Adobe Illustrator使用:情報デザイン、駅等級、昭文社、高橋書店と黒1色の路線図とは。ドア上の停車駅案内図、配線略図、通勤届あり。路線図の商標的使用にご注意ください。(最終更新:2024年10月10日)
路線図の目的 | 路線図の特徴 | 路線図の読み方 | 路線図の入手方法 |
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乗車経路・乗換駅を案内する | デフォルメして描く | 現在地と目的地を見つけ、乗車すべき経路をなぞり、乗換駅を見つける | 改札付近/公式HP ※無料 |
広告や宣伝ではない(名所案内ではない) | 距離や方角は正しくない | 乗車や旅行に必要な情報が路線図だけですべてわかるわけではない | 転売・複製・改ざんをしてはいけない |
いま、まさに『路線図』を描こうと「路線図の描き方」というクエリで検索したあなたに「描くのをやめろ」というようで申し訳ありませんが、あなたが自分勝手なやりかたや考えで『路線図』を描いて失敗や後悔をしてしまう前に、これだけはお伝えしなければなりません。「路線図の描き方」とは、「路線図は何ではないか」を知ることです。
路線図とは何かを学ばないまま、見た目だけを真似して図を描くことはやめましょう。じぶんが見たことのある図だけの、しかもうろ覚えで描こうとすると大失敗しかねません。路線図と、路線図ではない図(地図、地形図、停車駅案内図、運賃表、駅構内の配線略図など)の違いをしっかり理解して描き分けましょう。図を描く目的を再確認して、その目的に最適な図の体裁(appearance)を選び取りましょう。あなたがゲームを進めるために必要な図は、路線図という体裁(美観や意匠性)にこだわらず、ゲームの中での実用性(線形や駅間距離の計画や確認など)がじゅうぶんに得られる体裁で描きましょう。特に、何の準備もしないままいきなりグラフィックソフトやプレゼンテーションソフトなどを開いて、むやみにカラフルでファンシーな図をやみくもに描いてしまうことは避けましょう。また、専用のアプリやテンプレートを使って安直に作成したものを「自作」とは呼べません。あなたが「路線図」を「作品」や「作品の一部」として『発表』したいのであれば、アプリやテンプレートに頼らず自力で描くことが絶対の要件になります。(これを「独創性」といいます。)まずは白い無地の白紙にフリーハンドで手書きしてからでも遅くはありません。スマホは脇に置いて紙とペンを用意して自分を解放して解き放って、黒のペンだけを使ってモノクロームの黒1色で思いの丈を自由にのびのびと描きましょう。消しゴムは使わずに紙は何枚でも捨てるように使い捨てしながら使いますが、1枚たりとも捨ててはなりません。失敗したものや途中で投げ出したものも含め、描いた順で綴じてメイキングを記録してください。コーヒーとは、浴びるように飲む飲みものです。
(会津大学)このページは「情報デザイン入門」(平凡社新書)を読んでから読むべし
- “日本で言う「デザイン」という言葉に振り回されて、画としての表現技術を求めて読もうという方には向きません。”(Amazon.co.jpのカスタマーレビュー)
ゲーム「A列車で行こう」で遊びながら「そうだ、路線図を描こう!(10分で)」と思い立ったあなたには、ゲームの中だけでは充足できない切迫したニーズがあることと思います。でも、そのソリューションは本当に『路線図』なのでしょうか。あなたが描くべきは『路線図以外の何か』だったりしないでしょうか。
そうしたことを自分自身で自問自答していただき、それでもやっぱり「描きたいのは路線図だ」という結論になれば、おめでとうございます。この続きを読んで「路線図」を格段にリアルなものに仕上げていってください。ゲーム「A列車で行こう」を楽しみながら「路線図」を描く楽しみに締切はありません。いくらでも時間をかけて、いつまでも編集を続けましょう。安直に手軽な方法でそれらしく描いたというだけで終わりにしていては、あなた自身を満足させることすらできないはずです。「路線図」を描くからには、とことん追求する。これが「遊ぶ」「楽しむ」ということの神髄だと思います。
このページは「路線図を描くのをやめろ」とか「本当に路線図でいいのか」とか「そもそも路線網を作りなおせ」といったことをいいます。じぶんのマップの路線網はすでにしっかりできていてあとは(10分で)路線図を描くだけだと思っているあなたは、さぞかしむっとするでしょうが、そこはこらえていただいて、「どうしてそんなことをいうのかな」と半信半疑の慎重な姿勢で読み進めてください。「考える」というのは、そういうことではありませんか。ちなみに通勤経路の届出に添付する図を『路線図』とは呼びません。10分とは、あまりにも短すぎる時間です。
図の種類 | 目的 |
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路線図 | 乗車経路を案内する
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停車駅案内図 | 降車駅を確認させる
|
配線略図 | 運行に必要な施設の概略を示す
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地形図のようなもの | 等高線または同等の情報が読み取れる |
地質図のようなもの | 地形の特徴の変わり目から推定した情報を示す |
「路線図」とはかけ離れた内容や表現となる図の種類も挙げましたが、これはゲーム「A列車で行こう」で遊びながら「そうだ、路線図を描こう!(10分で)」と思ってしまった人にとって実は真のニーズではないかというものを挙げたものです。ゲーム「A列車で行こう」で遊びながら「そうだ、路線図を描こう!(10分で)」と思ってしまう人の言い分をしっかり聞いてみれば、きっと「自作マップの地勢を紹介したい!」とか「自作マップの複雑なダイヤを自慢したい!」といったことだろうと思うのです。こうした目的には、「配線略図」で自作マップの鉄道施設を「路線図」よりも詳細に描いて説明することや、「地形図」「地質図」を模した図(いわば地図)に「土地利用」を具体的に(言葉で)書き込んで説明することなどが必要であるはずです。「路線図」を描きさえすれば自作マップの自慢ができるなどと思ってはいけません。自慢というものを“正しく”するのは、難しいことなのです。
※「自慢」:他人に対してするだけでなく、じぶんでじぶんに、じぶんがつくったものはこういうものだぞと認識させるはたらき(鏡で自分の姿を見るような)もあるので、自慢というものは、どんどんしてください。
ゲーム「A列車で行こう」で遊んでいながら、「配線略図」を描くことや「土地利用」を言葉で説明するという発想がなかったとしたら、それはもったいないことです。そもそも「配線略図」や「土地利用」という概念なしでは、ゲームをプレーするのも自作マップを制作するのも、おぼつきません。これまで思うままにわがままに(人の話を聞かず何も勉強せずマニュアルも読まず公式ガイドブックも読まず)無我夢中で遊んでいた人が、ふと客観的にセーブデータや自作マップを見たときに、じぶんでもちょっとよくわからない。そうしたきっかけがあって(※平たく言えばゲームに飽きて)「そうだ、路線図を描こう!(10分で)」と思うのだろうと、思うのです。そのとき「路線図」しか思い浮かばないのは、ある程度しかたありません。そんな思いつきで描こうとする人にとって「路線図」を描くのは難しです。そうすると「路線図の描き方」と検索して、いま、このページを読むです。「配線略図」も「土地利用」も知らないのかと、ちょっとあなたを責めるようなことが書いてある。だけど、どうか怒って帰ってしまわないでください。「路線図」までばっちりの自作マップにしたければ、おそらくマップそのものを最初から作り直すことになるでしょう。「路線図」がうまく描けないとか、描いてみたけどかっこわるいというのは、あなたのマップの路線網が何かリアリティを欠いているからにほかなりません。「路線図」をかっこよく(リアルに)しようとすれば、回りまわってマップそのものも洗練されてゆくのです。日本語には「急がば回れ」という素敵な言葉があります。
以下の3枚の図は、ゲーム画面の「サテライト」から路線と駅を簡略化して描いていくプロセスを示しています。(自作のツールを使用して色を置き換えています。ゲーム画面ではこのような表示です。)
(説明)路線図の目的は、乗車経路を案内することです。このため路線図では、実際の線路の線形(向きや長さ、曲がる地点や角度、交差)にはとらわれず、線路のつながりを見やすく表現します。駅が多いところは拡大し、駅が少ないところは圧縮して描かれます。駅名などの文字を表示する都合によっても、実際の線形とは異なる配置になっていくのです。路線図は、路線網があらかた完成してからでなければ描きようがないものともいえるでしょう。
路線図の特徴は、紙に印刷して電車内や駅に掲出したり、配布して客が持ち歩けるようにしたりするところにあります。路線図は、目的地の駅を見つけ、そこまでの経路を知るために使われます。このとき、紙の上で指で線を追いかける、あるいは目で見るだけで線を追っても見間違えることがないように色や大きさなどが配慮して制作されます。
路線図に描かれたことを読み取るのは簡単ですが、路線図に書かれていないことや、路線図ではわからないことのほうが多いということを知っていないと、大変なことになります。特に「A列車で行こう9」というゲームに関して「路線図」を描く人は、路線図1つですべてがわかる(「路線図」さえ描けば、自作マップのすべてを紹介しきることができる)かのように錯覚しがちです。路線図は地図の代わりにはなりませんし、もちろん時刻表の代わりにもなりません。あたりまえといえばあたりまえですが、このような方向から考えていくことで「路線図とは何か」がより明確に見えてくるでしょう。
路線図はデフォルメして描かれますから、駅と駅の距離や方角を路線図から読み取ることはできません。距離がデフォルメされている以上、所要時間を路線図の見た目から判断してはいけません。東京近郊の路線図を見ると、熱海も銚子も甲府も宇都宮も東京から近いのではないか、同じ日に熱海も銚子も甲府も宇都宮もまわることができるのではないかと思ってしまいますが、実際にどれだけ離れているでしょうか。路線図ではなく地図を見たり、時刻表で所要時間を調べたりして確かめましょう。乗り放題のきっぷの中には、そのきっぷの対象エリアをそのきっぷの有効期間では到底まわりきれない(エリアの端から端まで1往復することはできるがすべてをくまなくまわるには時間が足りない)ようなものもありますので注意が必要です。
以下の図は、ゲームの中での線形と駅の位置を忠実に描いた地図になっています。路線図として仕上げるためには、かなりデフォルメしないといけないことがわかるでしょう。(自作のツールを使用してランダムに得た地名をマップの地形・地勢に応じて与えています。)
(説明)以下の図は、先に路線図があり、それをもとにゲームのマップを仕上げていくプロセスを示しています。路線図は実在のものでも架空のものでも、それらをミックスしたものでも、考えていく流れは同じです。心理学でいう「認知地図」の実験方法を参考にするとよいでしょう。じぶんで描くばかりでなく、他人が描いた図を理解する学習も有意義です。
(説明)空間を横長に使って距離感を強調するつもりで、正方形のマップを「45°」回転させて考えます。なお、「A列車で行こう9」(PS4「A列車で行こうExp.」)で引ける線路は「22.5°単位」ですので、線形は「22.5°単位」で考える必要があります。「45°」の線だけで描かれた路線図と比べると、だいぶ自然な線形にすることができます。路線図を描くためのデフォルメとは逆のことをする感覚です。これは単に見た目の話ではなく、分岐駅での複数の路線の関係性(どちらが主でどちらが従なのかや新旧など)を明確化でき、路線(線区)を跨いで運行される列車の有無や回数(頻度)をも示唆するものとなります。線形を大域的に見れば、「速達型」や「シャトル」などの列車の運行イメージも自然と想像できてきますから、見た目以上に情報量の多い図といえます。
(説明)この路線網に合いそうな地形を「地形の自動生成」で生成します。
(説明)よさそうな地形が得られるまで何度でも生成を繰り返しましょう。
路線図は目的地までの乗り換えがわかるようにするための図です。JRの路線図では、路線と路線の乗換駅は強調して表示しますが、特急停車駅を強調することはしません。このことは運行情報・運休情報を表示する画面でも有効で、乗り換え(乗り継ぎ)の経路上に運休区間がないかどうかを一目で確認することに役立ちます。特急列車については、そもそもきっぷの買い方や乗車のしかたが異なるので、別口で案内があればよい(特急停車駅は特急列車の車内で案内すれば足りる)ということです。
路線図では特急列車のほか、通勤快速やライナーも表示しません。「むさしの」「しもうさ」のような列車も表示しません。
一方、朝夕のみの地下鉄東西線の津田沼乗り入れや取手までの常磐線各駅停車は表示します。湘南新宿ラインの特別快速や相鉄線直通列車も表示します。
地下鉄や私鉄では、踏切にかかる交通安全教室や社会科の乗車体験などで児童に配る非売品の「下敷き」を用意していたところがたくさんありました。その後、公式グッズとして市販しているところもあるでしょう。
ネットで検索すると、「地下鉄路線図の書き方」と題してツールの操作方法の説明に終始する記事や、「世界の美しい地下鉄マップ」という題でひたすら美術作品の1つとして路線図を愛でるだけの図書といったものが見つかります。路線図は、子どものうちから目にするもので、美術に限らずいろいろな科目の教科書や試験問題などで取り上げられることがあるものです。それだけに、路線図はこういうものだということを言語化しないままなんとなく承知しているだけであるにもかかわらず、自分は路線図についてよく知っていると錯覚してしまう人が非常に多いと思います。
路線図はグラフィックデザインでありDTPであり印刷です。そのいずれも、専門的に学ばない限り仕事にならない、とても専門性の高いものです。わたしたちの社会は、さまざまな専門家や専門職の人々によって支えられています。そのような専門性へのリスペクトを欠き、何も学ばないで拙い図を勝手にこしらえ、自慢げに披露するということは慎まねばなりません。また、ファッションのようにロンドンの地下鉄の路線図でサンドイッチを包むようなことも、ほどほどにしたいものです。
路線図に関するリーガルな話題(1)
路線図は何のために描くのか、路線図を描いてよいのは誰か。路線図は、一義的には鉄道事業者の財産である鉄道路線を描く図です。外国の調査船が勝手に領海に入ってきて海図を作成したら、どうでしょう。いわば他人の家の見取り図を勝手に描いてはいけないように、路線図は鉄道事業者だけが描いてよいものだとする考えかたも成り立ちます。路線図は無料で配布されていますが、無料ではありません。鉄道は公共交通機関ですが、路線図はパブリックドメインではありません。無料で配布されているものは自由に使えるという誤解が蔓延しています。鉄道事業者が作成して配布している路線図は自由に使える「素材」ではありません。あなたが好き勝手に切り刻んだり、他人に見せながら何かしゃべって入場料を集めたり酒をおごってもらったりしてよいものではありません。動画で流行りの「歌ってみた」「踊ってみた」は「実演」にあたり、著作権の使用料は動画サイトが負担しているので問題ないですが、市販の製品などを「買ってみた」「食べてみた」、有名な場所やイベントなどに「行ってみた」というだけで動画にするのはグレーです。作品を出版したり個展を開いたりするプロの中にも、市販の製品などを並べて写真に撮るだけで新たな作品としてしまう人がいますが、かなりグレーです。何の変哲もないパンや野菜を並べるのはよいですが、プラレールやNゲージ、ひいては任天堂のゲーム機やゲームのキャラクターの人形などを並べるのはアウトです。その場では金銭のやりとりがなくても、職業的に作品を発表する人が他者の作品や製品をどう扱うのかを、人々はよく見ています。ことさらに先鋭的にグレーなことをしてみせてこそ芸術表現だと考える人もいますが、社会通念上、決して感心されるものではありません。美術の教科書のキャンベル・スープに心酔して猿真似するのでは不勉強の度が過ぎます。当時とは商標やプロダクトデザインが持つ経済的価値の大きさが桁違いで、芸術活動もまた市場経済に組み込まれた現代において、昔と同じことはできません。本物の路線図そっくりの図を勝手に描いてしまうという単純な著作権の問題のほかにも、考えるべきことがたくさんあります。
鉄道は国の免許による事業であるほか、地域の鉄道については県庁に担当部署が設けられています。鉄道というものに関して、県庁は直接の当事者です。埼玉県が描く路線図は埼玉県内だけを切り取ったものになっており、路線図としては極めて珍しい正方形に近い縦横比となっています。埼玉県の図では河川は描かれていませんが、大都市の大きな河川では、道路よりも鉄道の橋のほうが人員の通過量(交通)が多く、県の担当部署としては鉄道の橋にも道路と同じだけの大きな関心を持っているはずです。
営業エリアが非常に広いJRでは、ある程度の範囲ごとに支社が設けられ、本社から権限が委譲されています。支社ごとに路線図を描くというのは、以前にはあまりなかったかと思いますが、最近では「大宮周辺路線図」という大宮駅を中心に概ねさいたま市内を切り取ったかたちの路線図が新たに見られるようになっています。千葉市はモノレールだけでてんてこまいでJRの千葉支社は千葉県のキャラクター「チーバくん」を使うばかりですが、横浜支社では川崎市との連携を深めて南武支線への新駅設置も行なわれています。支社が政令市の市内だけを切り取った路線図を描くというのも、支社と政令市の協働が進められた結果の1つなのでしょう。
ただ、この「大宮周辺路線図」は、「画としてのデザイン」の部分部分のパーツはJR東日本そのものですが、このような範囲を狭く切り取った路線図というものは多くの人にとって見慣れないものであり、これが路線図だということがパッとはわからないでしょう。わかった上でなお、この路線図から情報を読み取るときの心的負担は、見慣れた路線図の場合よりもはるかに高いでしょう。路線図は斬新である必要もカスタマイズする必要もなく、ずっと同じものが安定して提供されることが何より重要だと再認識できる事例ではないでしょうか。埼玉県の路線図は埼玉県の事務において使われるだけのものなので独自のデザインで問題ありませんが、駅に掲出する路線図を支社のレベルで独自のものにしてしまうのは問題があると感じます。
高尾駅線路切換工事にともなう振替輸送について説明する図では、工事箇所の管轄である八王子支社の管内が図示されています。利用客は東京や横浜や大宮から八王子へ向かおうとして戸惑うわけですが、この図に東京や横浜や大宮は記載されません。支社が異なるからです。
路線図として見たときには「大宮周辺路線図」に負けず劣らず見慣れない図ということになりますが、これは常設の掲示物ではなく工事のチラシやポスターに刷られて配布されるものですので、紙面の都合上、このようなデザインになることは許容されるわけです。通常のデザインとはかなり異なりますが、工事のチラシやポスターに限っては長年、同じデザインで一貫して制作されているので、このデザインを見てJR東日本の工事のチラシやポスターだと識別できるという識別性は、すでに確立されていると思います。
駅での情報提供のニーズは地域によりかなり異なりますので、それに応えることが大切なのは言うまでもありません。ただ、「表」という形式になっていない運賃表(※それでも「運賃表」と日本語では呼びます)を「Table of Short Distance Tickets Fares」と直訳するのは感心しません。「Intracity Ticket Fares」でよいのではないでしょうか。(※「特急料金」などを含まないベースの「運賃」が「Fare」で、アディショナルの「特急料金」などは「Fee」といいます。)PCゲーム「A列車で行こう9」の『路線図』を描く人の中には、なぜかJR九州の「近距離きっぷ運賃表」そっくりのデザインでしか「路線図」を描けない(それ以外のデザインを知らない)人がいるように見受けます。きっとJR九州の「近距離きっぷ運賃表」しか知らないのでしょう。JR九州の管内では、いわゆる路線図というニーズ(デフォルメしないとわからないような複雑さ)がありません。たいていの場合は、「2枚・4枚きっぷのご案内」のように九州全体の地図に路線を示した図になるでしょう。JR九州の「近距離きっぷ運賃表」だけが「路線図」っぽく見えるとは思います。しかし、これは「路線図」ではないのです。JR九州の管内で素朴に鉄道を利用するだけでは「路線図とは何か」ということは体得しにくいといえるでしょう。
1989年4月に政令市に移行した仙台市による「JR仙石線連続立体交差事業」で地下化されたJR仙石線の榴ケ岡駅では「仙台周辺路線図」が掲出されています。見るからに古そうなので、おそらく2000年3月11日の地下駅の営業開始時からあるものでしょう。ただ、どうもJRっぽくないデザインに見えますので、この掲示物は道路特定財源を活用しつつ仙台市の責任で制作・設置されているのかなと思います。
成田空港は国の事業で、空港アクセス列車は国の責任で運行されています。空港第2ビル駅にも、JRのデザインではないサイン類がいろいろあります。「成田エクスプレス・快速停車駅案内」は、デザインはなんとなくJRですが、この内容を電照式で掲出するというのがJRっぽくありません。国の指示でJRが制作・設置したものだろうと思います。
掲示物の内容は路線図なのですが、これはJRがJRの責任で掲出する路線図ではないでしょう。沿線自治体(浦安市・千葉県企業庁・千葉市)が駅に広告を出しているという扱いではないでしょうか。「東京ディズニーランド®」は漁業権の一部放棄と引き換えに浦安市が獲得した公園です。成人の日に浦安市が我が物顔で使えるのは、このためです。
路線図に関するリーガルな話題(2)
路線図というものを漫然と愛でるのでなく、何者がいかなる権限で、いかなる財源で、その路線図を作成・掲出しているのかを意識するようにしてください。例えば、質問回答サイトで他人のために旅行の旅程表を作成・提案したり、実際には不可能な日程の「旅行記」(実際に旅行せず資料写真を並べただけで創作された記事)をブログに掲載したりすれば、おおらかな気持ちでは旅行業法に違反してしまいます。旅行業法は、そもそも旅行者の安全を確保するための法律です。日程に無理があれば疲労や不注意による事故や遭難のリスクが高まってしまいます。旅程表の作成には重大な責任が伴うのです。具体的な法令がなくても安全に配慮する義務は広範に認められています。なにげない言動でも民事上の不法行為になってしまうものは多々あります。路線図に間違いがあって日没や終電までに目的地に着けない人が出ては一大事です。路線図を勝手に自作や改変、ましてやジョークのつもりでも「ニセ路線図」の画像を作成して流布するのは許されないという考えは、このような道すじで導出できると思います。このサイトの「駅名のつけ方」のページでは「知的財産の種類とコンプライアンス」についても紹介していますので、そのようなリーガルな話題を学校や職場で聞いたことはない(聞かされても聞いていない)という方は、必ず読んでください。ここで述べた「あれは誰それの持ち物」「金の出どころはどこそこ」という話は、単なるトリビア(珍しい話や面白い話)やゴシップ(興味本位のうわさ話)ではなく、このようなリーガルな話題を扱っていく素地を養ってもらいたいために載せておくものです。高等学校の「理数探究基礎」で習う「研究倫理」にも通じるものです。
鉄道事業者でも行政でもない第三者が作成する路線図では、JR線と私鉄・地下鉄のどちらを強調することもなく中立的に描かれます。一方、多くの人にとって利用頻度の低い新幹線は細い線で描かれます。線や色に大きな差をつけなくてもJR線を明示できる方法として、地図記号の「駅(JR線)」(の体裁の線だけ)も、よく使われます。色については決まりがあるわけではなく、第三者としては安易に鉄道事業者のコーポレートカラーをそのまま使うわけにもいきません。在来線を黒、新幹線を何か適当な薄めの色で描くことが多いようです。
昭文社と高橋書店の違いは、印刷の大きさ(細かさ)。昭文社は大判のポスターで「カレンダー」になっています。高橋書店は手帳の見開きのサイズで、折りたたんで手帳に挟める「付録」になっています。
かつて書店で市販されていた昭文社の路線図は、壁に掲示して離れて見ても検索性が下がらないよう、太い線やくっきりした文字を使うなどのデザインになっていました。たくさんの路線を色分けするために薄い色も使われ、路線の色にかかわらず黒で縁取りされます。1つの路線に複数の運行系統があれば区別して明示され、乗り換え不要で直通する電車があるのかパッとわかります。路線はカラフルで見ていて楽しいものですが、直射日光のあたる場所ではあっという間に日焼けして退色してしまいます。だからこそ「カレンダー」として1年ごとに新しいものを買うようにされていたのでしょう。(※現在は大判のものは受注生産になっていて、必ずしも「カレンダー」にはなっていません。)
全国の書店のほか東急ハンズとロフトでも取り扱いのある高橋書店の路線図は、手帳サイズという制約の中で可読性を最大限に確保しています。路線の色分けは地図の塗り分けと同じ考えで、隣り合う路線さえ区別できればじゅうぶん。薄い色は使わず、いくつかの路線が同じ色で描かれます。週末のお出かけを促すかのように「ケーブルカー・ロープウェイ」が特別な色の線で示されているのが目を引きます。デザイン上、JR線と私鉄・地下鉄の違いはあまり意識されません。なお、地下鉄だけを詳しく描く別図があり、大都市近郊の図では地下鉄は省略されます。手帳に挟むという用途から、繰り返しの折り曲げや摩擦に強い特別な紙が使われています。
(説明)交通新聞社やJTBの時刻表には、運転時刻を調べたい路線の掲載ページを見つけるための索引地図があります。あまり探しやすいものではありませんので索引と言い切るのに抵抗があれば、地図の形をした目次だと思ってもよいでしょう。時刻表ではこのほかに、運賃(きっぷ)のルールを説明するページで、説明のために必要な範囲を大きくはっきり描いた路線図が何枚も出てきます。こうした路線図は黒1色で、文字や線などもいたってシンプル。ものによっては、ほぼ同じ図が企画乗車券の券面にも、自動券売機での印字で出てきます。わたしたちが遊びで路線図をこさえるときには複雑さやカラフルさを競いたくなってしまいますが、自動券売機で印字できるほど明瞭なデザインというのも、ある意味では「目からウロコ」でしょう。
地域のJRの支社が内製(社員が手作り)したり地元の適当な印刷業者などに外注したりした図にはすごくだめなものが多いので参考にしてはいけません。例えば、路線網を線で示す(いわば「線」が『主役』である)路線図の中で「引き出し線」を使うのはNGです。駅名の縦組みも適切に使いましょう。(横組みのまま1字ずつ改行しただけでは縦組みではありません。)
学校で地理の教科書と併用される、いわゆる地図帳の最初のものを帝国書院が復刻しています。地図帳の中の主題図の1つとして「全国鉄道路線図」が掲載されていました。地図の中に鉄道の路線だけを描く図として元祖の部類に入ると思われます。交通新聞社やJTBの時刻表の索引地図は、これを踏襲しているのではないでしょうか。
交通広告を扱う業者が描く路線図は、駅に広告を出したい広告主のためのもの。一般の路線図よりも大胆にデフォルメし、カバー率をとらえやすくしています。また、駅間距離が短めで駅の数が多い私鉄の図では、路線がとぐろを巻くように詰め込まれます。この表現で「この地域には駅がいっぱい」「駅は多いがここからここまでは1つのエリア」といった情報を視覚的に表わしています。広告主はこれを見て「反復訴求」や「POP効果」などの戦略を使い分けていくのです。
旧国鉄が駅構内の広告の料金を定めるときに、体系的な「駅等級」を使いました。実際の駅の状況は1つたりとも同じではありませんが、ある程度の幅を持つ「駅等級」にまとめたのです。「駅等級」は、乗降人員や優等列車の停車駅などと必ず一致するわけではありませんが、その路線での運行のありようをおおかた示唆するものになっています。
「駅等級」は絶対評価ではなく相対評価だという言い方もできます。ある鉄道会社やある地域、ある路線の中での相対的なランクを示すものですから、別の会社や地域の「駅等級」と比べることに意味はありません。ほかの路線に比べれば乗降人員が少ない路線にも「特級駅」はあるのです。
ゲームでは、プレーヤーが設置した駅がどんな駅なのかは、プレーヤー自身が決めなければなりません。このとき、駅の種類や優等列車を停めるか停めないかといった個別のことより先に「駅等級」を定めるとよいでしょう。リアルなマップにしていくためには実際の成り立ちをなぞることが大切ですが、なぞる向きは逆向きでもよいのです。現実には路線網や都市の発達の結果として生じている「駅等級」の違いを、プレーヤーのあなたが先に決めてよいのです。
路線図は「乗車経路」すなわち「乗り換え」の案内が目的の図です。このことを「A列車で行こう9」というゲームに即していえば、このゲームならではの表現である「マップ外接続(隣町)」を印象的に(マップの作者の主観で)図示して、実際のマップよりも遠くまで広がる感じを演出するとよいでしょう。私鉄や地下鉄の路線図では、自社線がいかに便利であるかをアピールするため、実際にはかなり遠くの駅を近いと錯覚させるようなデフォルメもなされますが、「A列車で行こう9」のマップを紹介する目的の路線図では、逆に遠いと錯覚させるほうがよいわけです。
黎明期の私鉄には、沿線の名所を鳥瞰図で説明するものがありました。国鉄・JRでは、「名所案内」の看板が設置されている駅もあります。京急大師線は川崎大師(平間寺)、東武大師線は西新井大師(総持寺)の参詣者で大混雑する路線です。路線図の中に空港やフェリー、高速バスのターミナルをピクトグラムで示したものもあります。「乗り換え」ひいては自社線を越えて目的地までの移動を案内するという目的にはおおいに適うものです。ともすればJR東日本や東京メトロそれに東京都交通局の路線図のデッドコピーに突っ走る「路線図の描き方」という凝り固まった一面的な考えにとらわれず、真に目的に合致する図の表現を自分の責任のもとで追求しましょう。
「A列車で行こう9」には「列車リスト」の機能として「グループ色」があります。この機能を紹介する「公式マスターズガイド」では「ラインカラー」(109ページ)とも呼ばれています。なぜかJRではなく「東京の地下鉄」を例に「銀座線はオレンジ」「東西線はスカイブルー」などと唐突に色名を2つだけ挙げたあと、これまたなぜか本文とはまったく関係なく『緑の東西線』『赤い南北線』『青い郊外線』『黄色い北端電鉄線』を図示した「路線図」が掲載されています。冒頭で紹介した「情報デザイン入門」のほかに赤瀬達三「カラー新書 駅をデザインする」(ちくま新書)を読むとよいでしょう。札幌五輪に向けて「国際化」を目指したもので、案内を日本語に頼らない、表示をなるべく諸外国と同じようにするというのが基軸になっていました。札幌の電車や空港はともかく、諸外国とは比べものにならない複雑さの東京の電車をわかりやすくするというのは、諸外国を探してもお手本のない、東京ならではの問題だったわけです。
「色の使い方に正解はない」といった言いかたをする人もいるかもしれませんが、「正しい」「正しくない」ということではなく、大多数の人が戸惑わないような色使いをしようという明確な目標があります。色にはイメージ(連想)がありますので、「海沿いを走るから青」「鶯谷を通るからウグイス山のほうまで行くから緑」といった文脈に自然に沿って「ラインカラー」を決めるようにしなければなりません。自然な連想に反した色使いになっていたら、余計な心的負担をかけてしまいます。単なる好き嫌いではなく、その色を見た公衆がどのように反応するかということ(心理学の見地)に即して使い分けなければなりません。「案内する」とは、言い換えれば「誘導する」ことです。いわば人の行動をコントロールするために色を使うのです。
色相やトーンが中間的な(微妙な)色は避け、イメージがはっきりした色だけを使っていきます。速い・遠くまで行ける・自社線内の基幹的な(骨格を成す)路線には(火のように熱い)赤系の色を、遅い・バイパス的な(補完的な)路線には(水のように冷たい)青系の色を、環状線には(森に包まれるような)緑色を、新線にはティファニーエメラルドグリーンや宮崎ブーゲンビリア空港ワインレッドなどの斬新な色(塗料や樹脂の製品として新しいもの)を使うというのがベストプラクティスでしょう。いわゆるツートンカラー(同系色の濃淡)は使いません。
主要駅(乗換駅)で隣り合う路線同士では、識別性の高い補色の関係などになっている必要もあります。中央・総武線(各駅停車)の「ラインカラー」は、なぜ黄色(カナリアイエロー)なのでしょうか。路線ではなく車両に対して与えられた色(国鉄が新しく使うことにした塗料の色)だったという話とは別に、その後ずっと「ラインカラー」として定着している理由を考えてみると、この路線に黄色を使ってやろうということが先にあった(沿線の何かに由来して黄色に決めた)のではなく、ほかの色から補色をとっていく中で、この路線には黄色を使おうということになったのだろうと想像できるのではないでしょうか。1つの図の中で、路線が区別できるのであれば別々の路線に同じ色を使って問題ありません。路線の数だけ色を用意しようなどと考えてはいけません。色の数は最小限にします。何色あれば塗り分けができるかを考える有名な数学の例題もあります。
近年、色覚多様性に対応するデザインとして、凡例に色名を文字で明記する、似た色の線には地模様(柄)を加えるなどの方法が提案されてきています。色覚多様性の時代の「ラインカラー」とは、決してどんな色覚特性の人がどんな色を使っても我関せずということではないと考えています。
(説明)
自社の路線図を自社のコーポレートカラー1色で描くという方法もあります。カラフルになり過ぎず、だからといって白黒でもないという絵面がほしいときに使える方法です。JR西日本の例があります。これはJR西日本と近鉄線だけで使うことができた磁気式の「Jスルーカード」の説明図に由来するようです。
(説明)
ゲームの中でコーポレートカラーを制定するといった機能はありませんが、HTMLカラー(Webセーフカラー)を使うなどして、コーポレートカラーとして使用するのにふさわしい明快な色彩の色を選んでみましょう。じぶんの好みだけで選ぶのでなく、その色にはどのような印象が持たれるのかを客観的にとらえ、その色を使う理由を言葉で説明しましょう。コーポレートカラーや製品のカラーでは、色そのものは一般的な色であっても、会社や商品のイメージを高めるために独創的な色名を考案してアピールすることがあります。そのような色名も考えてみましょう。サッカー日本代表の「サムライブルー」は有名ですが、スリーアップKOTO21の「江東区ブルー」はもっと知られてよいと思います。
色をCMYKで扱えるグラフィックソフトや、Googleのカラーコード変換ツールなどを利用して、印刷物で表現できる範囲の色を使うようにすると、コンピューターの画面上でも目に優しい色となります。なお、複数の色を組み合わせたデザイン(アートワーク)は、専門的な教育を受けないとできない高度な作業です。ささやかな遊びでささやかに色を使うときは、1色だけにしましょう。その色の濃さ(明度と彩度)にあわせて、白または黒の背景色や文字色を使いましょう。
もう少し変化をつけたいときは、別の色(色相が異なる色)を増やすのではなく、選んだ色(と同じ色相と彩度)の明るさ(明度)だけを変えた色を使ってみましょう。グラフィックソフトでは256階調などの階調表現が扱えますが、これは写真を使ったデザインやフォトリアリスティックな(写真のような)グラフィックを作成するための機能です。文字や図形をメインにするデザインでは、むやみに細かい階調を使ったりグラデーションを使ったりするのは避けます。グレー(灰色)を使いたいときは、20%や70%など(白または黒に近づけた)濃度にしましょう。グレーという色を言葉尻だけで「白と黒の中間」ととらえ、濃度が50%のグレーを「色の1つ」として使ってしまう人がいますが、これは適切ではありません。有彩色と無彩色は別々の考え方で使っていくものです。
中学校の美術を侮るなかれ
グラフィックデザイン(ポスター)は中学校の美術で習います。使うのは色鉛筆や水彩絵の具ではなくポスターカラーやアクリル絵の具です。適切な画材を使いましょう。奇をてらって色鉛筆や水彩絵の具でグラフィックデザインをするのは非常識です。小学生の人が手持ちの画材だけで描こうとしてしまうのを周囲の大人が防いでください。
日本の公教育はよくできており、中学校の美術も侮れません。筆者が受けた美術の教育は中学校どまりですが(高校では書道を選択しました)、基本的なことを本当に過不足なく教えてくれていたのだと、後になるほど思います。学校に通えない人も、学校のカリキュラムを無視しないで、教科書の内容はぜんぶ完ぺきに学びきりましょう。これは美術も例外ではありません。授業を受けなくても絵を描くのは得意だなどと思い上がってはなりません。
中学校の美術の授業は、いわゆる絵を描くという実技の練習の場ではないのです。美術の教科書は薄っぺらいですが、決して油断してはいけません。その薄っぺらい教科書の内容すら定着していないのかという疑念を持たれるような表現を、大の大人がのうのうと行なってはいけません。これは書体の選び方についても同じ。美術の教科書は色彩と書体の選び方の常識を体現しています。動画の字幕に教科書体を使えと指定してくる非常識なクライアントは滅びればいいと思います!
プレーヤーが思い思いに描いてインターネットにアップした「路線図」には、本当にいろいろなものがあって、1つ1つがかけがえのないものです。ただ、技術的な拙さがある場合には、それを指摘せざるを得ません。少なくとも「A列車で行こう9」というゲームをプレーするほどにも技術とともに生きるわたしたちには、技術や技術に対する期待や信頼の水準を保とうとする責務があります。「どうせゲームだからこのくらいでいいや」「みんな素人だから難しいことはわからなくて当然」「そんな細かいことは誰も気にしないよ」といった風潮が蔓延しないように努めるべきです。
なお、ゲーム「A列車で行こう9」はWindowsで動くソフトですからWindowsを念頭にしますが、デザインをする人にとってWindowsは決して主流でないことは承知しておく必要があります。Windowsや、Windowsで動くフリーソフトだけを使っていろいろなことができますが、「有償の業界標準のソフト」(※「Adobe Illustrator」)の操作性にはかないません。自宅や学校(ただし美術系でない)のPCに入っているソフトだけで何とかしようとするばかりでなく、本職のプロとなるべく同じ道具を揃えよう、あるいはわけあって道具は簡易的なものだけれど使い方は徹底してプロを真似ようという考えも大切です。
表計算ソフトである「Excel(エクセル)」を使って描き、最終的に「プリントスクリーン」(スクリーンショット)して「ペイント」に貼り付け、画像ファイルにして保存するという流れでは、「Excel」でセルの塗りつぶし(背景色)に頼って路線を描こうとするひとがいます。「Excel」を使う場合でも、線は「線」のツールを使って引きましょう。水平と垂直だけでなく任意の角度の線が自由に引けますし、線の太さや点線(破線)などのスタイルを変えるのも容易です。(「パワーポイント」を使う場合は、最初からそうするでしょう。)
※文句なしにプロの道具である「Adobe Illustrator」という製品名をカタカナで「イラストレーター」と表記したり「イラレ」と勝手に略すことはなるべく避けましょう。「Adobe Illustrator」のスペルも覚えられずに「Adobe Illustrator」を使う資格があるでしょうか。一方、「エクセル」や「パワーポイント」をカタカナで書いて紹介することは、これらが一般向けで、小学生にも使わせるソフトウェアであることから、やむを得ないといえます。
あくまでお遊びとしてはフリーソフトでじゅうぶんですから「レイヤー機能」が使えるグラフィックソフトを使いこなしてほしいものです。「レイヤー機能」をうまく使おうとしていけば、1枚の図が完成するまでのいろいろな工程を明示的に分けて考える考え方が身に付き、図の描き方(作り方)が非常に洗練されていくでしょう。少なくとも「プリクラ」を「デコ」するかのように、キャプチャしたゲーム画面そのままの画像に「ペン」のツールで(フリーハンドで)何かを描き加えるといったことは避けるようにしましょう。
なお、「路線図作成ソフト」を名乗る製品もありますが、これは会社やお店が案内図を手早く作るためのもの。本物の路線図をお手本にしながら、案内に必要な部分だけを抜粋し、本物の路線図のデザインに関する権利を侵害しないよう、適当にオリジナルとは異なるデザインにすることが目的のツールです。わたしたちがゲーム「A列車で行こう」シリーズで遊びながら、路線図の完成形がまったく見えていない状態から試行錯誤的に使うには不向きです。わたしたちは自分の力でゼロからデザインに取り組む必要があります。わたしたちが「路線図」を描くとき、それは仕事ではありません。好きなだけ時間をかけて、いくらでも試行錯誤をして、その過程そのものを楽しみましょう。「A列車で行こう9」で「路線図」が「うまく描けない」。それは格好のトークのテーマになります。「うまく描けない」から人には見せられない(人に見せるものを締切までに用意できない!)などと焦るのでなく、「うまく描けない」という話そのもので盛り上がりましょう!
※ゲーム「A列車で行こう」シリーズからは離れる話ですが、一般に、あなたが実在の路線の「路線図」を描くときは、あなた自身の目的(※道案内や通勤経路の届出)に照らして必要な範囲を抜粋・要約した図を描く必要があります。鉄道会社が掲出する路線図そのもののような図(しかも勝手な体裁で色もきれいではない)を描くことは控えましょう。ツールの使用例(作例)を示す目的では、架空の内容にしたほうがベターです。SNS上では、鉄道会社の公式サイトから取ってきたと見受けられる路線図の画像にメモやコメントなど勝手な書き込みをしたものや、勝手に一部分を削除したり色を変えたりしたものが公然とアップロードされていますが、これはNGです。商標や同一性保持権の問題だけでなく、情報検索の時代には「検索ノイズ」となってしまい、本来の路線図を探したいユーザーのじゃまをしてしまいます。
(このページの初版公開:2021年4月1日)