[ ダイヤグラム総合(仮称) > ベストプラクティス | はにわマテリアル | ダイヤ設定のヒントとテクニック ]
A列車のダイヤ設定で無理なくできる「パターンダイヤ」:プログラミングになぞらえてイメージ。ハードコーディングを避け、同じ結果をより簡単な記述で再現。(最終更新:2025年2月15日)
「A列車で行こう9」の「ダイヤ設定」について、初心者を自認するプレーヤーがまず最初にやることは「線路・ポイント・駅について正確に理解し、正しく配置すること」です。「ダイヤ」という言葉からは「時間」や「時刻」、車両の「速度」や「種別」などを連想するでしょうが、それは「輸送計画」です。「ダイヤ設定」の前提になるのは「正しく配置された施設(線路・ポイント・駅)」なのです。このことがわかりにくくなってしまう「ダイヤ設定」という呼びかたですが、これは「列車制御」なのだと理解するとよいでしょう。
なんとなく知っている用語を「なんとなく」のままにしてはいけません。字面の印象だけで「『優等』列車は『優れて』いる」「『優等』列車を走らせれば『競合より優位』に立てる」「『優等』列車のダイヤを組める人は『優秀』」などと考えてしまう人もいるかもしれませんが、「A列車で行こう9」の「優等列車」は単に「速度」さえ高ければというものでもなく「追い越し」「通過待ち」をしさえすればというものでもありません。ゲーム内で意味のある「優等列車」を運行するために考えるのは「輸送計画」です。マップの人口や産業構成比に合わせて適切な列車を運行してあげましょう。「優等列車」は「待ち時間」とのトレードオフで、誰もが便益を得られるものではないのです。
逆に、全線がわずか12.7kmの井の頭線でも「優等列車」つまり急行運転は行なわれ、効果的な輸送が実現されています。「優等列車」とは相対的なもの。別の会社や路線と比べるのでなく、その路線の実情やニーズを適確に捉えて考えるべきものなのです。なまじ「優劣」という言葉があるばかりに、「優等列車」が運転されている路線や会社は『優れて』いて、そうでない会社や路線は『劣って』いるとまで考えてしまう極端に短絡的でバイナリな人がいたら、全力で止めてあげましょう。
このように、画面に表示されるものを別の言葉や上位の概念で捉えなおして理解する能力は、高校生になってからどんどん伸びてゆくものです。「A列車で行こう9」で『最初にやること』は、まずあなた自身が16歳以上になることだ、とも言えますが、それを言っても始まりませんので、ここではあまり言いません。言うに事欠いて「仕方」「組み方」「複線のやり方」などと検索するようでは話になりません。
例えば「駅を建てる場所」と「駅勢圏」は、同じことを違う向きから述べています。「往復を繰り返す」という表現は不自然に見えますが「ピストン輸送」という専門用語を言い換えた表現なのだなと想像がつきます。専門的すぎる用語をむやみに使わないことも重要で、専門用語とは異なる表現で説明されているからといって不正確だというわけでもないことに注意が必要です。ある用語が専門的であるかどうかの判断は、一般の新聞やテレビのニュースに準じるのが常識です。自分が思いつくままに漢字を並べて述べた言葉が、既にある専門用語と重なっていないことを確かめるようにしましょう。
「初心者が組む必要はない」と断言されている「マニアックなダイヤ」とは、どんなものでしょうか。日本語の「マニアックな」という表現と英語の形容詞「maniac」を見比べながら考えてみてください。そして、その「初心者が組む必要はない」はずの「マニアックなダイヤ」を説明する動画が「初心者向け」や「初心者講座」などと称していないか確かめてみてください。「初心者」を掲げるのであれば、「オプションの詳細ダイヤグラムを有効にする」というところから説明してほしいとは思われないでしょうか。マウスのホイールを使えば「1分単位のダイヤ設定」ができるにもかかわらず「個別発車」をいきなり使ってしまうユーザーがいるのは、実はマウスのホイールをうまく操作できないとか、マニュアルの説明が理解できないからなのではないでしょうか。「初心者」を掲げるのであれば、ゲームの内容以前の入力デバイスの説明から始めるべきではないでしょうか。
ここでは、パソコン(Windows)に慣れていない人が思い違いや操作ミスをしやすいのではないかと思われる点についてまとめました。なお、マウスを使わずにパソコンを使う人も増えていますが、本作ではマウスへの習熟が必要です。「1分単位のダイヤ設定」では非常に小さいUI要素を正確にポイントし、マウスが動かないようにしてホイール(スクロールボタンの回転部分)だけを回すことが要求されます。「何のそれくらい」と笑い飛ばせるなら大丈夫ですが、そうではない場合は真っ青に青ざめてマウスの練習をしてください。
マウスというデバイスは決してやさしいものではありませんので、必ず練習が必要です。毎日新聞社とドスパラが「eスポーツ」と呼ぶのは大げさでなく、練習しないでマウスを使える人はいません。初めてマウスが採用された運行管理システム「ATOS」の導入初期には、マウスに不慣れな指令員のせいで列車が遅れたことがあったといいます。Windowsの「ソリティア」と「マインスイーパ」はマウスの練習のために入っているのです。なお、筆者はマウスのカーソルに「加速度」がなかった時代の「ソリティア」で自己ベスト「89秒」を達成しています。
A列車で行こう9・Exp.の「ダイヤ設定」の独特なUIをうまく使うためのコツ
「コツ」といっても、ひとに自慢できるかっこいいダイヤを作ろうといった類の「コツ」の話をしようというわけではありません。A列車で行こう9・Exp.の「ダイヤ設定」のUI(ユーザーインターフェース)は、かなり独特です。昔ながらのWindowsのUIに慣れていない人は「選択」「選択解除」「未選択」などの挙動を理解しておらず、意図しない書き換えをしてしまう恐れがあります。Windowsに慣れている人でも操作ミスや思い違いをしやすいUIになっている箇所がありますので、まとめてみました。むしろ「設定ファイルをテキストエディタで編集させろやい」と愚痴の1つも言いたくなりますが、ここではぐっと我慢することにいたしましょう。
- 「オプション(Option)」メニューの「ダイヤグラム」タブで「乗客と貨物の対応を設定する」をオンにしておく(「下車」や「乗降なし」を設定できるようになり「回送」や「運転停車」を表現できる)
- 「駅」ウィンドウの「ダイヤ」タブで「動作モード:発車時間」を選び、その下にあるスライドバーで「発車間隔時間」を設定する(24時を跨ぐ設定もできる・2つまでの任意の発車時刻を指定できる)
- 「ポイント分岐設定」ウィンドウで「時間指定」を選び、その下にあるスライドバーで「分岐」にしたい時間帯を設定する(「分岐」にしない時間帯は「直進」になる)
- 車庫には「連続分岐」(「スリップ・スイッチの設置方法」のスクリーンショットの「②」)を使うとわかりやすい(「ポイント分岐設定」の「時間指定」をネストさせる)
- 始発駅や車庫への「列車を配置」は手動で1本ずつ行なう必要がある(前の列車が発車した後など、適切な時刻になったら「列車を配置」する)
- 駅構内や車庫(車両基地)の配線は好きなようにすればよいが、設定しようとするダイヤに対して過不足なく、操作ミスを誘発しない配線が望ましい(現実の施設でもそうなっているので、同じように考えていくとリアルで実感的な配線にしていける)
- 間違えたり詰まったりしたときは「列車を撤去」する(配置と撤去に費用はかからないので、何度でも繰り返してよい)
- 何かおかしくなったときは十中八九じぶんの操作ミス(ソフトのバグを疑う前にじぶんを疑う)
- 「個別発車」「個別分岐」は設定内容を一覧できず操作ミスや思い違いを誘発するので、なるべく使わないで済ませることを強くおすすめする
- ダイヤの設定中は列車を1本だけにしておくと気兼ねなく試行錯誤できる
- ダイヤ設定を列車ごとにばらばらにハードコーディング(書き下し)しない(1つのダイヤ設定で複数の列車を動かす)
- ダイヤ設定の『原本』を作成して、2本目以降の列車には「コピー」して使う(駅の「ダイヤ設定」と「ポイント分岐設定」の両方が一度にコピーされる)
- 操作ミスで「00」番の列車(「Train」リストの1番目)のダイヤを誤って書き換えてしまうことがよくあるので「00」番の列車は使わないようにするとよい
- ゲームのロード直後や「ダイヤウィザード」からの復帰後に「Train」リストでの列車の選択状態の表示が狂っている場合があるので、ダイヤ設定を行なうときは必ず列車を選択しなおす(一度、ほかの列車を選択してから、ダイヤ設定をしたい列車を改めて選択する)とよい(PS4版でも同様の不具合がある模様:「Train」リストのスクロールをリセットする処理があやしい)
- 「ダイヤ設定」「ポイント分岐設定」の画面では複数の列車を選択することもできるが、操作ミスにつながりやすいので選択は1列車に限るとよい
- 駅の「ダイヤ設定」のスライドバーで設定した内容は、その後「動作モード」を「通過」などにしてスライドバーがグレーアウトしても保持されており、「動作モード」を戻すと、再び以前のスライドバーの設定が出てくる(「コピー」したときは、グレーアウトされた設定内容も込みでコピーされる・「ポイント分岐設定」の「時間指定」のスライドバーについても同様)
- 「Train」リストの中で複雑に車両をやりくりするときは、別の路線のダイヤ設定と取り違えないよう細心の注意を(別の路線で使っていた車両に対して新たにダイヤ設定を行なうときは「初期化」してからにするとよいが、「全列車に適用」しておいた「ポイント分岐設定」も「初期化」されてしまうことに留意)
PS4では「A列車で行こうExp.」として発売されているゲームソフトではありますが、「A列車で行こう9」というソフトは大昔のワークステーションで動いていたCADのソフトか何かのように非常に操作性が悪いものです。お行儀よくWindowsとOfficeの操作を学んだ人には「?」な部分が多々あるでしょう。リボンとも呼ばれるモダンなツールバーからよく使う「両渡り線」や「2面4線の駅」を選んでいきなり設置するといったことはできませんし、線路と道路と橋の切り替えが簡単にできるツールボックスのようなUIにもなっていません。メニューは階層化されていませんし、小さな設定画面を好きな位置に動かすこともできません。同時には表示できない画面もあります。極めつけには文字の入力をしようとすると落ちます。Windowsのゲームでありながら、ちっともWindowsでは、ないのです。
操作方法がわかって、たいていのダイヤ設定を思うように設定できてなお、どうも「A列車で行こう9」(PS4「A列車で行こうExp.」)の動作や仕様に納得がいかないということはないでしょうか。何を知れば納得した気になることができるでしょうか。ここでは、ゲームより前に鉄道模型を通して鉄道に関する知識を得ている人が不可解だと感じる可能性のある点についてまとめました。
中央本線で松本まで出て小学生のうちから鉄道模型に入門していると、実車と模型の違いという視点で書かれた各種の解説を読みながら電気鉄道というシステムについて深く理解していけるのですが、運行管理の全体像がわかるというものではありません。ましてや実際に電車に乗る機会が限られていれば、なおさらです。本作について「加速度」ばかりを話題にする人もいるようですが、きっと学校で習ったばかりでうれしいのでしょう。いくら数学や理科の問題にあったからといって、地下鉄飛車(ちかてつびしゃ)電車の中でジャンプしたりボールを投げたりしてはいけません。そんな人が定期券で電車に1年くらい乗るうちに、たいていのことをいつの間にか空気のようにあたりまえと思うようになるのは他人事ながらうれしいことです。
「所要時間の計測」は不要
- マニュアルと公式ガイドブックでは「ダイヤ設定」の最初のステップとして「所要時間の計測」を指示していますが、これは途中駅すべての正確な着発時刻を調べろという意味ではありません。始発駅を出発して終点で折り返して元の始発駅に戻ってくるまでにかかる全体の時間をざっくり計ればじゅうぶんです。
- 列車を「配置」して走らせて戻ってくるまでにかかった時間に、始発駅での折り返し(発車準備)の時間を加えて、始発駅の「発車間隔時間」を決めましょう。1日=1440分の割り切れる数(約数)にすると都合がよいでしょう。これで、1本(1編成)の列車が路線を端から端まで往復する「ダイヤ設定」の完了です。
- ここから、「発車間隔時間」を半分にして2編成にする、1/3(さんぶんのいち)にして3編成にする、1/4(よんぶんのいち)にして4編成にする、というふうに、1つの路線に走らせる列車(編成数)を増やしていきます。ただし、間隔を詰めすぎると次の駅で前の列車につかえてしまいますので、最短でも「12分」の間隔は確保しましょう。(※「時間拡張30倍」の場合)
- 本作での「乗客数」の計上のされ方を考慮すれば「24分」に1本でじゅうぶんです。10の倍数よりも12や24の倍数で考えたほうが都合がよさそうです。マップの広さと列車の速度の関係で、1路線には8編成ほどが目安となります。
- 「ダイヤ設定」は「全列車に適用」または「コピー」して、最初に設定した列車以外にも同じ設定を反映させます。始発駅での発車時刻の少し前になったら、正しい番線に正しい向きで列車を「配置」してあげましょう。現場では「ホーム据え付け」と呼ばれます。本来は車庫から出てくるわけですが、本作での列車の「配置」という操作は、自分の手で模型の車両を模型の線路に載せる気分です。車庫と入出区のダイヤが完成するまでは手作業での「配置」で我慢しましょう。
- 列車の編成の長さ(編成両数)によって、同じ番線に次の列車が入れるようになるまでの時間(「運転時隔」)が変わります。「ダイヤ設定」をするときは最長の10両編成を使い、乗客数が少ないうちは6両編成や4両編成に短縮しておくとよいでしょう。
- 「ダイヤ設定」が済んでいる列車を「撤去」「売却」しても「ダイヤ設定」は保持されています。同じ番号で新しい列車を「購入」「配置」すれば、先に設定してあった「ダイヤ設定」がそのまま出てきます。車種や編成両数を気軽に変えてみましょう。
- 速度が同じでも「通勤型」と「高速通勤型」では加速度が異なります。所要時間の多少の増減は始発駅での待ち時間で吸収しましょう。ずれが大きい場合は、始発駅に加え、反対側の終点の折り返しの駅でも「発車間隔時間」を設定しましょう。
「全駅全列車全時刻の入力」は不要
- 「ダイヤ設定」は始発駅の「発車間隔時間」が基本。途中駅はデフォルトの「停車時間」(分)でよく、「個別発車」による「発車時刻」の手入力は不要。実際の山手線や京浜東北線などの電車(国電・E電)でも、途中駅については発車時刻が定められていません。
- 追い越しを行なう駅については始発駅と同様に「発車間隔時間」を設定して、追い越しのタイミングにあわせましょう。
- 「ダイヤ設定」をしただけで列車が勝手に現われて走り出すことはありませんので、走らせない列車にも「全列車に適用」して問題ありません。
- 「1分単位のダイヤ設定」にはホイールが付いたマウスが必須です。WordやExcelなどの一般のWindowsアプリケーションにはない、非常に細かいマウスの操作が必要ですから、じゅうぶんにマウスの練習をしてから臨みましょう。
- これは盲点ですが、
「ポツ」「1分単位のダイヤ設定」をいちばん楽しめるのは「時間拡張30倍」のマップです。「時間拡張3倍」では、かえって発車や追い越しのタイミングの微調整が利きません。(2024年1月11日に追記)
「ポイントの設定」が必要
- 列車ごとに異なる「こだわりの設定」を追求していく前に、基本的な「ポイント分岐設定」を行ない「全列車に適用」しておきましょう。このとき、列車が1編成しか走っていない状態では設定ミスに気付かないことがあります。仮の列車でもよいので数本の列車を「配置」してみて、列車が詰まらないことを「早送り」で確かめましょう。
- 線路は「複線」(一方通行)が基本です。最初から「複線」の線路を敷設しましょう。マップの配線略図を描くときは線路ごとに進行方向を明示しましょう。「逆線運転」(逆走)してはいけません。このことは道路と同じです。
- 線路は左側通行です。始発駅や折り返しの駅からは、「複線」の左側の線路に出るように「ポイント分岐設定」を設定して「全列車に適用」しましょう。また、そのように走らせられるようにポイントを設置しましょう。
- 終点の駅の先や始発の駅の手前に線路を延ばしたときは、「直進」「折返」の設定を再確認しましょう。線路をつないでいないときは「折返」の動作をしてくれますが、線路をつなぐと、つないだ線路に向かって「直進」するようになります。
- 合流するだけだったポイントを両渡り線に拡張した(撤去せず継ぎ足しで複雑なポイントに変えた)ときは、「分岐」「直進」の設定を再確認しましょう。線路を引いた向きによっては「分岐」がデフォルトになっていることがあります。
- 暗黙の動作に依存した設定は避けるのが望ましいといえます。
「セーブ」が必要
- 「ダイヤ設定」がうまくできたとき、および、これから変更しようとするときは「セーブ」しましょう。セーブデータの数に上限はありませんので、「上書き保存」ではなく「新規保存」をしましょう。ただし「連結解除」「機回し」の実行中には「セーブ」しないようにします。現実の鉄道のように深夜には運転を終えるダイヤを完成させて、「セーブ」は運転が終わった時刻に行なうようにするとよいでしょう。「ロード」すると日の出とともに列車が動き出すようすは感涙ものです。
鉄道のダイヤやポイントについて、Nゲージや鉄道博物館、現業機関が主催するイベントなどを通じてよく知っている人(客観的に言って決して初心者ではないにもかかわらず「A列車で行こう9」「A列車で行こうExp.」に関しては初心者ということにされてしまっていた多くの人々)がむしろ戸惑う点について大きなサイズの文字で記しましたので、ご笑納ください。どこのページを見てもピンと来なかった人が聞きたかった説明はこれだと思います。言ってしまえば簡単なことではあるのですが、こんなことをどう言えばいいのかわからないということがあったと思います。ここに記した文言とまったく同じ文言を、どなた様もお使いいただけます。
ある時代までは、「PCができる人」は「プログラミングができる人」と同義でした。そのような時代に生まれたPCゲーム「A列車で行こう」シリーズの長い歴史に敬意を表して、「A列車で行こう9」を遊ぶ前に(高校程度でよいですから)「プログラミングができる」と言えるようになっておくとよいでしょう。職業的な技能として習得を目指すのとは別に、例えば「疑似コード」のように、特定のプログラミング言語に依存せずプログラムの動作(ロジック)を考案・記述できるようになっておくことも非常に重要です。これには学習の初歩の段階で「対話型」の実行環境(「インタプリタ言語」)を体験することが非常に有用と考えられてきています。
それはつまり、抽象的な思考が発達の途中である年齢の小学生や中学生に「A列車で行こう9」は早いということです。もちろん、得意な人であれば「ダイヤ設定」を『なんとなく』できてしまうでしょうが、他人(特に目上や年上の人)にうまく説明することは、まずできないでしょう。
当然ながら、自分が高校生だったときにプログラミングの授業がなかった古い世代の人にあっては、いくら鉄道に詳しかろうとも古今東西のゲームに熟達していようとも、大学または(一般的な)専門学校でプログラミングを習った人でないと「A列車で行こう9」で「ダイヤ設定」を的確に行なうのは非常に困難でしょう。いきおい、ものすごくニッチなテクニックの一つ覚えに陥るか、あまりにも初歩的なことをたどたどしく達成しただけなのにうまくできたと思ってしまうか、両極端になりがちです。あまつさえ自分のスキル不足でゲームシステムやダイヤに関する説明ができないのを隠して取り繕うかのように自分勝手に鉄道の雑学を開陳して威張り散らすのでは見苦しいにもほどがあります。
わたしたちは何歳になっても、知らないことは知らないままです。5.1から学び直すいままでたまたま知らなかったことをこれからいっしょに知っていきましょうという学び(協働的な学び)への関心・意欲・態度を失ってしまったら終わりです。練習後や試合後にノートをつけてコーチや監督にコメントをもらうチームは伸びます。ゲームの中で何をしたのか、そのときどう考えたのかをメモしましょう。自己流ではいけません。マニュアルと公式ガイドブックを熟読し、ルールを理解してプレーしましょう。ものごとを理解するには段取りがあり時間もかかります。一度に全部をやろうとしてはいけません。「A列車で行こう9」(PS4「A列車で行こうExp.」)というゲームは、パソコンや鉄道というお堅い業界に客を持つ作品です。その文化とミスマッチなことは避けましょう。そして、人のせい(外部要因のせい)にするのは最終手段。もちろん、本当に他人に原因があるときは、そのことをきちんと申し出てください。自分でできることと自分ではできないことを自分で明確にしましょう。…それができないんですよ!
※「A列車で行こう」と「シムシティ」をファミコンで遊んだだけで「古参」ぶる人がいますが、とんでもない。PCで遊んでいなければ、遊んだうちに入りません。PS2やPSPのアーカイブで旧作を遊んだ人も不十分です。それよりあとの据え置き型ゲーム機はPC同然なので、ご都合に合わせてどちらでも。ここまでの文脈からして、DS版、3DS版、Switch版はどうでもよい(別の世界の話だ)という感覚が生まれるのは当然です。
本作では「停車時間」の長短で貨物列車の資材が積み降ろしされる量が変わりますが、旅客列車については何分でも同じです。とはいえ全駅で最短の「1分」にするのが効率的なゲーム(シナリオ)クリア(攻略)のための『最強』の設定だと思いこむようでは幼稚すぎます。A9V4の「ひしめきあう街」や「砂浜とウォーターフロント」のマップで使用されている「時間拡張30倍」では「停車時間」に適当な長短をつけると実感的で情景豊かな表現になります。「時間拡張30倍」における「1分」は、実時間の2秒。最短でも8秒ないと、お気に入りの「発車メロディー」を脳内で再生する時間がありません。「1分」つまり2秒で「折返」するなど、ありえません。6秒つまり「3分」の「停車時間」があれば、ドアを開けながら笛を吹いて、すぐドアを閉める感じになります。このように「停車時間」を変えることで「途中駅」と「始発駅」の違いや「田舎の駅」と「大都会の駅」の違いを表現できます。あなたの生活上の実感に基づいて「停車時間」を決めてみてください。次の電車をご利用ください。
本作の「ダイヤ設定」には「個別発車」という設定がありますが、マニュアルでは「任意の発車時刻を、複数指定することができます。」と説明されています。この「任意のなになに」という言葉はプログラミングに特有のもの。本来、プログラムで自動的に(≒パターン化して)処理すべきところに人間が介入して値を上書きする、手動で入力した値を使わせるというニュアンスです。プログラムに任せていれば処理の完了が保証されているのに、わざわざ未知の値を汚らしく入力してしまう「いけないこと」というイメージが「任意のなになに」という言葉にはあります。しかしどうでしょう。国語辞典に「その人の自由意志にまかせること。」と書いてあるからといって「何も制約を受けずに発車時刻を自由に設定できます。」と言い換えてはいけません。プログラミングに特有の「任意のなになに」という言葉すらも理解していないままでは「ダイヤ設定」を的確に行なうのは難しいでしょう。
※専門用語は専門の教科書の中で学ぶべき、業界用語の類は業界に飛び込んでから覚えるべきで、子どもが学習用の国語辞典で引くものではありません。
※「某巨大掲示板のスレ」からウィキに転載されている「短い引込線のポイント時間設定で直進と折返を切り替える」方法は、数学の「別解」を自慢する中学生のよう。「某巨大掲示板」のユーザーなのだから相当の年齢のはずなのに、ゲームの話になると中学生のレベルになる人がいます。それだけゲームがおもしろいということは認めます。
※ウィキに「設定できるのは0~24時の間で」「6~26時まで10分間隔で発車するようなダイヤは設定できない。」と書いてあった。「パッチ113で対応。」と追記された後になお「8時から6時間間隔(8,14,20,26時)で発車するようなダイヤは設定できる。(2時から6時間間隔と同じなので)」と書いている人がいる。「2時から6時間間隔」という読み替えをしないと設定できないのではなく「8時から6時間間隔で26時まで」そのままの設定がちゃんとできます。PS2版「A列車で行こう6」の開発者が発明して今作まで受け継がれているプールのレーンのアレ「発車間隔時間」のUIは、見た目の素っ気なさで誤解されやすい(出来が悪いと思われてしまう)かと思いますが、実は非常にこなれています。「個別発車」が実装されたのはこれよりあと。「発車間隔時間」の使い勝手のよさを理解しないまま「実質、何も設定できない」と思いこまれた上に、「個別発車」が最新の実装だからといって(それ以前の実装が「問題だらけ」だったのを最新の実装が解決してくれたと思いこんで=以後は最新の実装だけを使えばよいのだと思いこんで)、すべてを「個別発車」で設定しようとする極端な態度のプレーヤーが生まれてしまったのだと思われます。
※もう1つ興味深いのは、ウィキで「何も制約を受けずに発車時刻を自由に設定できます。」に続けて「簡単に言えば上記までの停車設定を複合させたい場合。」とも書いてあることです。マニュアルの「複数指定することができます。」の「複数」という言葉に対して、具体的な数的イメージを持っていないようです。「複数」という言葉で言ったとき、それは2~3個、ほんのわずかな数だという暗黙の了解があります。「複数」という言葉を字面として見るだけで意味を考えていないので「複合」という言葉がつられて出てくるのだと思いました。「簡単に言えば」という表現は、自分でもよく理解できていないことを他人に説明しなければならないときに出てきやすいものです。ただ、これはもともと「某巨大掲示板のスレ」からの転載で、もとの投稿は当該のアップデートパッチが出た当日くらいのタイミングで書かれているものであるはずです。当時のユーザーの混乱ぶりをよく記録しているとも思います。本作ではダイヤ設定のいかんでゲームオーバーになるというまで切迫したものではありませんが、マニュアルの文章を正しく読解できていないのは致命的と思います。
※高専でプログラミングを習った人には、まるで高専の教授のような頑迷さと乱暴さを感じる時があります。専門学校の講師のほうが「普通の人」で「謙虚」だと思います。あと、大学の文系の人にありがちな「VBA」と「JavaScript」ではだめです。部品感覚でできてしまうので全体像をつかむ能力が育ちません。高校の理科の教員ながら、自分が大学生の時にはプログラミングをやっておらず、業務の傍らどうにかこうにか独習した(入試の合否判定にも時間割の作成にも成績をつけるにも使う=つまり学校の業務で使う)「VBA」を授業で使っているというのも(その授業を受ける高校生にとって)危うい。このサイトはほめぱげ「HTML」を「テキストエディタ」で“手打ち”しています。
「動く仕様書」になぞらえて「動く運転曲線」と理解する
PS4版のプレーヤーには少ないかもしれませんが、Windows版「A列車で行こう9」のプレーヤーにはダイヤグラムを描くことを楽しんでいる人々がいます。ただ、小学校の算数で習うような素朴な方法で描かれる直線のダイヤグラムでは、列車の加減速を詳細に扱うのに向きません。ゲームの中で「速度制限標識」を多用したり、ホームの長さや列車の編成の長さをいろいろ変えたりしたときに実際にうまく走れるのかはダイヤグラムという形式の図面だけではわからず、ゲーム画面で試してみることが必要になります。
現実のダイヤ作成では「運転曲線」を考える必要があります。各駅での時刻を点々と並べて直線を引くだけのダイヤグラムでは扱えない部分です。それでは「運転曲線」というのは、すごく難しいものなのでしょうか。いいえ。あなたが「A列車で行こう9」の画面で列車が発車して加速し、いくらか走ったら減速して駅に停まる、そのようすを見ている、それこそが「運転曲線」です。いわば「A列車で行こう9」というソフトウェアは「動く運転曲線」です。
- 鉄道総合技術研究所(鉄道総研)「運転曲線作成システム(SPEEDY)」
列車の能力(最高速度、加速能力、ブレーキ減速度等)を十分発揮しながら走行したときの各位置での列車速度を示した曲線が速度曲線/速度曲線を元に出発後の列車の経過時間を表したものが時間曲線/二つの曲線を総称して運転曲線と呼びます
設備改良・新製車両の投入などの投資をどのように行えば、より時間短縮効果を得ることができるかといった検討にも運転曲線は役立っています
SPEEDYの基本的な運転曲線を計算する技術は、省エネ運転や閉そく割りの検討のシステムに応用されています
- 東芝情報システム「モデルベース開発とは?」
モデルが動く仕様書となる雑な言い方をすれば、現に目の前で動いているプログラムがあればそれが仕様書だというのが「動く仕様書」という言い方で(やや自虐的に)言っていたときのニュアンスだったと思います。「動く仕様書」という言い方が一種の流行語になったあとからのこのこ出てきて「わが社も「動く仕様書」とかいうものをひとつ」と言わんばかりのお上品な大手メーカーがお上品に「動く仕様書とは」を定義しようとするとおかしくなってしまいます。「動く仕様書」という言い方は雑に使ってこそ。PG(プログラマー)最大の美徳は「怠惰」だということに疑いの余地はないと断言できます。
現に目の前で列車が走っていればそれが運転曲線だというのが「A列車で行こう9」なのです。わざわざ直線だけでダイヤグラムを描く退化したような方法をとる必要が、そもそもありません。「A列車で行こう9」の中だけでできます。それではなぜ「A列車で行こう9」といえばダイヤグラムを描いてみせないといけないような気がしてしまうのかというと、現在のように動画配信ができたわけではない時代の「A列車で行こう7」や、ユーザー間でのデータの交換ができなかった「A列車で行こうDS」などで列車が走っているようすを見せるにはダイヤグラムを描くとよかったというだけのこと。いまは動画で見せるのも容易で、セーブデータを共有することも可能ですから、わざわざダイヤグラムを描くという七面倒なことをしなくてもじゅうぶんだと思います。もっといえば、描かれたダイヤグラムには誤りがあるかもしれませんが、セーブデータには完全なデータがそのまま含まれていて、これを共有しない手はないともいえます。
A列車で行こう9・Exp.のダイヤ設定に関する誤解を解く
- A列車のダイヤ設定に所要時間の計測は不要です
「作成」と「設定」は違います・ダイヤグラムを描くには所要時間の計測が必要ですがゲームの中でダイヤ設定を行なうだけなら不要です(うまく走れたか、うまく追い越せたかを見た目で見るだけでじゅうぶんです)
- A列車のダイヤ設定で全駅全列車全時刻の入力は不要です
ゲームのプログラムに用意されたダイヤ設定の機能の全体像を理解せず、別のソフトを使ったり手で描いたりしたダイヤグラムを見ながら入力しようというのがそもそも適切な態度ではありません(ゲーム内に欲しい機能があるならきちんと要望すべきです)
- A列車のダイヤ設定では駅の設定とポイントの設定が必要です
ポイントの設定方法の全体像を理解せず、むやみに列車や線路ばかりを増やして「超過密ダイヤ」だの「複々線」だのと言葉ばかり飾り立てるのは滑稽ですらあります(時刻表という発想だけではダイヤ設定は完結しません)
- A列車のポイントは分岐側のみの設定で設定値を列車側に持たせる仕様です
鉄道模型のポイントでポイントを理解した人には「インチキなゲーム」と見える・ポイントの転換という物理層を抽象化した運行管理システムの発想に沿っていてむしろリアルだということを知りましょう
- 「不確定要素の事前設定による連動図表の効率的自動生成」鉄道総研報告(2009年1月1日)
配線略図に記載されない不確定要素(過走余裕区間鎖錠/内方信号機閉路鎖錠の信号制御軌道回路/進路表示機表示/入換標識(線路表示式)の信号制御条件/現示時素/進路区分鎖錠の区分方法/進路鎖錠における早期解錠/進路鎖錠における軌道回路短絡不良対策/時間鎖錠/接近鎖錠又は保留鎖錠/安全側線緊急防護装置/方向てこ/CTC関連てこ)/過去には,連動図表の記載漏れにより,異線進入となった事故も報告されているポイントで直進するのか分岐側に進むのか(駅の何番線に入るのか)を車掌と運転士はあらかじめ指示を受けていて、その箇所を通る前に、指示通りの進路が開通しているのかを確かめます。これを知っていれば、ポイントの設定値を列車側に持たせる(ように見える)「A列車で行こう9」の実装も、さほどへんてこなものだとは感じないでしょう。…てこだけに。
このサイトは、筆者が1999年5月に開設した「フォーラム」からの抜粋(ダイジェスト版)です。「ダイヤグラム総合(仮称)」には「フォーラム」25年分の何かが詰まっています。いまから25年かけて読めとは言いませんが、大学の科目の1つのように、半年もしくは1年かけて、じっくり味わってほしいと思います。リンクを開いて「フォーラム」が出たときに、ページの体裁がこのサイトとは違うことから「関係ないものが出た」「だまされた」などと勘違いして怒る人がいるようですが、とんでもありません。個々の内容について詳しく知りたいときは「フォーラム」の記事をお読みいただく必要がありますし、むしろ「フォーラム」のほうが本体です。自分が最初に見たものは本物で、後から目に入ったものは偽物だと感じてしまう心理的な作用があるといいます。
「A列車で行こう9」はPCゲームですから、このサイト(および「フォーラム」)はPC(Windows)での閲覧を想定して作成しています。ウェブページの本文が丸ゴシック体で表示される環境で読むのはつらいでしょう。スマートフォンで検索して見つけるところまではよいですが、ちゃんと読むときはPCで開き直してほしいと思います。複数の動画を見比べさせたり、PDFを参照させたりする箇所もあるので、スマートフォンでは厳しいです。PC向けのサイトであることを理解しないままスマートフォンでは見づらいことに文句を言うようでは筋違いも甚だしいと言わざるを得ません。PS4版「A列車で行こうExp.」をプレーする人にもPCは使っていただく必要があります。ビバPC。フォースPCとともにあれ!
※逆に「ダイヤグラム総合」の最初のページ(目次)だけを何度も何度も開いては「抽象的な精神論ばかりで具体的なことが何も書いてない!」と怒る人がいるようなのですが、あまりにもウェブサイトの見かたを知らなさすぎるとしか言えません。2秒でわかることしかわかろうとしない。セッションの概念がないにも程があります。単なるタブの閉じ忘れかもしれませんが。最初のページには「はしがき」などと題して、わざとおおげさに抽象的な精神論だけを書いておくものです。そして「あとがき」ではペットの猫への感謝を惜しみなく書き連ねるものなのです。
[ ダイヤ設定のヒントとテクニック ]
ARXの極みクワネド(81100) All Rights Reserved. ©2018-2025, tht.