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ゲームの上にも10年:エバーグリーンなヒントとテクニック。(最終更新:2024年4月26日)


いろいろな車庫(車両基地)

A列車で行こう9」では、2012年12月発売のA9V2「車庫」という名前新しい種類の駅(ダイヤ設定ができるオブジェクト)が登場し、従来の「操車場」と組み合わせることで、より豊かな情景描くことができるようになった。2015年6月発売のA9V4では「速度制限標識」も使えるようになり、広大な車両基地の中をゆっくり移動させる複雑な入換が楽しめるようになっている。リアルな配線の車両基地や駅をつくるためには、車両基地や駅構内の配線を形だけ真似るのでなく、どのような構成要素からなり、そのそれぞれがどのような意味を持つのかを、詳しく理解する必要がある。最終的には、に見せかけだけ車両基地や駅をそれらしくつくるのでなく、ゲームの中で実際に意味のあるかたちで使ってみせ、ゲーム内でのリアリティを持たせたいものである。

「車庫」と「車両基地」の違い

ゲーム「A列車で行こう」で「車両基地」をつくろうとして、実物をそっくり真似れば手っ取り早いといって「車両基地 一覧」といった検索をする人が多いようです。もちろんそれが手っ取り早いのですが、一方で「車両基地とは」ということを公的な資料(※所轄官庁や鉄道会社の人が書いたもの)で確かめることをおろそかにしていては、実物を見ても意味がわかるまでには至らず、皮相的になぞるだけになってしまって、自分でも納得がいかないものしかできないということになりがちです。このとき、鉄道会社によって「車庫」という呼びかたと「車両基地」という呼びかた、さらには「車両センター」といった呼びかたまで、いろいろあることに気づいて、戸惑いがあるかもしれません。小学校や中学校で使われる教科書では、使う用語が厳密に定義され、1つのものには1つの呼びかたしか使わないように統制されています。小学生や中学生の人は、教科書のような厳密さを社会のすべてに向けるきらいがあります。しかし、「車庫」「車両基地」「車両センター」などのさまざまな呼びかたは、どれか1つだけが“正解”で、それ以外は“誤り”(『正式名称』以外は『通称にすぎない』)というものではありません。呼びかたが会社によってさまざまであるということは、単に呼びかたという話で終わらず、日本の鉄道の歴史や、おおげさにいえば「私鉄」の存在意義を体現するものでもあります。

※こうしたことを、わたしは「図説 鉄道工学」で学びましたが、この図書の現在の入手性(※よくないです)や、高校生くらいのかたが1人で読めるか(※無理です:大学生がゼミで分担して読むものです)といったことを考えて、ここでは(一社)日本民営鉄道協会の「鉄道用語辞典」だけを使っての説明を試みます。

(一社)日本民営鉄道協会の「鉄道用語辞典」は見出し語として「車両基地」と「車両工場」を採用しています。現在の一般的な呼びかたは「車両基地」で、これは「車両工場」と対比させた呼びかたでもあるということを端的に示しているように思います。

自動車の車庫法に相当する意味で、鉄道車両を収容するための場所を確保することは、鉄道事業の根幹です。「車庫」という呼びかたは、戦前に最初から電車として開業した私鉄に多く残っているかと思います。もともと路面電車を想定した軌道法では、当然ながら道路上に電車を置いたままにできないので自動車と同じように「車庫」を、道路ではない私有地に確保するよう定めたわけです。「車庫」と呼ぶのは非常にわかりやすいので、JRでも「車庫に入る回送電車です」などとアナウンスされています。「車庫」という呼びかたは“誤り”(「間違い」「正式な呼びかたではない」)というわけではないことを理解しましょう。どのような呼びかたでも、その鉄道会社が自社の施設を呼ぶ呼びかたが、その会社では「正式名称」なのです。また、会社の中での業務上の呼びかたや建物名・部署名を、乗客へのアナウンスでそのまま使うわけにいかないのも当然です。後者は案内上の「便宜的な呼びかた」といえます。「便宜的な呼びかた」という見かたや考えかたを知らない(「正しい呼びかた」と「それ以外」という両極でしか考えない)小学生や中学生の人には、「正式名称」以外の呼びかたで呼ぶことを「見下した言いかた」「俗な言いかた」なのだと強く思いこむ傾向があるように思いますので、大人がよく注意しなければならないと思います

車庫 軌道法に由来する呼称
車両基地 英語の「yard」の対訳か
検修庫(クレーンなし) 日常の点検と軽微な修理
車両工場(クレーンあり) 車両の製造なしでも工場

では、なぜわざわざ「車両基地」と呼ぶのでしょうか。字面や言葉尻だけではわかりにくいですが、「車両工場」との包含関係や、施設内の建屋や業務のありようを見ていくと、納得できてくるのではないでしょうか。日本でも、明治時代には英語の「yard(ヤード)」という呼びかたがそのまま使われていたかもしれません。現在の辞書で「ヤード」を引くと「操車場」ということにされていますが、「操車場」と呼んでしまうと貨車や客車を組成する業務を行なう施設だけを指してしまいます。英語の「ヤード」は「庭」や「家畜を入れる囲い(地)」という意味で、とにかく何かを置いておいたり、ちょっとしたことはそこでするといったニュアンスと、そのような場所が家の前にあって便利だ(すぐに使える)というニュアンスを持っています。このような「ヤード」という広い言葉と「操車場」という狭い言葉とは1対1では対応しないので「車両基地」という呼びかたが出てきたのではないでしょうか。「車両基地」という字面のいかめしさに反して、実は「庭」や「家畜を入れる囲い(地)」という「場所」のことだけを指す言葉と理解すればよいのではないでしょうか。もしも明治時代の初めに戻って訳語を作り直せるなら『鉄道庭』や『整車場』といった言葉にできたかもしれません。

「車庫」と呼ばれていても、すべての鉄道車両が毎晩、屋根のあるところで眠るわけではありません。屋根はともかく、自動車のように、特定のナンバーの車が必ず同じ区画に駐車するというものでもありません。なお、「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」を引き合いに出すのであれば、条項の構成(目次)に着目を。この省令の目次を上から順に追えば「線路」と「停車場」を対置したのち、「停車場」と「車庫等」を対置し、その中で「車庫」と「車両検査修繕施設」の別を述べるという構成になっています。「総則」の中の「定義」は、この省令の中での呼びかたはこれ1つにします(いろいろな呼びかたがあるけれど、この省令では「車庫」と呼びます)という意味合いしかありません。「車庫等」の条文にも「車庫とは」という定義はありません。省令で「車庫とは」を定めて事業者に守らせるという形式ではなく、事業者が現に有している施設(や行なっている業務)を「だいたいそんな感じでいいからうまくやってね!」とする『性能規定』になっているのです。具体的な方法は定めず、ましてや呼びかたはまったく定めていないのです。

一方、「車両基地」とも呼ばれる「車庫」には、屋根のついた「検修庫」が建っている場合があります。この建屋は名前の通り、鉄道車両の点検や整備(軽微な修理)を行なう建屋です。「検修庫」のような外観の建屋を指して「車庫」と呼んでいる「A列車で行こう9」のようなゲームソフトもあります。ただ、これは正しい呼びかたではないでしょう。鉄道における「車庫」という呼びかたは施設全体を指す抽象的なもので、屋根のついた建屋1棟を指すものではないことを理解しましょう。

比較的小さな「検修庫」よりも大がかりな点検(オーバーホール)や修理を行なう施設が「車両工場」です。非常に大きな建屋の中に、鉄道車両を吊り上げるクレーンを備えています。これまた「A列車で行こう9」ではクレーンを省略して背の低い建屋にして「車庫」と呼んでしまっているのが、なんともいえないところです。(※クレーンのない「検修庫」ではジャッキアップまたはピット線が使われます。)

ここでもう1つややこしいのは、「車両工場」と呼ばれていても、鉄道車両を材料から組み立てて生産しているわけではない施設もあることです。車両の製造をするわけではないのに「車両工場」と呼ぶのは、どうしてでしょうか。「A列車で行こう9」の「車両工場」は、呼びかただけは正しいものの、これほどにもゲーム内で使い物にならないオブジェクトはないでしょう。

※車両を製造しないのに「車両工場」と呼ぶことには、作業の内容が車両の製造にも匹敵するということや、このために車両を製造したメーカー(本来の意味での「工場」)から専門の技術者が派遣されてきている(「工場」から来た人たちがいる場所が「工場」と呼ばれる)といったことがあったはずですが、時代を経るうちによくわからなくなってきて呼びかただけが残っているといったところでしょう。自動車の外装の修理だけをする工場こうば鈑金工場)もあります。また、旧国鉄のように、実際にそこで車両を製造していた「車両工場」もあります。

高速で長距離を走破する特急用の車両は、通勤用の車両よりも念入りな点検が高い頻度で必要になります。ゲームの中でも、特急列車をカギのかかるロッカー「検修庫」に入れてみせると趣深いでしょう。貴重な動態保存の蒸気機関車(SL)に至っては、これはもう原則として屋根のあるところに収容しないといけません。展望車やダブルデッカーなど特殊な構造の車両も、その整備ができるのは特定の「車両工場」に限られるといったストーリーを考え、そのように運行してみましょう。(変わり種の車両ばかりが集まる「車両基地」をつくりましょう。)


駅の種類についてはこちら


車両基地の構成要素

「車両基地」(「車庫」とも呼ぶ)の配線は複雑だ。車両基地を車両基地として成り立たせる各種機能(「構成要素」)に分けてとらえよう。実際の車両基地は、限られた敷地の形状を無駄なく使うべく、線路や施設がぎっしり詰め込まれている。1つとして同じ配線の車両基地はないだろう。特定の車両基地を正確に再現しようとするのでなく、あなた自身のマップの中で土地をうまく使って車両基地を仕上げよう。

あなたがすでに位相幾何学やグラフ理論の基本的な考え方を習っていれば、車両基地の各機能をノードとし、それらの間をつなぐ線路をエッジとするグラフで考えたり、車両基地の出入り口から終端の車止めまでを木構造で表現したりしてみよう。

説明

絵でひく英和大図鑑「ワーズ・ワード」の思い出

1993年12月25日に初版が発行されてサンタさんが届けてくれた「ワーズ・ワード」は、子どもにとっては非常に大きくて重たい本でした。この中に鉄道のページもあり、いかにも外国という感じのする大屋根のある終着駅の内部や、広大なヤード(操車場)を子細に描いたページもありました。そもそも「ヤード(操車場)」のように併記しようという感覚も、この本を通して培われたものだと、いまとなっては思うところです。また、あくまで子どもにとっては、本書の判型が大きいことで、見開きでどーんと描かれたヤード(操車場)のイラストは、本当に「広大だ」と感じさせるものでした。イラストに描かれた複雑な配線は、いつまでも指でなぞっていたいと思わせるものでした。どんな情報も小さな端末の画面に表示するというのでなく、大きなものは大きな判型で見たい。そんな、「大きさ」という感覚についてのいわばダイナミックレンジが狭まってしまうことは避けたいものです。

このページでいう「構成要素に分けてとらえよう」というのも、この本のような図鑑や百科事典の考えです。小さなものから大きなものまで(○ンマー×痕が…)構成要素は階層構造になっています。このページのタイトルを「車両基地」にするか「車庫」にするかで、かなり迷いました。「車庫」としか呼ばないのではバスや自宅のガレージというイメージから離れにくいですが、「車両基地」という呼びかたをすれば、いろいろな機能を持つ部品が集まってできている大きなものという感覚が自然に出てくるでしょう。ものをどう呼ぶかということが、そのひとの認識や理解のようすを如実に表わします。だからといって、鉄道の車両基地や電留線などを「車庫」と呼ぶのがいけないということではなく、申し分なくわかりやすい言葉ではあるので駅や車内でのアナウンスで(あーラーメンに梅干しがー)「この電車は車庫に入る回送電車です」「引き続きのご乗車はできませんのでご注意ください」としゃべるわけです。


駅構内の配線の種類

駅の種類と車庫()について考え始めたあなたは、すでにかなりの『鉄道用語』(法令から信号通信まで)を知っていることと思う。だからこそ、さらに詳しく正確に理解していくことが重要な局面に入ってくる。駅構内の配線の種類についていえば、「2面4線」などの言葉でとらえるだけでは不十分だ。以下の表では5種類の「2面4線」を紹介している。ゲーム「A列車で行こうシリーズ」を楽しむほどの鉄道ファンでありながら、「番線」の数字を「数」として数えて(数字が大きいほうが強いといわんばかりの態度で)「14番線まである大きな駅」を自慢するようでは情けない。「大きな駅」は、運行上の必要に基づいて、いくつかのまとまりに分かれている。例えばJR新宿駅では、山手線と中央快速線は運行が独立しているが、山手線と中央緩行線(総武線)はひとまとまりになっている。ダイヤ設定を見据えて駅構内の配線を決めていこう。なお、以下の表で『センタリング』して示しているように、駅構内の配線を考えるときの基準は(端っこの)「1番線」ではなく「(複線の線路間の)中心」である。複線の本線を走ってきて駅に入るには上下線の線路が左右に広がるという寸法である。運行上、その駅に必要な施設を造る分だけ、上り線と下り線が離れて間に空間をとればよいのである。いわゆる側線は、さらに外側に造る。ゲームソフトのUIの操作性や、ゲーム内の「駅」というオブジェクトの種類の分け方やメニューの構成(「駅」に関する機能や仕様)が、いまいち現実の理屈には沿ってくれていないところがあるが、それでも現実の理屈をなるべくまえてプレーしていこう。

説明

ここでは旅客ホームを重視した説明になったが、旧国鉄や、旧国鉄と貨物の授受があった古い私鉄の駅では、旅客のための施設と貨物のための施設が混ざった、より複合的な形態になっているものがある。私鉄での貨物輸送はほとんどなくなったが、JRとつながる線路は現在も、新型車両の搬入や、観光列車などの直通運転に活かされている。現在は駅全体がJRになっている駅でも、過去に私鉄だった部分の施設との間には、まどろっこしい施設痕跡が残っている場合がある。

側線の情景として貨車などを留置すると趣深いが、「A列車で行こう9」に収録されている無蓋貨車「トラ」(もどき)は、歴史的にはかなり早く淘汰されたもの。バラストホッパー「ホキ」と「DE10形」の収録を待ちたい。保線用機械もアイテムとして線路上に配置できるとよい。(※現行バージョンにはありません。)これに限らず「A列車で行こう9」の貨車などの表現は1960年代で止まっている感じ(※SLブームのときにブームだから写真を撮ったというだけで終わっている不勉強な大人の無責任なノスタルジーという感じ)がある。カラフルなコンテナとタンク車を見慣れた現代っ子に響くものにはなっていないだろう。なお、バラストホッパーには貨車として車籍のある「ホキ」のほかに、保線用機械でけん引して使われる通称「ミニホキ」もあるとのこと

駅構内の配線を考えるときに、いわゆる駅構内図との混同がないよう注意したい。駅構内の配線は運行管理列車制御)のために考えるもので、自管轄の線路だけ、つながっている線路だけを考える。お客さまをご案内するための駅構内図で在来線新幹線を1つの図に描いたり、実際の駅でのりばの番号が続き番にされるのとは別物と思ってほしい。よその管轄である線路、つながっていない線路をごちゃまぜに考えてはいけない。(他者の管轄を侵すことを「越権行為」という。)

「A列車で行こう9」のゲームシステムでは、駅構内の配線を工夫することがゲーム上のアドバンテージに直結するわけではないが、過不足のない施設を造ることは土地利用効率を向上させる。「A列車で行こうシリーズ」をプレーしていると、ついつい現実離れした巨大な鉄道施設を造ってしまいがちだが、鉄道は都市あってこそのもの。より多くの土地を、鉄道施設ではなく都市のために使えるようにしたい。


車両基地の立地とダイヤ

車両基地の立地とダイヤは密接に関係している。広大な車両基地を建設できる用地は都心にはない。車両洗浄に使う水利権も取得できるとよい。また、路線に投入される車両のすべてが車両基地に収容されるわけではない。都心部にも電留線(電車留置線)を設け、遠くの車両基地からの回送なしで早い時間から初電を走らせたり、終電を遅くしたりできる。車両基地の立地とダイヤの関係が比較的わかりやすい例として、ここでは東京の「東武東上線」と「地下鉄東西線」を挙げておく。

下板橋と成増と志木と川越市と森林公園

三鷹と中野と東陽町と妙典と八千代緑が丘

若葉台と桜上水と笹塚と大島印旛


変電所とダイヤ

ここまでに「駅」と「車両基地」を見てきたが、このほかに重要な鉄道施設として「変電所」がある。あまりにも重要度の高い施設であるので、具体的にどこにどんな施設があるといったことについては一切の言及を避ける。具体的なことには言及しないで、そもそも変電所とはどういうものかということに限って、この限りにおいては可能な限り詳しく詳説したい。地図から送電線が消されたことがありました

そもそも交流と直流とは

「A列車で行こう9」では

いろいろな変電所

鉄道施設としての沿線の変電所

遊び方


鉄道の信号については、フォーラムの「信号24」「信号EX」「公式マスターズガイドの説明通りに動作する信号機を」「実際に動作する中継信号機かく実装せり」などをお読みください。


参考にした動画

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MEMO

幕張-千葉間の総武快速線は「回送線」と呼びたいくらい、房総方面の普通列車(トイレつき)の回送ばかりが走っている。なまじトイレがついているばかりに、千葉駅での折り返し運用ができず幕張に入区する必要が出てくるのだ。車両にトイレがついているものは、動力としては「電車」でも、ダイヤ上は「列車」である。横須賀線・総武快速線では、大船と津田沼での入出区を効率化することで「電車」並みの運行を実現している。総武快速線が国電という性格を帯びているのは津田沼まで。津田沼-千葉間の総武快速線は、津田沼までの複々線化とは9年のタイムラグがある別の事業である。1973年にはオイルショックが起きた。単に9年の間隔があるということでなく、オイルショック『以前』の事業と『以後』の事業だという違いがある。津田沼-千葉間では、むしろ総武線各駅停車という国電が列車線から分離されたという感覚のほうが強い。複々線の区間を線路の数だけ見てああだこうだと言うことのないようにしたい。この区間では、山陽新幹線の建設時から本格採用となったスラブ軌道が使われている。9年も遅れただけのことはあった。


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