに理科室でするだけが理数探究なのではありません。実際には実験をせずにポスターや口頭発表をでっちあげることは絶対に許されません。文章による詳しい説明がないまま動画や「OuDia」で描いたダイヤグラムだけが妙に立派なのでは、そのような疑いを持たれると思ってください。自作のダイヤについて自分の言葉で説明を尽くしてください。
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