[ DATT-A9D > 地形にカンパイ > プレイアビリティとは ]
最終更新:2024年10月10日
「プレイアビリティ」とは、遊び道具や楽器に備わった「遊びがい」「演奏しがい」、楽しさやおもしろさを妨げない「遊びやすさ」「演奏しやすさ」のこと。ゲーム「A列車で行こう9」(PS4「A列車で行こうExp.」)が主観的に楽しいだけでなく客観的にも充実したゲーム体験となるためには、ゲームシステム(プログラム・アイテム・メニュー)とマップ(地形データ・テーマ)がそれぞれじゅうぶんにプレイアビリティを持つ必要がある。
プレイアビリティの内容や度合いは単一・画一的なものでなく、個々のプレーヤーの興味や習熟に応じたものが提供されることが大切である。プレーヤーが、じぶんの力量を大きく超える困難なゲームをそれとわからないまま取り組んで挫折・放棄してしまうことは、可能な限りあらかじめ防ぐべきである。ここでは、「A列車で行こう9」「A列車で行こうExp.」における「難度」の表示と「地形の自動生成」についてまとめる。
A難度(やさしい) | B難度 | C難度 | D難度 | E難度(むずかしい) |
---|---|---|---|---|
資金が多い | 資金がやや多い | 資金がやや少ない | 資金が少ない | 資金が非常に少ない |
マップの半分が平地 | 平地が少ない | 平地がない | ||
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「難度」と「難易度」は別物
往年のファミコン雑誌では、コンピューターやビデオゲームになじみのない子どもにもよくわかるよう様々な用語が工夫されていた。ロールプレイングやシミュレーションなどの長丁場となるゲームには、囲碁・将棋から「序盤」「中盤」「終盤」という用語を拝借していた。「難度」は、前回の東京大会(1964年)で流行った体操競技の用語である。「けん玉」の「技」にも言う。転じて、ファミコン雑誌ではアクションやシューティングなどのジャンルで多用された。共通一次(1979年)やパズル・クイズの「難易度」とは空気が違う。「難度」は、難しい技を1つ、2つ、3つと整数で数えて積み上げていく感じ(目の前でやりながら実況で言う感じ)で、「難易度」は、平均より高いのか低いのかを小数や偏差値で言う感じ(ぜんぶ終わってから総括して言う感じ)である。あなたが「A列車で行こう9」「A列車で行こうExp.」について「難易度」という話をしたいときは、ゲーム全体のことを言いたいのか、特定のマップ(シナリオ)について言いたいのかをはっきりさせないと、話が通じないだろう。また、「難易度」という言葉は客観的に使おう。単にじぶんにはよくわからなかったというだけのときに「難易度」という言葉を使うのは適切ではない。
※「A列車で行こう9」「A列車で行こうExp.」では、遊ぶマップを選択する画面で「難易度:A難度」といった表示が出るので開いた口が塞がらない。それでも、わざわざ「A難度」といった表記をしているからには、メーカーが言いたいのは「難度」であって「難易度」ではないのだろうと推察するところである。かつての「A6」「A2001」「A21C」にあった「特にありません」(「御自由にお遊び下さい」)という表示に相当するのが「A9」では「難易度:A難度」だとして、「難易度:B難度」「難易度:C難度」「難易度:D難度」では課題が1つ、2つ、3つ、「難易度:E難度」ではたくさん、あるいは非常に困難な課題がわざとらしく用意されているということなのだろう。
※「難度」という言葉の流行や普及の開始が1964年で「難易度」という言葉は1979年だとすると、15年ほどの隔たりがある。さらに15年が経って1994年にもなると「難度」と「難易度」の違いは曖昧になっていき、どちらかといえばなんでも「難易度」と呼ぶようになっていったと思う。1994年には「A列車で行こう4 for Windows」が発売された。1985年から1989年までのファミコンブームでは「難度」という言葉のほうが好まれたのも、年代を見れば納得がいくだろう。公の場や初対面の人に向かって『やさしい単語』を使うことが失礼でも幼稚でもない英語では『やさしい単語』を使って「hard」「easy」と言う。「むずかしい」「やさしい」という『やさしい日本語』を見下して無理にでも漢語を使おうとするように育てられてしまう国語教育には改善の余地がある。『難易度』の表示は「やさしい」「ふつう」「むずかしい」あるいは「1」「2」「3」という数字でもよかったのだ。ハウス食品が業界に先駆けてカレーの「辛味順位表」を表示し始めたのが1972年だといいます。
『ネットの情報』を疑え
- 年齢に応じた理解力を育もう:ゲーム内の概念や用語を把握できていない、恐らく年少のプレーヤーもいる
「A列車は難しい」と書いてあったからといって購入を尻込みする人もいるが「A列車は難しい」は単なる捨て台詞あるいは煽り文句に過ぎない場合が多い
何がどう難しいのか、どういう人にとっては難しいのかを説明しないツイートやコメントなどは『情報』たりえない(よくある感想の1つとして読むに留めるが吉)
「A列車は難しい」という捨て台詞を吐く人もゲーム自体はしっかり楽しんでいるものだ(このジャンルでは「難しい」と「楽しくない」はイコールではない)
- だってA9だもの。:「事前指導」なしでは「好きなようにする」こともままならない/意味や考えかたを先に知ることが「答え」を探り当てていく楽しみを広げる
- ウィキペディアを使おう:ゲームに登場する列車の特長や鉄道のしくみについてウィキペディアで調べよう(事実や数字を確認する習慣をつけよう)
プレイアビリティについて考える前に確かめておきたいことがある。わたしたちがこのゲームを「難しい」と感じるのは、どんなときだろうか。
俗に「マップコンストラクション(マプコン)」が『資金無限モード』と呼ばれるように、このゲームの最大の難関や試練は「資金」だと考えるプレーヤーが多い。では、ゲーム開始時の「資金」が多ければ「やさしい」のか。答えは「ノー」である。
このゲームでは、何から何までじぶんで考えて決めることが必要で、しかも、それが次々に求められる。これを「RT(リアルタイム)シミュレーション」という。幸いにも、このゲームはオフラインでシングルプレイのゲームなので、ゲームを一時停止することが許されているし、セーブしておいて休むこともできる。(どうぶつの森他社人気ゲームのように寝ている間にもゲームの時間が進んで花が咲いたり枯れたりすることはない。チェスや将棋のように「持ち時間」があるわけでもない。)それでも、ゲームを進めている間は、何も待ってくれないのだ。ここに「難しさ」がある。
※ゲームのジャンルの1つとしていう「リアルタイム」とは、どうぶつの森ゲーム機の本体内蔵時計(RTC)と連動して現実の時刻の通りにゲームの内容が動くことを指すものではない。「リアルタイム」ではないゲームは「ターン制」などという。
※ほかのゲームでは「一時停止」ましてや「ロールバック」(失敗する前のセーブデータに戻ってやり直すこと)ができなかったり、それをするのは『敵前逃亡』だとみなされたりするかもしれないが、このゲームでは「一時停止」や「ロールバック」こそが『醍醐味』である。
「資金」がいくらあっても、このゲームの「難しさ」は変わらない。『資金無限』という甘い認識のもと喜び勇んで取りかかったマップコンストラクションモードにも、挫折・放棄という事態は起きうるのである。「考える力」「決める力」が問われるという言いかたをするなら、じぶんで考えて決めるための「判断材料」や「お手本になるもの」を「調べる力」「見つけ出す力」も必要で、まさに「生きる力」が全面的に問われてくるゲームだと言うこともできよう。この意味では、「A列車で行こう」というゲームは文句なしに「難しい」。
「A列車で行こう9」「A列車で行こうExp.」では、いわゆる「ゲームモード」(『経営ゲーム』)のシナリオマップ(ニューゲーム)には「難度」の表示がある。「ゲームの難易度」という意味だが、これがマップごと(シナリオごと)に表示されるのである。このことからわかるように、このゲームそのものが持つ「難しさ」とは独立に、マップごと(シナリオごと)に「難しさ」がある(と、メーカーは考えている)わけだ。
ゲーム画面での「A難度」「B難度」「C難度」「D難度」「E難度」の表示は、マップの「平地(標高0mの地点)」の割合と「開始時の資金額」に応じたものであると説明されている。「A難度」が最もやさしく、「E難度」が最も難しいということである。
マップコンストラクションで作成したマップを保存する際、「難度」を手動で選択または「自動設定」できる。この「自動設定」による「難度」の判定には一貫性があるという前提で、以下のように試してみた。
横軸は「開始時の資金」(単位:十億円)、縦軸は「平地(0m)」の率(%)である。横軸は対数軸にした。
この散布図のように「難度」が「自動設定」される中では、「A難度」と「B難度」の間で明確な難しさの差があるとは思えない。ほんのわずかの差で「C難度」にされる場合もあるが、そこにもゲームの難しさに明確な差があるとは思えない。「D難度」については、「平地」が少ないということを「難しい」ととらえれば納得はできる。しかし、わずかの差で「B難度」にされる場合もあることから、「D難度」というものをうまく定義できているとは到底いえない。
「資金」が多ければ「やさしい」というものではない。確かに「資金」が多ければ実行可能な選択肢(大きな建物や「プロジェクト」、発電所の建設など)が増えるが、じぶんで考えて決めることが増えるということにほかならない。選択肢が少ない状況のほうが、迷わずに選べるのだ。
マップに「平地」が多ければ「やさしい」のか。どうやら、それも違う。開発可能な面積が大きければ確かに開発はしやすいが乱開発も招きやすく、あっという間に「産業構成比」がいびつになってしまうこともしばしばだ。「平地」が少なければ「難しい」とはいえるが、「平地」が多いというだけでただちに「やさしい」とはとてもいえない。
「A難度」「B難度」「C難度」「D難度」「E難度」の表示とは関係なく難しい(すべてのマップが同じくらい難しい)と思って、どんなマップにも油断しないのがよいだろう。
※このゲームのコツがつかめると、「A難度」「B難度」「C難度」「D難度」「E難度」の表示とは関係なく簡単だ(すべてのマップは同じくらい簡単だ)。「初心者はA難度のマップから」「E難度をクリアしたら“A列車の達人”」などと吹聴しないこと。
すももユニット
このサイトの「すももコース」では、「A列車で行こう9」(PS4「A列車で行こうExp.」)というゲームの中でプレーヤーが考える必要のあるさまざまなことがらを、1度に考えるのにちょうどよい細かさ(単元)に分けた「すももユニット」として定義し、ゲームに取り組むときの『深度』(のようなもの)を体系化して紹介しているので、参考にしてほしい。「オンラインマニュアル」の「都市開発のためのヒント」に基づいて「線路と列車」「資材と人口」「収支と納税」の3つの分野に分け、初級・中級・上級それぞれ2~4個ずつ(全26個)の「すももユニット」を用意。基礎を確認してから展開に入り、最終的には一定の帰結に到達させる。「A列車」は「線路」に始まり「線路」に還る。ゲームシステムの全体像を理解して引かれた「線路」とそうでない「線路」の差は一目瞭然となる。「すももコース」は「公式ガイドブック」(全4冊)が手元にあることを前提しているが、もちろん「公式ガイドブック」をお持ちでなくても、「すももユニット」として示した項目についてインターネットで調べながら学習していくことも可能だから、「公式ガイドブック」を持っていなければ「すももコース」は役立たずだとか、「公式ガイドブック」を買わせたいがための提灯記事だとか思う必要はないのだ。
正しい『資金稼ぎ』とは
- 『資金稼ぎ』とは「利益」を増やして「資金」を増やし続けること
- 「売上」と「利益」の違いを再確認しよう
『稼ぎ』という言葉からは「稼ぎ頭」「年商ン億円!」といった言いかたを連想するかもしれないが、売上高の多さと黒字か赤字かということは別物。さらに、黒字か赤字かということは、(1)売上高から経費を引くときと、(2)利益から税金を引くときという“2段階”で考えるもの。まずは基本的な収益構造(経営の屋台骨)を確立して(1)営業黒字を達成し、そこからさらに売上を伸ばして(2)税引後黒字を目指してゆくという“2段階”の構えになる。
A列車で行こう9の『資金稼ぎ』とは
- 営業黒字を確保し、税引後も黒字になる健全で頑健な『稼げる会社』をつくることで、
その後は「早送り」するだけで資金が一定のペースで増えていくことプレーヤーがじぶんでマウスを何度もクリックして「株」や「子会社」を売買しても、それは『臨時収入』に過ぎない。本作のクリア条件である「資金10兆円」の達成見込時期がドラえもんの誕生日(令和94年)より先になっても構わないから、「早送り」するだけで資金が一定のペースで増えていく状態をつくろう。
- 売上高から経費を引いて黒字(営業黒字)
- 利益から税金を引いて黒字(税引後黒字)
本作のゲームシステムでいえば、「コンテナ港」や「港」が「資産税」を引いても黒字になるには莫大な「人口」が必要。また、本作の「発電所」は1基ごとの発電量が固定で小回りが利かないから、都市の消費電力を増やして「電力会社」の赤字を縮小することも必要だ。さらに通常の発電所と「エコ発電」を混在させると通常の発電所が大赤字になってしまうという変な生々しさがある。『資金稼ぎ』という言葉のイメージからはだいぶ隔たりのあることまで広く見渡さないと『資金稼ぎ』は実現できないのだ。売上を大きくすることだけを考えるのでなく、「資産税」を払いきれる適正な事業規模を見極めるのが正しい『資金稼ぎ』である。
A列車で行こう9の『稼げる鉄道づくり』
(鉄道経営:rail management)
- 基本的な鉄道施設・車両で営業黒字を確保
- 旅客ダイヤ・貨物ダイヤの工夫により売上を伸ばして税引後黒字を目指す
『稼げる鉄道づくり』も“2段階”で考える。集客範囲の重なりや漏れがないように駅を配置して、駅と駅をなるべく最短・最少の線路で結ぶ。列車の定員は各駅からの乗客数を見て決める。ここまでが第1段階だ。この段階で営業赤字を出していては次に進めない。鉄道施設・車両のムダを徹底的になくそう。地上の自動発展に効き目がない「地下鉄駅」を使うのは時期尚早だ。なお、本作では線路に「資産税」がかからない。線路だけはいくらでも余らせておいて大丈夫だ。
第2段階は、ここまでの営業黒字をベースに上乗せの利益を狙うものとなる。より高い運賃収入が見込める特急列車の運行や資材売却の加速化などである。駅周辺が発展したら列車の定員を増やして利益の取りこぼしを防ぐ。「早送り」するだけで資金が一定のペースで増えていく鉄道会社にしよう。
ただし、このままでは資金の増えるペースは一定のままだ。資金の増えるペースを加速化するには、増えた資金の一部を使って『資金稼ぎ』の規模を1回り大きくしよう。乗客が多い路線では線路や駅のホームを増やして列車の発着回数を増やす。そこまで乗客が多くない路線では特急列車の運行を増やして運賃収入を増やす。あるいは路線延伸や新線建設で営業エリアの拡大を図る。借入金を使ってまで無理をすることはないが、資金が余ってきたら速やかな追加投資を検討しよう。
※文中、子どもから見てかっこいい(かもしれない)専門家が専門的な文書の中で使う書き言葉の決まり文句を太字で示した。お気に召したら、ぜひ使ってみてほしい。
実は「マニュアル」にちゃんと書いてあった
「オンラインマニュアル」の「都市開発のためのヒント」は「ヒント」という言葉の軽さとは裏腹に本作のゲームシステムいわば『絶対のルール』を厳格に教えてくれるページになっているので必読だ。専門学校や大学のようにカネを払って受けに行く授業で先生が座ったまま板書もせず猛烈なスピードでしゃべりまくるような文章(「必要なことはぜんぶ言った」&「あとは手前らでわかれ」というふう)だから、読む側が自分で板書やノート(図解や箇条書き)に起こしてみるとよいだろう。口をぽかんと開けて24項目もある「動画ガイド」をぼーっと見るだけでわかるものではない。
「難度」の表示が参考にならないとわかったが、途方に暮れる必要はない。このゲームがまったく初めてのひとは、まず「ひしめきあう街」を開始して、特に何もせず眺めてみるのがおすすめだ。
▲「ひしめきあう街」では最初から4種類の新幹線車両が走っているぞ!
▲「ひしめきあう街」にある“あの駅”が『あの駅』に見えてきたら、そういう車両に置き換えてみよう
このサイトでは「入門編(のってたのしい)」として「ひしめきあう街」のマップを紹介している。ぜひ「ひしめきあう街」のマップから始めて、基本をマスターしていってほしい。シナリオマップは何度でも最初からやり直せるので、どんなことでも思いきって試してみよう。建物や線路がイメージと違うなら、すべて撤去して思い通りに造りなおしてもよいのだ。すべてはプレーヤーのあなたに委ねられている。
続いて、「運転編(信号のおしごと)」として紹介している「砂浜とウォーターフロント」は、なんと何もしないで早送りするだけで3年半で「資金3兆円」になるほどの黒字のマップだから、「資金」を気にせず鉄道部門に専念できる。
▲東京臨海高速鉄道りんかい線の地下新駅「品川シーサイド」は日本たばこ産業・都市再生機構・鹿島建設が誘致・建設した
▲「砂浜とウォーターフロント」の“あの橋”が『あの橋』に見えてきたら、そういう運行をしてみよう
開発済みエリアでは用地費用が高いから駅や線路はいじらず、車両を好きなものに取り換えてみよう。どんな車両を使えばいいのかわからなければ、「ひしめきあう街」に戻ってみてほしい。「ひしめきあう街」は、多彩な車種の列車が実感的に運行されているよいお手本だ。ただし列車の速度が高すぎると隣の駅やマップの端にあっという間に到着してしまい、マップが狭く感じられてしまう。現実の鉄道の「速度制限標」について調べ、ゲームの中でも実感的な速度で運行しよう。
線区の最高速度 | 120・100・90など |
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曲線での減速 | 105・85・70など |
風規制 | 25 |
分岐器(分岐側) | 65・45など |
特殊分岐器 | 35など |
入換運転 | 25 |
推進運転 | 25 |
推進運転(尾久) | 45 |
このような速度は車両と軌道の解析のほか、人間工学の見地から定められた合理的なもので、鉄道各社が好きなように設定する余地はない。速度制限は、列車の先頭車両が標識にさしかかってから最後尾の車両が解除標識を抜けきるまでの間かかり続ける。むやみに長編成化してしまうと、速度制限を受ける時間が長くなってしまう。異なる長さの列車が混在しているときは所要時間にも差がつくから、ダイヤ作成の腕の見せどころだ。本作では、駅のホームの長さは「6両」がデフォルト値になっている。ここに4両編成など短い列車が停まることもできる。マップに最初からある駅については、駅をクリックして「情報」を表示させ「ホームの長さ」を確かめよう。マップにじぶんで駅をつくるときは、まずは6両編成で考えていくとよいだろう。
新幹線(ATC-1A型) | 0・30・70・110・160・210 |
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千代田線(ATC-4型) | 0・25・40・55・75・90 |
国電(ATC-6型) | 0・15・25・45・55・65・75・90・100・110・120 |
本作の「速度制限標識」では、数字の小さい順に「10km/h」から「165km/h」まで「5km/h」刻みでずらっと並んでいる中から選択させられるが、実際には「65」や「45」など、信号機の現示と同じ速度や、(通常はキリのいい数字で偶数の)線区の最高速度から5キロや15キロの減速を指示する(奇数の)速度の速度制限標が多用されている。本作の速度制限機能は「速度制限標識」という3Dオブジェクトと密結合してしまっている(標識を非表示にして速度制御のみを行なうことはできない)が、終着駅での場内信号の注意現示や警戒現示での進入、構内での入換運転や機回し、ATCによる速度制御などを表現してみるのも楽しめるだろう。
※残念ながら、いまのところ「A列車で行こう9」(PS4「A列車で行こうExp.」)の「アイテム」の信号機は動作しない(鉄道模型でいえばグリーンマックスや津川洋行の信号機のような=電気仕掛けではない)『アクセサリー』(ただの『お飾り』)にしかなっていないので、「速度制限標識」を信号のつもりで使うとよい。ラッシュ時のノロノロ運転なども再現可能だから気が急くばかりでいつまでも着かない悪夢のエクストリーム出社をいつでも何度でも好きなだけシミュレート「おうち時間」のおともに最適だ。
▲「電流計」「速度計」「圧力計」の『3点セット』なしに電車の運転はできない
▲遮断機も警報機もない『E電の第四種踏切』と信号機のない「交差点以外の横断歩道」そして「EB」
なお、運転士やATO(自動列車運転装置)が速度制限に合わせて列車を走らせることを「運転」といい、運転士に速度制限を指示して守らせることを「運行」という。「A列車で行こう9」(PS4「A列車で行こうExp.」)は『運転ゲーム』ではなく『運行ゲーム』なのだ。ロールプレイングとしては、新興国に日本式の鉄道を売り込む土木コンサルタントになりきって路線の設計と収支の計画をしてみせて、円借款でもなんでもよいので資金を調達して鉄道施設が完成したら、こんどは鉄道を運行する会社の部長級になりきって鉄道に関する国の法令を社員に守らせるということになる。
「上から目線」という言葉もあるけれど、本作の視点はかなり高いので、子どもだけで遊ぶのは「難しい」とはいえる。学校でいえば、生徒会の執行部と生徒総会の関係を正しく理解できていることが必須だ。さらに子どもや学校ということでいえば、近年は鉄道博物館の充実や鉄道を取り上げるテレビ番組の増加により、鉄道の技術的側面に関する知識の子どもへの普及は目覚ましいものがある。親の世代が持つ「電車といえば運転士」「鉄道に詳しいのはマニアだけ」というイメージは古い。いまや「鉄道」といえば指令室や車両基地の光景つまり「オペレーション」を思い浮かべるもの。趣味として『モノ(物)』をコレクションするのでなく、いろいろな体験をしたり知識を得ること自体を楽しむ『コト(事)』重視の流れもある。ATCや速度制限標くらいは多くの子どもが何らかの形では知っているものと思ってよい。知らなかったとしても、いますぐ調べることができるから、「知らない」ということをことさらに言う必要がない。鉄道に関するかなり詳しい知識を、親の手を介さずに子ども自身がどんどん得られるようになっている。「鉄道」という言葉と「電車」という言葉の使い分けも、プロの使い分けを忠実に真似する子どものほうが正確だろう。正確に真似をすれば知識になる。豊富な知識があってこそ、いろいろな「ごっこ遊び」ができる。少子化はだてじゃない。現代社会は子どもに手厚い。子どものころにそのような学習や体験の機会が用意されていなかった大人より、現代の子どものほうがはるかに恵まれている。この点では大人に優位性はなく、いわば大人もまた大人だけで遊ぶのは「難しい」ということを知っておく必要がある。
「A列車で行こう9」(PS4「A列車で行こうExp.」)の「プレイアビリティ」と「地形データ」「資金」の話に戻ると、「ひしめきあう街」は地形が非常に自然で好ましいが資金は心細い、「砂浜とウォーターフロント」は資金の心配がまったくないが地形はいまいち不自然で興ざめだ。また、「速度制限標識」は「ひしめきあう街」と「砂浜とウォーターフロント」ではまったく使われておらず「川沿いにある街」だけで使われている。本作に収録されたニューゲーム(シナリオマップ)は、「あれについてはあちら」「それについてはそちら」というふうにテーマなどがばらばらにされてしまっていて、1つのマップで一通り満足できるということは皆無である。いくつものマップを開いては閉じ、開いては閉じしながら遊んでゆくことになる。
※「砂浜とウォーターフロント」の地形が不自然というのは、ゲーム画面で3Dで風景を見ているだけでは狭い範囲しか一度に見えないので気にならないが、マップ全体を「サテライト」で見たときに「離れの島」の形や「砂浜」の海岸線などがぬめっとしていて非常に気持ち悪いということ。ペンタブも使わずにマウスだけで描いた素人仕事の(自称)『デジ絵』のようなもの。道具立てが悪いのだから気持ち悪い線しか描けない。また、思いつくままに端から描いていったり、付け足したりしたような手作業の痕跡が生々しくて気持ち悪い。地形というものには人為的なところがないほうが自然で美しいと感じるものである。
パソコンに慣れていないひとは、「File(ファイル)」メニューの操作(上書き保存・新規保存)を覚えよう。
本作は、最新バージョンを購入すれば、過去のバージョン(A9V1からA9V4までとPS4版「Exp.」)のマップをすべてプレーできる。PS4版を買ったからといって「海上都市計画」をプレーしないといけないといったことはない。PS4版を買ったからといって「海上都市計画」をプレーしないといけないといったことはないにもかかわらず、どうもPS4版を買ったひとは「海上都市計画」ばかりをプレーする(最初に「海上都市計画」を開き、そのままいろいろなことを試していく)傾向があるようにも思う。しかし「海上都市計画」は「神戸っぽいところに阪急の車両が走る」というデモンストレーションの意味しかない見せかけのマップだから「プレイアビリティ」はゼロに等しい。各マップが持つ「プレイアビリティ」を能動的に見極めて、貴重な三連休を惜しげもなく費やしてでも遊ぶべきマップ(※当社比)をしっかり選び取っていってほしい。
じぶんで考えて決めることの難しさの最たるものは、マップのどこに何をつくれば最終的に納得のいく(自然に見える、リアルに感じられる、ゲームもうまくいく)マップになるかということである。何から先につくるかという順番は割とどうにでもなるが、どこにということを決めるのは、かなり難しい。これは現実の都市計画の難しさ(決め手の無さ:どこかでエイヤっと決める必要がある)そのものであり、だからこそ都市計画という専門分野があるのだ。
ゲームとして何か簡略化されて「やさしく」なっているかというと、このゲームではそうでもない。ゲームの画面では、ただ地形がCGで表示され、平面の「サテライト」という図が表示され、「ハイトバー」なるものが用意されているだけで、何のガイドもヒントもない。わたしたちは自力でマップの地形をつぶさに観察して、そこからヒントやガイドになる地形を見い出していくことが必要なのだ。
勘のいい人は既に気づいていると思うが、地形の変化(起伏)がまったくない「完全な平地」(テンプレートの「平地」)から始めてしまうと、本当に何も手がかりがない。適当にでこぼこした地形データを使ったほうが「やさしい」といえる。
地形から自然に想像されるマップのテーマには共感しやすく、作者が勝手なイメージやこじつけで無理やり決めたものより魅力的。ニューゲーム(シナリオマップ)のタイトルやテーマには必ずしも納得いかなくても、地形に自然さがあれば遊ぼうと思わせられる。そのとき、線路や建物などが不自然に(強引に、あるいは意味なくランダムに)初期配置されていると、わたしたちの想像を妨げてしまう場合がある。初期配置の線路や建物はよほど慎重に検討されるか、あるいは何も配置せず地形だけにしてほしいものだ。
その意味で、このゲームには「テンプレート」が用意されているが、ここまでに挙げたマップの足元にも及ばない(いい加減にマウスで描いただけのような)地形をしている。「地形の自動生成」の機能が完成するより前に作ってしまったのだろう。「地形の自動生成」で作り直せばよい。(プレーヤーがじぶんでもできる。)いわば『テンプレートの“カスタム”』といえるのが「地形の自動生成」である。
「地形の自動生成」にはコツがある。すぐにあきらめず、最低でも50回以上は再生成を繰り返すつもりで、何度も試してみよう。設定値も変えてみて、どの設定値をどう変えるとどんな地形が生成されるのかを体感しよう。このサイトでは、わたしが気に入らなかったいまいちなマップやテンプレートの代わりとなる地形を、「地形の自動生成」で『それらしく』作れるかどうかを試した結果を紹介しているので、参考にしてほしい。
「地形の自動生成」で生成された地形は、基本的にそのまま使うのがいちばん美しい。細か過ぎる起伏がついて「平地」が確保できない場合や、内陸に水面が多過ぎる場合などに、そこを「平地」にする程度の軽微な修正にとどめるのがよいだろう。「川」の表現はできない。そこはあきらめよう。
このページでは、ゲーム「A列車で行こう9」(PS4「A列車で行こうExp.」)の「プレイアビリティ」について、「難度」と「地形の自動生成」の2つの面から掘り下げて考えた。
まず、「難度」の表示については「開始時の資金」と「平地」による「自動設定」で「A難度」もしくは「E難度」とされる条件が極めて限定的であることを明らかにした。「自動設定」の「難度」はほとんど無意味である一方、マップの作者が主観的に設定した「難度」は一定の参考になることを確認した。
次に、「難易度」というキーワードで検索するユーザーが多い背景には『難易度が低い』「やさしい」ニューゲーム(シナリオマップ)はどれなのかわからないという戸惑いがあると考え、本作への習熟に適するマップとして、A9V4の新規収録マップ「ひしめきあう街」「砂浜とウォーターフロント」を紹介した。「ひしめきあう街」は列車の使い方の参考になるが赤字でゲームオーバーになりやすい。「砂浜とウォーターフロント」は巨額の黒字を生む“盤石の状態”で開始するため、鉄道部門に集中したプレーに没頭できる。バージョンアップで収録された新規マップは新バージョンに登場する新要素や新機能を1つずつデモンストレーションするものになっており、ゲームとして1つのマップでとことん遊べるというものにはなっていないことを指摘した。
そのような状況のもとでニューゲーム(シナリオマップ)の代わりとなるマップコンストラクションモードでは、マップの地形がプレーのヒントやガイドになる。ニューゲーム(シナリオマップ)と比較して『難易度が低い』「やさしい」マップを作るにも、逆に『難易度が高い』「むずかしい」マップを作るにも、その『難易度』を演出するのは「地形の複雑度」や「起伏の複雑度」である。このページでは、「地形の自動生成」の効果的な使い方として最低でも50回以上は繰り返すこと、生成される自然な地形を活かすため基本的に手を加えないことを提案した。なお、A9V3に収録されたマップは公式ガイドブックで「マップコンストラクションの参考に」と説明されている。
本作のプレー前に予習するとよい事前知識の1例として「速度制限」と『資金稼ぎ』を取り上げたが、これに限らず知識が多ければ多いほど本作を味わえるのは当然である。シミュレーションゲームはコンピューターゲームの原点であり、高度に能動的・主体的なプレーが要求されるジャンルである。楽器の練習と同じように、プレーヤー側の努力があって初めてゲームが持つ『真のプレイアビリティ』を引き出すことが可能になる。今後の課題として、従来のレーティング(ゲームソフトに対する規制としての対象年齢の設定)とは別の、テーマの理解やプレーの方法に対して必要となる発達段階を踏まえた年齢別の遊び方の提案や、それをサポートする機能等の実現が挙げられる。
※ゲーム内の地形データの著作権はゲームソフトのメーカーに帰属すると思われます。
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