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小一時間で初心者卒業。大人のA列車。ゲームならではのデフォルメを楽しむ。(最終更新:2024年11月9日)


マップコンストラクションとは

いきなり豆知識】「マップコンストラクション」は、「マリオ」でいえば「マリオメーカー」にあたるもの。「A列車」に限らずパソコンゲーム全般のプログラムやセーブデータの不正な改造ツールを作成して勝手に販売する者が横行したことを受け、これを封じ込めるためにパソコンゲームのメーカーが自前でその種のツールを提供する動きがあり、「A列車」でも「地形編集」や『資金無限』のツールが別売りで提供されたのでした。(それ以前に不正コピーの問題があり、メーカーごとにいろいろな対策法がありました。ゲームソフトの不正コピーはだめという認識が客に広まったころに、改造ツールや攻略済みセーブデータの販売という問題が出てきたのだったと思います。ゲームソフトの不正コピーじゃないからといって買ってしまう客がいたのです。似たようなことは最近もあります。)「マップコンストラクション」という呼び方をするのは本作だけ。「A列車で行こう7」までは別売りで、「A列車で行こうHX」および「A列車で行こう8」から「標準搭載」になっています。もともとの「マップコンストラクション」は、ゲーム内でプレーヤーに編集を許可していない「地形データ」を特別に編集させる機能で、「地形データ」を思い通りにつくる(construct〔動詞〕:構築する)ことができることを「コンストラクション(construction〔名詞〕:構築)」と呼んでいたように思います。その後、「A列車で行こう9 Version 2.0」(A9V2)からは「ゲームモードでの地形編集」が可能になり、「マップコンストラクション」には「資金を考えず好きなだけ試行錯誤できる」という「サンドボックス(砂場)」の側面が強調されるようになっていきました。ゲーム画面のメニューでは「ゲームモードでの地形編集」が「Geo」、「子会社の建設」が「Construction」、「マップコンストラクションでの地形編集」が「Edit」と表記され、混乱に拍車をかけています。マップを指して「ゲーム」「ニューゲーム」と呼ぶのも混乱のもとです。これまでの経緯をぜんぶ知っていてプログラミング上の一般的な慣行にも明るければニュアンスがわかるので困りませんが、そうではないと、まったくちんぷんかんぷんなメニューでしょう。このゲームのメーカーは昔からプログラム以外の仕事はまったくさっぱりということが語り継がれています。標高(高さ)を意味する「height」をカタカナで「ヘイト」と表記していました。そもそも「ハイトバー」「簡易ハイトバー」なる用語は意味不明です。A9V2で「1:1モード」が実装されても「ハイトカット」(任意の高さで水平の断面を見せる機能)は「20m単位」のままにされました。なお、マップコンストラクションの最大の機能は「地形の自動生成」「建造物初期化」で、ふつうは「Terrain Editor」「Terrain Generator」「Map Creator」などと呼ぶところだとは思いました。逆に、英語から直訳したような「創作ゲーム」という表記も見られますが、このゲームの中で何をしてもすべて創作であり、「創作」ではないゲーム(マップ)があるなら見せてほしいもの。かな漢字変換の辞書にユーザーがセルフサービスで変換候補を登録したデータを「ユーザ辞書」といいます。ユーザーが作成したマップ(「Created by User」なマップ)には「このマップの解説」を表示できないので「ゲーム」とは呼ばず「ユーザーマップ」とでも呼べばよかったのではないでしょうか。

マップコンストラクションでは、どこにどのように線路を引くのかを決めるのはあなたです。だからといって、いきなり「いわゆる路線図」を描きながら路線をつくってはいけません。

ゲームならではのデフォルメを楽しむ

「A列車で行こう9」では、「隣町」を使うとうまくいくからそれを使う、「列車タイプ」を使い分けると巨額の黒字を目指せるからそれを使う、「連結」を使うとかっこいいからそれを使う、といったゲーム上のモチベーション(ゲームの中でやってみたいと思うこと)がいろいろあります。これを盛り込んで路線網をつくっていくと、現実の鉄道より複雑で、妙に都合のいい路線網ができてしまいがちです。現実にはめったにないような『特急銀座』になるかもしれません。

何をどのくらい、現実より大げさに表現するのか、どこは現実のようにつまらなくしておくのか、というデフォルメは、あなた自身が判断して決めなければいけません。マップによって、取るべき方針が違うのは当然ですが、1つのマップの中では、一貫した方針を定めて、しっかり守るようにしましょう。

※何を隠そう、そのようにしてマップが1つたりとも完成したことがないのは、わたしである。

だからといって、新しく試すこと(不慣れなこと)をいきなり新しいマップで取り組むのは失敗のもと。履きなれた靴でいろいろなことを試すためのマップと決めたマップを1つ用意しておいて、試すのはそこで、というのがおすすめです。試してみたいことが1つ出てくるたびに毎回、テンプレート「平地」で試しているのでは、ほかのこと(じぶんがすでに習得したテクニックなど)との関連が見えず、視野が狭くなりがちです。試合形式で(それまでに習得して表現した)だいたいできているマップの中で試してこそ(事前に試すということの)意味があるのです。

※テンプレート「平地」にすべて手作業でマウスで手作りした地形データより、地形の自動生成だけでつくった地形データのほうが読み込みや表示が速いということはないだろうか。もしそうなっていないなら、そうしてもらいたいものだ。

A列車で行こう9のマップの広さは?

「A列車で行こう9」のマップは東西10km・南北10kmのサイズで、5kmより先はフォグ(霧)で見えないという映像表現により「広さ」が演出されています。数字だけ見て狭い狭いと言う前に数学で習った平方根を思い出して対角線の長さを求め、マップの広さを実感してみましょう。なんと、発売当初には「マップが広すぎる」という文句を言う人もいたくらい。ただし、マップの広さに対して、設置可能なオブジェクト数(建物や樹木などの総数)は少なめ。遠景となる山の樹木は省略するなど工夫が必要でしょう。PS4版「A列車で行こうExp.」も、マップの広さはPC版と同じ「10km四方」で遜色ありませんGoogleサジェストでは「A列車で行こう9とEXPの違いは何ですか?」または「A列車で行こうEXPと9の違いは何ですか?」という表示が出てしまっていますが、「A列車で行こう9」と「A列車で行こうExp.」に違いはなく、この2つは同じゲームと思って大丈夫です。機械的に生成されるGoogleサジェストには、問いの立て方じたいがおかしいものが平気で表示されるものだと知っておいてください。Googleサジェストに表示されたからといって「違い」を説明しようとするのでなく「安心してください違いはありません」という説明をしてください。

言いようで、使いようと言います千葉市の地図は回転して描かれることが多いので、こんなことを考えました。アートディンクは千葉市内に本社を置いていた時があります*

※実際の方角に関わらず、山を上海を下にして、山と海に挟まれた平地(市街地)をやや横長に描く地図は各地にあります。阿賀野市はどんな向きを向いているのでしょうか。これは、山と海に挟まれた細長い平地では大きな道路旧街道)がそのような向きにしか通りようがなく、その道路沿いの看板がそういう向きになるからという事情が大きいと思います。

欲を言えば地形の自動生成で1024×1024ではなく2048×2048の地形データ(ハイトマップ)を生成し、その中心部の1024×1024をプレイアブルな領域(ゲームのマップとしてプレーヤーが遊べる範囲)とし、外周部を遠景(プレーヤーが操作できない範囲)として地形だけ描画する「A列車で行こう6」(A6)の方式に回帰すれば言うことなしですね。マップコンストラクションモードで「地形仮生成」を実行すると一瞬で地形が表示できる通り、「A列車で行こう9」の地形の生成と描画は非常に軽快な処理になっているので、すぐにも実現できるでしょう。隣町につながる線路は適当にフェード(オブジェクトの透明度)でぼかせばよいでしょう。


路線網は地形に対して“従”


「築堤」「掘割」と「トンネルの坑口」のために必要最小限の地形編集をするのはしかたありませんが、地形編集を加えてしまうと、もとの地形(「地形の自動生成」で生成された地形)には戻せなくなります。平地につくった「築堤」「掘割」はなくすこともできますが、「トンネルの坑口」をつくるために山の地形を編集するのは、絶対にそこトンネルをつくると決めてから(それが最も合理的だと判断してから)にしましょう。

実際の施設をよく知る

「A列車で行こう9 時刻表」という検索でこのサイトを訪れたあと、さらに不服そうに「A列車で行こう9 時刻表データ」という検索で、やはりこのサイトを訪れたひとがいました。実際の鉄道の時刻表をネットから取ってきてゲーム内に貼り付ければリアルになるとでも考えたのでしょうか。とんでもない話です。…と思ったら、「OuDia」のページに「OuDia は、鉄道の時刻表データをもとに、ダイヤグラム(列車運行図表)を描画するソフトウエアです。」と書かれていました。わけもわからずに「OuDia」をインストールしたけれど途方に暮れたひとがネットで探してまわる「時刻表データ」とはなんでしょうか。そんなものはありません。(あってはいけません。)「A列車で行こう9」では、あなた自身がじぶんのマップに引いた路線網のダイヤ(運行計画)をゼロからつくるのです。糸井さんのサイトで「スジ屋」を読んでから、「おきらく娯楽工房」さんのサイトで、例えば埼京線の施設ダイヤを勉強するとよいでしょう。

このサイトの「ダイヤグラム総合」も読んでください。

いろいろなものを参考にしよう


目次

  1. マップコンストラクションでの「自動発展」
    これぞ『RT』リアルタイム・シミュレーションサンドボックスとは。いきなり路線図を描いてはいけません。いきなり私鉄をつくってはいけません。地形データとじっくり対峙しよう。

  2. マップコンストラクションとは
    「創作ゲーム」として配布するつもりで、ゲームモードを意識してつくろう。「デフォルメ」「ゲームの仕様」「地形」について解説。

  3. ランドマークとは
    「ランドマーク」と「シンボル」の違い。ケヴィン・リンチの「都市のイメージ」。

  4. 上を北に固定「サテライト」
    ゲームの中で道に迷っていませんか? マップの平面図を正しく使うための基本的な考え方を紹介。

  5. シナリオマップでの線路の直し方
    運輸政策研究所ほかの資料に基づき「路線網」「施設」「旅客と貨物」について解説。路線網構築上の制約条件を「地形」「都市」「鉄道」に即して考えます。

  6. リアルに見せるコツ『架空のJR線』
    国鉄・JRと私鉄の違いを路線網のトポロジーに着目して徹底理解。マップの骨格となる「架空のJR線」の作り方から愛知環状鉄道まで。

  7. 複数の『架空の私鉄』をリアルに作り分ける
    走らせる車両をとっかえひっかえするだけで満足していませんか。私鉄の情景を論理的につくる方法を紹介&高度経済成長期の地下鉄建設と複々線化を概観。

  8. 公団『架空の国鉄新線』で奥深さを
    「新線とは」「鉄建公団」「電算化」「光ファイバー網」などを解説。路線の建設の経緯や事業主体の違いをゲームの中でも表現してみましょう。

  9. リアルに見せるカギ「実在の車両」の使い方
    地形や路線網は「架空」にしても、ゲームに登場する車両は実在のもの。どんな情景が描けるのか、最新の「車両キット」「車両キット2nd」を含めて展望します。

(このページの初版公開:2020年10月6日、「連絡設備費」の初出:2019年3月1日、『架空のJR線』の初出:2019年10月18日)


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