A列車で行こう10への道

DATT-A9DARX選べるストレートⅣ

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翻訳結果についてのおことわり(in Japanese)

最終更新:2024年11月9日


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カラーバリエーション

色覚多様性について

ヒトの色覚特性繊細である。このサイトでは先般、「色がおかしい」のページで「A列車で行こう9」の色彩の明確に欠けているところ(色相環の上でのバリエーションの欠落)や誤っているところ(実物と異なる色になっている3DモデルやUIのデザイン上の定石に沿っていないところ)を具体的に指摘した。

それでは、そもそもどのような色彩になっていればよいのか、現実の色彩をビデオゲームではどのように再現するのかという話である。わたしたちはきれいな色や、色とりどりであることにうれしさを感じ、じぶんで好きな色を使えることには楽しさを覚えるものである。「A列車で行こう9」の具体的に何の色が何色だという個別の話の対極に位置づけられるのが、モノの種類と特定の色を1対1で固定してしまわないで、同じものをいろいろな色にしたいカラーバリエーションを楽しみたい)ということである。

カラーバリエーションがないもの
橋の種類ごとに1色ずつしかない
駅名標や地下駅の壁の帯の色が変更不可
ガードレール白しかない(形状も1種類しかない)
建物建物の色違いがない
本社ビルコーポレートカラーを設定できない
コンビニ意味不明な形で1つの建物に2種類の看板
デパートそごうの建物にイオンの色の看板
鉄塔赤と白のがない
電波塔東京タワーを灰色にしたのがあっていい
車両汚れ度や褪色の進行度に変化をつけたい
線路道床の汚れ度に変化をつけたい
道路路面の汚れ度に変化をつけたい
汚れたように見えてしまう暗い色

※これを見て、単にあれがないこれがないと言っていると思うのでなく、色違いというものをシステマティックに扱おうという発想自体がこのメーカーにはないようだということを読み取ってほしい。これは、単にあれがないこれがないということより、はるかに深刻である。このことは「ミニ鉄橋」が追加されたときに痛感して愕然とさせられた。「A列車で行こう9」というゲームをなんとなく遊ぶだけならなまじ遊べてしまうので、この問題の深刻さに気づかない人が非常に多いと見受ける。仮に「色がおかしい」をぜんぶ直してもなお「色の扱いがおかしい」というメタな問題が残るわけである。

※「コンビニ」の「意味不明な形」とは、これが映画のセットのように建物を表側から半分だけ表現したものなのだと理解しない限りは「意味不明な形」としか思われないだろうということ。「住宅」や「雑居ビル」も、4種類ほどの小さな建物をセットにしてマップに配置する形になっている。向きを回転させて、道路沿いや線路沿いなどに見せたい向きに使え(1つの建物を4回楽しめ)ということである。「A列車で行こうシリーズ」の、このような映画業界の知識に由来する表現には見るところがある。同じだけの専門性を色彩設計にも振り向けてほしいのだが、きっと映画がモノクロだった時代にしか映画を作っていなかったのだろう。

なお、色彩の基礎知識は中学校1年の「美術」に配当されているので、日本の16歳以上の読者であれば、必ず一度は習ったこと。忘れてしまっているなら思い出しておいてほしい。色彩というものは、感覚に頼らず知識と技術をもって設計するものである。PCやスマートフォンなどの画面上に表示される色は機種や設定によりかなり変動してしまうが、「A列車で行こう9」はPCゲームであるから、sRGBを正確に表示できるモニターを、適切な屋内の環境で見たときの色を基準とする。色の再現に難のあるプロジェクターで試写を行なってはいけない。PCゲームの色彩の検討や確認を紙ベース(カラープリンタによる出力)で行なうのもいけない

※ゲームソフトの本体とは別にグッズ(クリアファイルやタペストリーなど)を展開する場合は、画面上での色よりもクリアファイルやタペストリーなどに印刷したときのほうの色を基準にすることもあるかもしれない。

「A列車で行こう9」というPCゲームのありようを云々する以前に、鉄道趣味の中心には写真撮影があることを思い出していただく。模型製作という趣味もある。鉄道ファンというものは、いわば美術の延長線上に位置する領域にある。美術に関心のない人と比べれば、格段に色彩や造形に詳しかったり、細かい差異を気にしたりする生き物であるといえる。「A列車で行こう9」というPCゲームは、雑誌「鉄道ファン」に広告を出しているくらい、鉄道ファンをターゲットにした製品であるから、鉄道ファンであればごくふつうにこだわる程度の色彩や造形へのこだわりを嘲笑するかのような態度の製品になっているのでは、鉄道ファンからは総スカンくらって当然である。なお「横須賀色」もまた「A列車で行こう9」の中では大きく狂ってしまっている色の代表格である。

駅の売店で売られている「トレーン」のような玩具であれば、製造上の都合で色があまり正確でないとしても納得するものだが、PCゲームの色彩は完全にコントロールすることが容易にできるものであり、使う色の数や種類によって製造費用が変わるものではない。「A列車で行こう9」というPCゲームに正確な色彩や心地よい色彩を求めることは、それを具体的に要望する客がいてもいなくても生じている本来的な要求である。

【豆知識】PS2版「A列車で行こう2001」がJR東日本の「びゅうインターネット予約キャンペーン」の景品になったことがあった。PowerVRという専用の高価なハードウェアを必要とした「A列車で行こう5」からは、「A列車で行こうシリーズ」は価格相応にお堅いイメージで展開された。「A列車で行こう5」で登場した「オプショナルツアー」(現在の「車窓モード」)は、さりげにMICEな国際会議用語である。「A列車で行こう9」も、製品の発表会まではそういうイメージだった。六本木ヒルズでの展示はすさまじい。

PCゲームの色彩の基本をおさらい

「A列車で行こう9」のような3DCGを用いたPCゲームでは、指定した色でベタ塗りするわけではなく、CGオブジェクトに属性として色を与えたり、カラーのテクスチャを貼ったりした上で、3Dの空間内に配置した光源と、空間全体に効かせる環境光を加算するため、なかなか特定の色をどんぴしゃで表示することは保証しにくい。オブジェクトに持たせた反射(光沢)の強さによっても異なる色になってくる。そのような実地の話はさておき、ここでは最終的に画面に出る色や、それを見たユーザーが「何色」と知覚するかという話に限っておく。あまり繊細すぎることをするよりは、大ざっぱでわかりやすいということが要件になるだろう。

【豆知識】「金色」は『色』ではない(「色」だけでは「金」に見えない)。金属の光沢が、それを「金」と認識させる見えかたをさせる絵として「金」らしく見せるには、光沢を模したハイライト(白い部分)をグラデーションで描く。「銀色」については、ヘアラインや梨地などの表面の仕上げの別を絵として描く。

PCゲームの画面は、3DCGをレンダリングした画面に、操作メニューなどのボタンやバー、メッセージを表示するダイアログボックスなど(※これらを大ざっぱに「UI」と呼んでおく)を重ねる。UIは文字やアイコンの視認性を確保するため、また、そこにUIがあるということを3DCGの画面から浮き立たせて強調するため、白や黒の枠をつけ、その内側をベタ塗りにするのが基本である。このとき、UIにはあまりカラフルな色を使わない。「A列車で行こう9」のメニューはかなりカラフルだが、もっと白黒になっていたほうがよい。UIの部分で色を使うとすれば、プレーヤーに選ばせた(ゲーム内の会社の)コーポレートカラーをWindowsXPのウィンドウのタイトル部分のような位置や幅で大きく塗る(バナー的に使う)とか、メッセージの内容(緊急性や重要度、プラスとマイナスなど)に応じた色にするなど、意味を持たせるべきである。「A列車で行こう9」のメニューはなぜ青で、なぜ「File」だけ黄色なのかといった、意味(「なぜ」)を説明できないかたちで(作者の気まぐれで)カラフルにしてしまうのは適切ではないだろう。

色の使いかたに意味を持たせたいということと、色覚多様性への配慮は両立する。メッセージのダイアログで「警告」には赤を、「注意」には黄色を使うとすれば、濃度(明度)に差をつけたり、黄色については黒と黄色のストライプ(いわゆる警戒色)にするなどの工夫が可能である。カラーユニバーサルデザインの最終確認としてカラーの画面をグレースケール画像にしてみるというベストプラクティスがあるが、だからといって『色を使わなければユニバーサルデザイン』というわけではない。適切に意味を持たせて色が使われていれば、圧倒的にわかりやすいのである。そして、赤という色を単独で大きく使えば「警告」の意味が強いので、「A列車で行こう9」のタイトルの「A」の字だけを赤くするというロゴデザインは(価格不相応に幼稚といった)珍妙な印象を生む。「A列車で行こう9」のタイトルの「A」の字だけ赤いというロゴデザインのせいで本作が「なんかやだ」といった(客が自分では)説明不可能な感じで敬遠されている(ダサいから買わないといった意識的なことのほか、買う買わない以前に無意識に存在自体を無視する)面も多分にあるだろう。色彩を設計する側は感覚に頼らないが、ゲームソフトを買う側は感覚だけで色彩に促された行動をとるのだ。

ビデオゲームの色彩はHSVとRGBの両方を駆使して決めるべし

伝統的に「富士フイルムのデジカメは発色がいい」という話が伝わっています。色彩のコツをひとことで言えば「おいしそう」と思えるような色にすること。プログラミングではRGBのモデルで扱われるが、色彩の検討はHSVのモデルで行なう。

A9の「バス」の色

中学校の美術では、ポスターカラーを使ってポスターを制作する単元がある。PCゲームの色彩は、ここからつながる知識である。PCゲームだけにとらわれずに視野を広げるなら、そこにはグラフィックデザインやインダストリアルデザインという分野がある。ゲームの中のさまざまな要素や表現からは少し切り離して、色彩だけについて詳しく考えてみるのに好適なものとして、ここでは「A列車で行こう9」のバスの色に着目する。

バスの色は、わたしたちが色を呼ぶ言葉のありように強く影響されている。日本語では「赤い」とは言えるが「緑い」とは言えないので、「赤いバス」「緑のバス」と言うことになる。「赤い」と言えば、全体が赤いということを想起させ、「緑の」と言えば、ほかの色のものが先にあってから二番手として緑のものがあるというふうに聞こえる。また、白という色を「色」とは思わない人もいる。中学校までの美術では、どうしても白いキャンバスに白以外の色の絵の具で何かを描くものだという認識ばかりが強まりがちである。「白いバス」と呼ばれることがあるとすれば、それは全面が白1色だという特別な状態を言う表現ということになる。塗装の塗り分けの色の1つに白が使われていても、あまつさえ塗装に占める面積として白が最も大きい状態であってなお、白という色が特に言及されることはない。一方、「青の洞窟」という商品名の食品があるように、「青い」「赤い」「白い」と言えるものをあえて「青の」「赤の」「白の」と言うと、どことなく詩的めいてくる。このような日本語での色のとらえ方やイメージのもと、特に公共交通機関である路線バスの塗装の色は、子どもからお年寄りまで「何色のバス」と簡潔に呼ぶことができるような色にして、乗り間違いを防いでゆくことになる。

とはいえ、実際のバスの塗装は実に多様である。銀色に赤でウ×トラ○ン「赤いバス」「緑のバス」のように色名を挙げて呼ばれるような明快な色彩と、特に何色という1色ではないアイボリーや白の車体に何らかのラインやストライプが入ったものとがある。前者については、文句なしに明快で実際の塗装に忠実な色を再現する必要がある。ただ、素朴な言葉で呼ばれる色ほど、呼ぶ範囲が広くて曖昧さがある。「A列車で行こう9」でのバスの色は、赤や緑など漢字1文字の色を言葉だけで指示して色彩のチェックは何もしていないような色になっており、最も単純な問題としては、色相環の赤から黄色に飛んでしまってオレンジ色が抜けているという一種の発注ミスのような状態どうしてこうなった?)になっている。

「A列車で行こう9」のバスの色
HSV
コミュニティバス57222122
コミュニティバス43255214
コミュニティバス158255190
コミュニティバス245255217
近距離用ノンステップバス9525569
近距離用ノンステップバス14725598
近距離用ノンステップバス249255229
近距離用ノンステップバス43255128
中長距離用ハイデッカーバス43255187
中長距離用ハイデッカーバス255255155
中長距離用ハイデッカーバス94216110
中長距離用ハイデッカーバス142255142

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※この表は抜粋ではなく、本当にこれで全部。リンク先のブログの人は「さいたま」を名乗っているので「国際興業バス」のつもりで「緑のバス」を選んだのだろうが、こんな色満足できるはずがない。

「A列車で行こう9」のゲーム内でバスを「購入」する画面にある3Dのプレビューを適当に回転し、極端なシャドウもハイライトも出ない角度にしてスクリーンショットを撮り、グラフィックソフトのスポイトツールで色(車体の広い面の色)を調べた。「HSV」の「H」は色相環の角度(0~360°)に対応するが値は0~255である。このリストの下から順番に制作されたのではないかと想像する。最初にいかにもRGBという3色の観光バスを用意して開発し、車種を増やすときには、なぜか観光バスとは異なる色にしないといけないと思いこんだかのように(あるいは同じ色になるよう色味を調整しようという意図がまったくないかのように)異なる色になっている感じがある。本来、車種と色別のことなので、車種によらず同じ色であってよい。黄色については、中型の路線バスではまともな濃度だが、それ以外の黄色のバスは色が薄い。リストの中での色の並び順は、わざとばらばらにしたような感じがある。ふつうは色相環に沿って赤から順に並べるところではないだろうか。なお、ゲームの中でバスの色について文字列での色名の表示はまったくなく、作者がこの色を何色だと思っているのかは不明である。1973年のヒット曲「てんとう虫のサンバ」では、「あかあおきいろのいしょう」をつけたテントウムシしゃしゃり出るといいます

バスについて説明されている公式ガイドブックの「023」「056」ページ、プロフェッショナル公式ガイドブックの「046」ページ、公式マスターズガイドの「009」「010」ページのいずれにおいてもバスの色名の記載はない。公式な記載がない以上は、色名を勝手に挙げるのでなく色そのもの(カラーコード)を挙げるのが適切と考えた。なんと、あちらのウィキでは「コミュニティバス」の色を「淡い象牙」「シアン」「桃」と表記している。「淡い象牙」と「シアン」は大うそである。「象牙色」と呼べるほど赤みがなく、「シアン」と呼べるほど緑みがない。安い(古い)ノートPCなど、よほど色がわからない劣悪な表示環境でしか見ていない人が書いたのだろう。まともな色が表示できるいたってふつうの外付けモニターはたかだか1万円程度である。ものすごい高級品やプロフェッショナルな製品を使わないとわからないようなことではなく、せいぜい1万円程度の外付けモニターでじゅうぶんわかるのだ。電源ランプには黄緑色のLEDが使われることが多いので、電源ランプをホタルと呼ぶ人もいます




「A列車で行こう9」のバスの色(色相・明度)

※このように考えていくとHSLモデルに進んでいくが、ここではあくまで色相にフォーカスしたいのでHSVモデルだけで説明する。彩度はよしなに設定するものとして、色相と明度だけの平面で考えることができる。

望ましいカラー
HSV
0221121
オレンジ26255128
イエロー36255142
黄緑56228124
7622496
深緑9622472
青緑118160128
スカイブルー146255142
156224124
ロイヤルブルー17619296
19696128
赤紫236192128
ホワイト14255240
アイボリー3080240
グレー22816224
チャコールグレー2281680

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「A列車で行こう9」のバスの色は、赤といっても「赤いバス」と呼べるような赤ではなく、緑のものを見ても「緑のバス」と聞いて思い浮かべるような都営バスや国際興業バスのような若草色あるいは京都の市バスのような渋い緑色のいずれでもない。大型バス(観光バス)の車体では、塗装の面積が大きいことから、白や銀色などを広い面積に塗り、アクセントとしてカラーのラインを流れるように描き入れるものが主流である。これは、大型の車両が動いているのか停止しているのかを歩行者やほかの車の運転手から見て一瞬でわかるようにするためで、車体が大きければ大きいほどベタ塗りの塗装は避ける傾向がある(大型トラックでは側方灯を増やす)。「A列車で行こう9」の大型バスは白や銀色の部分がなく全面が濃い色1色のベタ塗りになっており、まったく実感的でない。また、色調(色合い)を整えるということとは別のことにはなるが、3DCGのレンダリングの結果として、「A列車で行こう9」のバスの表面には光沢感が乏しく、うす汚れているように見えてしまう。

一方、「A列車で行こう9」の中でもコミュニティバスの色は比較的まともだが、この色は実際にはコミュニティバスよりも通常の(中型以上の)路線バスでこそ使われるものである。自治体が運行主体となる現実のコミュニティバスでは、予算の制約から凝った塗装や専用の塗装はしづらく、白などの車体にカラフルな文字やイラストなどをラッピングフィルムで重ねるものが多い。既存のバス会社が運行主体となるものでは、送迎バスや貸切バスとして車両を広範に運用する都合上、コミュニティバスの路線で使用するものだけを特別な塗装にすることもしにくい。こうしたことから、コミュニティバスの地の塗装に凝った色が使われることはめったにない。あるいは、よほどの小型車を新車で投入する場合などで凝った色にする場合は、ほかの路線バスとの差異を際立たせるために、プラスチックのおもちゃのような色や、従来の路線バスではあまり使われないパステルカラー、特産の果物をイメージした色、地域の伝統産業などから着想した藍色や紫などを使う例がある。

このような現実のバスの塗装を踏まえ、「A列車で行こう9」のバスの色として、とりあえずこれだけあればいろいろな使い方や遊び方ができて不満はないだろうという基本的な色を網羅した「望ましいカラー」を上の表にまとめた。横軸を色相(H)、縦軸を明度(V)としたプロット(散布図)で見比べてみてほしい。「A列車で行こう9」のバスの色は、あまりにも色相が飛び飛び、しかもすかすかで、バランスが悪いことが見てとれるだろう。ストライプなどの塗り分けを想定した「ホワイト」と「アイボリー」と「グレー」は、色相環を3等分した「青」「黄色(クリーム色)」「茶色~赤紫」の色味を持たせた「白」である。「ホワイト」は無機的(鉱物)、「アイボリー」は有機的(生物)な色である。「グレー」は、その名の通り「灰」の色である。なお、わたしたちの知覚の特性として細かく色相を識別できる領域である「橙と黄色」や「緑から青にかけての色」については、色相が近いところからも彩度と明度を調節しながら複数の色を採る必要がある。色相環の上で完全に等間隔に採ればよいというものでもないわけだ。



「A列車で行こう9」というゲームの中で、鉄道車両は実在のものが登場するが、バスやトラックはなんとなくそれらしいものが会社名や型式・愛称などなしで(モノだけが)出てくるという作品になっている。「バスで行こう」と題するスピンオフ作品をつくるというならともかく、バス会社は多過ぎて、どこを収録してどこは収録しないということを決めることすら困難であるから、特定の会社のバスではないという本作のバスの仕様には合理性がある。バスをこのような扱いにしようと決めた作者の考えは理解するが、色についてはまったく同意できない。実在のバスを収録するわけではないからこそ、どのようなカラーバリエーションにするのかを作者の一存で完全にコントロールできるのであり、そこに責任を持ってこそ作者であるともいえる。いわば腕の見せどころで腕を見せない作者であっては、そもそも腕が確かなのかということまで不安になってしまう。わたしたちが安心して作品に没頭できるよう、作者にはしっかりしてもらいたい。

【豆知識】株式会社アートディンクは稲毛海岸にあった「A5(A列車で行こう5)完全版」には、稲毛海岸駅に発着する千葉海浜交通の3扉のバスが登場していた。販売は株式会社ゼストが担当していたので「ZEST BUS」と書かれたどう見てもはとバスな車体もあった。ちなみに、同社のゲームを古くから遊んでいるのに稲毛海岸を知らない人がいるのは、ゲームソフトを買う前に店頭でカタログをもらってきて穴が開くまで見続けてメーカーの所在地まで暗記してしまうということがなかった人、つまり、欲しいと思ったゲームソフトをいくらでもぽんぽん買えた人だということである。日本マイクロソフト株式会社は笹塚にあったが笹塚がどこにあるかは知らなかった。都バスの色彩の問題が起きていた時期は株式会社アートディンクが創業する直前の時期で、そのときすでに多忙な社会人であれば、ニュースなど見る暇もなく、従って都バスの事件をまったく記憶していない(事件だったという認識がない)ということがありうる。同様に長野五輪にあわせて登場した「長野色」をまったく知らない(インパクトを理解していない)とも見受けられる。

A9の「グループ色」とは

「A列車で行こう9」の「グループ色」は、「列車リスト」で各列車にカラーを割り当て、「サテライト」上に列車の位置を表示する「車両マーク」を路線ごとなどに色分けするもの。車両保有数が200編成に拡張されたA9V4追加された。この新機能の説明では「グループ分け」という表現があるが、一般に思い浮かべるような「グループ化」の機能ではないことに注意が必要だ。各列車にばらばらにカラーを割り当てるだけだから、もしカラーを変えたければ、すべて1つずつ変える必要がある。同じ色にしたからといって、ダイヤ設定や車両の撤去・売却・編成両数の変更などを一括して行なえるというわけでもない。

逆にいえば、一般に思い浮かべるような「グループ化」を実現しないのに「グループ色」と呼ぶことには何か強いものを感じさせられる。「グループ色」は「特色を出す」「一体感を高める」という意味で使われるビジネス用語でもある。(「グループ色が強い(弱い)」といった用例もある。この場合は親会社や創業家の影響力や支配の強さを言う表現である。古くは『血が濃い』などとも言った。)新機能の企画段階では「マルチプレイヤー」や、それを模した「企業グループ」のようなものをゲーム内で扱えるようにしたかったのだろうかという邪推も湧いてくるが、それはまた別の話ということにしておく。

※「Transport Tycoon」ではプレーヤーごとにカラーを持ち、駅やホームの屋根から線路脇の柵から車両までぜんぶ、そのプレーヤーのカラーになる。さしずめボードゲームの駒といったところだ。本社を建てれば、じぶんのカラーの社旗がはためく。マップの中をじぶんのカラーで埋め尽くす。陣取りともリバーシともつかない。そのようにマップ上のオブジェクトそのものにカラーが割り当てられるのなら、おもしろい機能になっていただろうが、列車にしか割り当てられない上に、列車そのものではなく「列車リスト」と「サテライト」でしか割り当てたカラーが使われない「A列車で行こう9」の「グループ色」は、まったく役立たずである。自社物件を緑色に「着色する」機能や、線路敷設のUIで線路を青や黄色でハイライト表示するのと同じことを列車(車両)についてもしてよいのである。各列車(車両)の本来の色は無視して、一時的に単色で表示するのである。車両のテクスチャを白黒にした上でカラーを乗せる(※単色ベタ塗りの無地のテクスチャを生成して、白黒化したテクスチャを50%ほどオーバーレイする)。車両以外の地面、建物、線路は真っ白する早送りすればマップ上で路線カラーの列車がうごめく。ズームアウトしてぼんやり眺めれば、さながら『動く路線図』のように見えるだろう。「A列車で行こうシリーズ」は3DS版のころから「Transport Tycoon」をよく知る人(しっかり遊んだ人)が企画に加わったかのような心強さがあるが、まだ表層的になぞる段階にとどまっており、「Transport Tycoon」をお手本にしながらも「Transport Tycoon」とは異なる独自の表現に昇華あるいは日本ならではという表現への『翻訳』は完成していないという印象である。「Transport Tycoon」を含む海外のゲームとの比較についてはこちらも参照のこと。

HSV
A000255
A100192
A200169
A300128
A400105
A5147112125
A6159185145
A717025570
A8170255103
A9170255128
B0149255143
B1155202169
B2138255128
B3140182185
B4138136202
B5128166207
B6128255128
B7123184144
B8126153141
B9128255105
C0125177105
C112965128
C212825564
C31286563
C48525550
C58525564
C68515486
C710412893
C8104127120
C9113129154
D08564166
D1113255191
D285187191
D3106255128
D4111255125
D564255128
D659255151
D785255128
D885155128
D957155128
E0589977
E15615489
E24325564
E33998148
E424145179
E538196190
E643255128
E736255128
E828255128
E919219170
F023255128
F130190125
F221150134
F33022697
F418191120
F514143103
F60152104
F70173106
F80135149
F9064166
G00201184
G14238182
G211255168
G36255163
G412255128
G50255128
G6247213120
G7228206110
G8232255138
G9234255180
H0248247223
H1213255121
H2213194184
H3214150165
H4198155127
H521325564
H6192194135
H7184152166
H8176135147
H9176203171
U9000

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「A列車で行こう9」の「グループ色」は、「A0」から「H9」までが何らかの連続性を企図した配色になっているように思われるが、HSVで見ると明らかなように、いくつかの基準の(まともな)色が飛び飛びにあり、その間を、ほぼでたらめと言ってよい(美しくもないし識別性も低い、変化量が等間隔でもない)中間色で埋めて、色数をむやみに増やしたという印象のあるパレットになっている。「R0」から「U8」までには、JR東日本、東京メトロ、都営地下鉄の路線カラーと思われる色が並ぶが、地下鉄については対応する車両が収録されているでもない。どう使えというのか。「A4」から「A5」でいきなり色が乗るのが不可解である。「C9」と「D1」の間にある「D0」の色にはどのような意図があるのか。「E4」の色が前後から浮いている。「G0」から「G9」までの色は口紅かマニキュアかという繊細な色が並んでおり、そこだけ別の人に作らせてくっつけたようにも見える。(1つのパレットたる一貫性がない。)そもそも「A列車で行こう9」の中で使う「グループ色」として有用なパレットにするという目的を忘れていると言える。「A0」は白だが、白という色を選択する機能はなく、「A0」を選択すると「未指定」になりデフォルトの色が使われるという仕様になっている。これだけの色数のパレットがありながら、白という色は選択できないのである。

HSV
A000255
A100192
A300128
A9170255128
B2138255128
B6128255128
C212825564
C58525564
D3106255128
D564255128
D785255128
E24325564
E643255128
E736255128
E828255128
F023255128
G211255168
G412255128
G50255128
G8232255138
G9234255180
H521325564
U9000

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色数を無理に増やそうとする前に作られたと思われるパレットを復元した。暖色系は比較的整然とした配列になっているが、寒色系は極端に飛び飛びになっている。暖色系と寒色系で担当者が違うのではないかと思わされる。多くのパレットは赤から始まるが、「A列車で行こう9」のパレットは無彩色から始まり色相としては青から始まる。単に配列するだけでなく記号と数字をつけてあるので、この配列には何か絶対の意味があるのだと感じさせる。なお、数字は0ベースである。このパレットは、記号と数字が若いほうから順番に作っていったのだろうか。そうだとすれば、まず、寒色系については既存のパレットから色を採ったりHSVで考えて等間隔で採ろうという考えなしに、いきなりRGBで好き勝手な色を採って並べたと疑われ、その後、暖色系については他人に任せたとも思えるようなパレットだ。「水色」と「黄色」のみ、RGBでいう暗い色を用意しようとした気配がある。もちろん、ここではRGBでいう暗い色を用意するのでなく、HSVで考えて彩度と明度(輝度)を繊細に調節するのが正攻法である。映像として明るすぎず暗すぎない(色彩をよく感じとれる)範囲を見定めたのち、同じ色相の色について、濃い色と薄い色を用意するものである。

貨物列車の色彩は「実用本位」

ここまでは色とりどりであるとかきれいな色やわかりやすい色を使う楽しみやうれしさについて述べてきたが、その対極にあるのが貨物列車の機関車や貨車の地味な色である。基本的に機関車や貨車は汚れたり錆びたりしやすいため、黒や茶色、紺色などの色にされてきた。汚れが目立たない黒っぽい作業着が主流だった昭和30年代、紀文の工場では白衣を着用するように変えたといいます

そのような機関車や貨車で、黒や茶色、紺色以外の色をわざわざ使う場合には、実用上(運用上)の明確な意味がある。電気機関車は、直流機は青、交流機は赤と、明確に塗り分けられている。色に意味があるので、「A列車で行こう9」の中で「EF81」を収録したら「EF64」は収録しなくてよいというものではなく、ほぼ同じ外観で青と赤の両方があるというペアになった状態をゲーム内で再現することが望ましいのは言うまでもない。そもそも電気機関車は歴代すべての車種を遡及収録するとしても数が知れているので、できる限り取捨選択(作者の気まぐれな選り好み)をしないで通時的な観点でラインアップを決めてもらいたいものである。

コンテナ貨車(コキ)の色は、コンテナ列車の最高速度の向上や大型のコンテナへの対応などを明確に区別するために、明るいブルーやペパーミントグリーン、ライトグレーなどの色に塗り分けられている。最高速度や大型コンテナ(海上コンテナ)への対応というものそのものをゲーム内で再現するゲームにするかどうかとは別のこととして、単なる外観の違いとしても、明るいブルーやペパーミントグリーン、ライトグレーなどの色に塗り分けられたコンテナ貨車(コキ)は、見ているだけで楽しいものである。歴代の「A列車で行こうシリーズ」では、貨物列車といえばコンテナで、コンテナといえば(ゲーム内で建物を建てるのに必要な)『資材(いわゆる豆腐)』というユニークなゲーム性と直結していて、貨車の種類を増やしたり色とりどりにするという発想はなかった。ゲーム内でのグラフィックも旅客列車の車両ほどには実感的でなく、なんとコンテナ貨車は現在の主流の5個積ではなく4個積の、日本の国鉄のコンテナ列車の黎明期にあったものを再現している。こういうところにはプレーヤーも無頓着で、「A列車で行こう9」のコンテナが5個積ではなく4個積であることを指摘したり不満を述べたりする者をこれまでに見たことがない。鉄道模型では(安価な)コンテナ列車を楽しむライトな人が多く、本来なら「A列車で行こう9」の客層とも重なるはずなのであるが、鉄道模型でコンテナ列車を楽しんでいれば「A列車で行こう9」のコンテナ列車は許せないものと感じられてしまう(だから買わない)だろう。

「A列車で行こう9」発売前年の2009年にはまだ見ることのあった黄色や銀色のタンク車は、積載物の違いを表わしている。私有貨車や私有コンテナでは、コーポレートカラーなどに塗装するのがふつうである。ゲーム内でも、将来の仕様としては「マルチプレイヤー」や「複数の会社(プレーヤーと競争する仮想プレーヤー:いわば対戦AI)」に対応するときに、プレーヤーやゲーム内の会社ごとに色を変えるなどの応用ができるだろう。コンテナについては、着発地を「隣町」としたり、いわゆる静脈輸送建物の解体で出た廃棄物(ガラ)を搬出しないと新しい建物が建たないようにしてプレーヤーを忙しくしたり、「コンテナ港」を目的地としたりするゲーム性の拡張とともにコンテナの色と種類を(ゲーム内で意味のあるかたちで)増やすこともできよう。3DS版やSwitch版のように「Transport Tycoon」と同様の積み荷の種類(木材や農産物)にしてみせるばかりがゲームではないのだ。


比べる相手は他社のゲームではなく実物である。自分の地元で見られる車両だけで考えてはならない。最も公式の資料を探そう。現行の機関車と貨車については「貨物時刻表」にすべて掲載されているので、これに準拠するというのが唯一の正攻法である。貨物列車を利用する荷主にとって必須の情報だから「貨物時刻表」にすべて掲載されているわけである。ここに掲載の情報だけで「すべて」と言い切れるところがよいところである。最も公式の資料を最初に参照するのが唯一の正攻法である。まだまだ知らない種類のものがあるのではと疑心暗鬼になる必要がない。詳しくは「車両の選び方(カタログの作り方)」を参照のこと。

※「貨物時刻表」に掲載されていないことがらをほじくり出してくるのはお行儀が悪いという『線引き』が可能である。

ゲーム性としての「カラー」

ゲームに登場するさまざまなオブジェクトが単にカラフルになって見た目が楽しいというのも、もちろん楽しくはあるが、やはりゲームなのだから、何色を選ぶと何が起きるとか色の組合せのよしあしでゲームの行方が左右されるといった「ゲーム性」と直結してほしいものである。これは、ゲーム画面に好きな色のオブジェクトが登場しさえすればよいという「いわゆるMOD」とは明確に異なる考えである。

説明
ウェブカラーから選ぶ近似色
HSV
H- 1レッド0255128
H- 2オレンジ28255128
H- 3イエロー36255128
H- 4イエローグリーン(若草色)59255151
H- 5グリーン(JIS)8525564
H- 6エメラルドグリーン(青緑色)104127120
H- 7スカイブルー(水色)138255128
H- 8ブルー149255143
H- 9ネイビー(紺青色)17025564
H-10ワインレッド228206110
W- 1ホワイト00255
W- 2ピンク234255180
W- 3クリーム色 27255218
W- 4緑(JIS)85155128
W- 5ペパーミントグリーン113129154
W- 6バイオレット(すみれ色)184152166
W- 7グレー00192
R- 1オレンジパーシモン(柿色)18191120
R- 2あかね色0173106
R- 3マルーン025564
R- 4ブラウン1819479
R- 5000

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HSVとRGBなどを相互に変換できる「カラー選択ツール」がGoogleにも用意されている。なお、HSVとRGBの変換は簡単な式なので、じぶんでプログラムやExcelを書くのも難しくはないだろう。


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(このページの初版公開:2020年4月29日、要望24の初出:2019年4月1日、要望16の初出:2020年1月27日、要望12の初出:2020年7月1日)



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