[ マップの作り方 > マップコンストラクション > リアルに見せるコツ『架空のJR線』 ]
小一時間で初心者卒業。大人のA列車。ゲームならではのデフォルメを楽しむ。(最終更新:2024年10月10日)
マップコンストラクションで資金を気にせず自由に線路を敷けるなら、思ったようなマップが簡単に作れるでしょうか。そういうわけでもないということが、マップコンストラクションを少しやってみるだけで痛感されるでしょう。ここでは、マップの中に引く路線の“性格の違い”(法的根拠や位置づけ、スキームの違い)を『架空のJR線』『架空の私鉄』『架空の国鉄新線』の3つに分けてとらえます。
国鉄は、その名の通り鉄道の全国網を建設・維持することが目的でした。民間資本によって建設された路線の国有化も行なわれました。国鉄・JRの路線でありながら、施設が私鉄っぽい路線もあるのは、このためです。
国鉄・JRでは、幹線から分岐する支線のような路線が、再び幹線と合流したり、別の幹線と接続したりする複雑な路線網になっています。もともとはそのような補助的な路線だったものが後年、輸送量では幹線を上回るということも珍しくありません。ネットワークのトポロジーでいえば、私鉄では明確なルート(根)があって木構造になっているのに対し、国鉄・JRの路線網はループのある複雑なネットワークになっています。
私鉄では、都心のターミナルと郊外の多客施設をポイント・ツー・ポイントで結ぶ路線が軸になっている場合が多いですが、国鉄・JRではどんな山奥でも原野でも親知らずと呼ばれる断崖絶壁でも線路を敷いていくことになります。俗に『酷道』と呼ばれようとも国道を通す必要があれば通すのと同じように、鉄道も『酷鉄』と呼ばれうる路線を建設する必要があるわけです。アメリカ民謡として知られる「線路は続くよどこまでも」は国鉄のミッションを誇り高く歌い上げます。
需要の多い地点間をポイント・ツー・ポイントで結ぶのは私鉄も国鉄・JRも同じですが、その途中の沿線には需要がなくても遠く離れた都市間を結ぶのが国鉄・JRの使命です。こうしたことは北海道では顕著で、北海道の鉄道を細切れの線区に分け、線区ごとに杓子定規な営業係数で評価することは著しく不合理と言わざるを得ません。
国鉄岡多線の計画を引き継いで開業した愛知環状鉄道は黒字で、もともと国鉄岡多線の計画が合理性を持っていたことをよく証明しているといえるでしょう。根岸線では、横浜に出る客と大船に出る客が拮抗し、北行・南行の混雑がそれなりに平準化され、輸送力が無駄なく活用されているといえるでしょう。一方、貨物線として計画された武蔵野線と京葉線の旅客化は中途半端で、朝のラッシュをさばけていないという指摘があります。沿線に需要がありすぎてもまたうまくいかないということがわかります。根岸線の港南台駅と京急線の上大岡駅の間の道路の渋滞が激しく、路線バスの遅延が常態化していることはあまりにも有名です。
いま、マップコンストラクションで「地形の自動生成」により得た地形を使って、『架空のJR線』の路線網をつくってみましょう。
(説明)※ゲーム画面からキャプチャした「サテライト」を下絵にしてあります。この部分の著作権は株式会社アートディンクに帰属します。色がネオアトラス羊皮紙に描かれた中世の地図みたいになったのはたまたまです。
マップコンストラクションで『架空のJR線』(当地で最初に引かれた官設鉄道および国有化され現在もJR線であるもの)を引いてみてから、「府中のメソッド」で「平地」を一定の数に区切って色をつけた図です。(「7」のエリアで東西に引いてあるのは線路ではなく道路です。)数字を消してあるエリアは、あえて空白地帯にしようと思っているエリアです。そこから新鮮な鶏肉が運ばれガード下で焼き鳥に水田や畑ということにして、手つかずにしておきます。(ゲーム内の「Construction」メニューで「水田」「畑」を「建設」しようということではありません。)北側の水面に突き出した赤いエリアは、何か風光明媚な場所か、いわれのある岩場や神社などがあるということにしておきます。ここに鉄道や道路を通すという無粋なことはしません。
『架空のJR線』は、必ず両端を「隣町」につなぐ、いいかえれば「隣町」のほうから入ってきて、このマップを“通り抜け”てゆく路線として考えます。実際にも、JR線は県境を越えて全国網を築いています。県境をまたぐ交通を担うことこそが国鉄の役割だったからです。あなたが「A列車で行こう9」で『行き止まりのJR線』を表現すれば、それは稚内や指宿を表現したことになるのです。あなたがゲームの中で、特別な情景として稚内や指宿を表現したいのでない限り、ゲームの中で『行き止まりのJR線』はつくらないことです。
(説明)『架空のJR線』を引くときは、まず「隣町」と接続できる地点を見つけていきます。マップの4辺それぞれ、どの地点で「隣町」と接続するとしっくりくるか、見定めましょう。このマップでの西側のように、1辺ぜんぶが「平地」で開けているようなときは、複数の地点で「隣町」と接続しようと考えてよいのです。
『架空のJR線』の路線網が確定したら、これは絶対に変えないことにします。この路線網はそのままで、空いているエリアなどに『架空の私鉄A』『架空の私鉄B』や『架空の地下鉄』それに『架空のJR貨物グループの架空の臨海鉄道』などを通してゆくのです。
※「○○臨海鉄道」は、国や県が保有する港湾の土地を使って線路を引いて貨物列車を運行する3セクの会社です。旅客営業も行なう場合は「○○臨海高速鉄道」になりますが、これも3セクです。線路を引くための土地が公共の土地だからです。
ゲームの中で引く『架空のJR線』には、作った端から最新型の電車が走ることになるので、実感がわかないかもしれませんが、あくまで線路としては、汽車の時代の官設鉄道だと考え、汽車が走れないような急こう配を避けるなどします。トンネルや橋も極力、つくりません。このようにして築いた『架空のJR線』が、あなたのマップの“骨格”になるのです。
『架空のJR線』とはいっても、実在のJR線をモデルにして問題ありません。『架空の』ということにとらわれるあまり、無理やり線形を不自然にしてしまったり、変な名前をつけてしまったりするのはいけません。
国鉄が民営化されて発足したJR各社は株式会社という形態を採ってはいますが、その事業の根幹をなす鉄道の線路や施設それに土地のほとんどは、国や自治体の財産です。社会通念としても、国鉄やJRの路線や列車を舞台にしたミステリーの作品を発表するくらいまでのことは許容範囲にあると考えられてきています。悪意のある利用のしかたやきわどい表現を避けるのは当然として、ゲームの中で引く『架空のJR線』のモデルとして、実在のJR線を大いに参考にしたり、ほぼそのままのかたちで利用したりすることは、まったく問題ないと考えられます。むしろ、モデルにしていながら何かを改変する場合は、合理的な理由が必要です。なお、JR各社の商標であるJRマークや列車の愛称などを勝手に使ってはいけません。『架空のJR線』というつもりで創作を行なうにしても、実際の作品の中で「JR」を名乗るのはいけません。特に何とはいわずに「なになに線」とだけ呼べばよいでしょう。
(説明)これは常磐線とその周辺をモデルにした路線網に、松戸市内の町名を駅名として与えたものです。もともとDS版「A列車で行こうDS」のマップとしてウィキで公開されていたものを参考にしました。
(説明)路線の分岐と終端のみに着目し、アルファベットを与えた図です。線の色は適当につけたもので、意味はありません。常磐線がモデルなので、「A」の駅は上野のような『行き止まり』の駅です。なお、『行き止まり』という形態だけを言えば「D」と「K」の駅も『行き止まり』ですが、「D」の駅は例えば吾妻線の大前や青梅線の奥多摩、五日市線の武蔵五日市のイメージ、「K」の駅は空港への乗り入れのイメージですから、意味はまったく異なります。
実在のJR常磐線をモデルにしていながら常磐線とは離れた路線のイメージも盛り込んであるのが、このマップの独創性です。なお、このアイデアはウィキで公開されていたマップがもともと持っていたもので、筆者が考えたものではありません。いろいろなイメージをつなぎ合わせる表現活動「モンタージュ」は中学校の美術で習います。「モンタージュ」だけで「作品」になるかはともかく、個々人の表現の技術の巧拙(じょうず・へた)を顕在化させることなく表現そのものを考えさせることができる教育的な方法です。初歩の段階では非常に有用であるのは誰も異論がないことでしょう。何の統制もなく個々人がまったくばらばらに(ともすれば「でたらめ」な)表現をしてしまうのでなく、表現の方法にルールや手順を設け、同じ方法や材料を使わせ、だいたい同じ水準(品質)の表現が誰でもできるようにすることは重要です。これをゲームソフトのメーカーが社内で行なえば「クオリティコントロール」と呼ばれます。使い方が難しい業務用のソフトウェアやサービスでいえば「利用者教育」です。
(説明)この路線網の『骨格』(『屋台骨』『背骨(バックボーン)』『テントや傘の骨』)となる「A」から「B」までの路線(水色の線)をなるべく長くできるよう、正方形のマップを45°回転させて考えます。路線と路線(支線)の『つながり』を維持したまま、分岐の位置や線路の長さ、それに線形を自在に変えていきます。なお、「A列車で行こう9」(PS4「A列車で行こうExp.」)で引ける線路は「22.5°単位」ですので、線形は「22.5°単位」で考える必要があります。フリーハンドで適当な線を引いてはいけません。プラン通りの線路がゲームの中では引けないということになってしまいます。日本語には「ボタンの掛け違い」「及ばざるは過たるよりまされり」という素敵な言葉があります。
考えた路線網に合いそうな地形を「地形の自動生成」で生成します。よさそうな地形が得られるまで何度でも生成を繰り返しましょう。年少のプレーヤーやDS版・3DS版から入ったプレーヤーにありがちな態度として、地形の起伏を嫌って「テンプレート」の「平地」を使う、あるいは「平地」を使って好き放題に線路を敷いてから都合よく地形を編集してしまうというものがありますが、それでは「地形の自動生成」ができる「A列車で行こう9」を楽しめているとは言えません。「地形の自動生成」を必ず使いましょう。知識やスキルの目安として、例えばボーカロイドの設定の追い込みができるなら「地形の自動生成」も使いこなせるはずです。公式の収録シナリオマップ(ニューゲーム)も含め、「地形の自動生成」を使用せずに作成されたものに見るものはありません。
「地形の自動生成」の実行例
地形仮生成の目標値
- 山の比率:10%
- 海の比率:20%
- 陸の比率:70%
- 地形の複雑度:1+
- 起伏の複雑度:8+
- 山の高度:中
- 海の深度:深
スタート画面から「マップコンストラクション」の「テンプレート1:1」の「平地」を読み込んだ後、「Edit」メニューの「自動生成」から「地形仮生成」を実行しましょう。少しでも気に入った地形が生成されたら「新規保存」しましょう。「Option」で「車両最大数の拡張」「時間の拡張(実時間比)」を選びましょう。
(説明)
「創作ゲーム」(ユーザー作成シナリオ)として仕上げるときにつける説明の例
ゲーム名 常磐線とその周辺(仮題)
リリース日 2024年4月4日 地形の特徴・
地形の複雑度Type G
Good平地 77.3% 水面 16.1% 平地は77.3%、水面は16.1%で、水面と山が織りなす風光明媚な地形が楽しめます。山は少なめ。地形はやや単純ですが、特徴を活かして風景を作りこめるでしょう。この地形ならではのシナリオを楽しむとともに、ゲームに用意されたさまざまな機能や要素を試していけそうです。
- 京須偕充「題名」:最初の頃は噺に決まった題名などなかった/繰り返し演じられる噺が現れ、「作品」めいた意識が生じて、かりそめの題名が生まれ、寄席の興行形態が整う過程でその「仮題」の有用性も増したのではないか
- 「次に読んでみたい本」:書誌事項に相当するものを書きます(日付も書きます)
- 「運行開始から25年、新幹線「のぞみ」誕生秘話」:300系による新列車の命名は、当初「スーパーひかり」が有力視されていたが、JR東海では「きぼう(希望)」に内定していたという/阿川佐和子さんが決定当日の朝、父であり鉄道に造詣が深い作家阿川弘之さんから「これまで列車名は大和言葉で名づけられてきたいきさつがある。『希望』を大和言葉にすると『のぞみ』」とアドバイスを受けた
- 服部訓和「書誌情報の書き方(基本)」「注の書き方(基本)」:各分野ごとに定められた方式にのっとり、一貫したルールのもとで注記を行ってください。どの方式の場合でも、第三者(読者等)が確実にもとの文献等にたどり着けることが、論文・レポートの客観性を保証することになります。
- 原色大辞典「ブラウザで名前が定義されている140色の色名と16進数」:マップ(シナリオ)をイメージするテーマカラーとしてHTMLカラーネームから1色を選びます(イメージが同じなら同じ色を何度でも使って構いません)
- 東海東京証券「定量評価」:マップの大域的(全体の)特徴を数値で示します
フルHDの画面で楽しむ「A列車で行こう9」(PS4「A列車で行こうExp.」)のマップは、素朴に思われるよりもはるかに広く、途方に暮れるものです。年少のプレーヤーやDS版・3DS版から入ったプレーヤーは目先の駅や線路ばかり見てしまい、マップの全体を見渡すことを苦手としている場合が多いと思います。苦手だということをよく意識して、あの手この手でマップの全体を見るようにする工夫をしてください。苦手だということは恥ではありません。このゲームを通して鍛えていけばよいことです。このサイトの「データで遊ぶ」のページで紹介しているさまざまなビジュアライゼーション(可視化)や解析の方法も活用してください。2022年度からの高等学校「地理総合」で本格的に扱われ始めた「GIS」のようなごっこ遊びを小さなお子さんにもさせてあげてください。高校生のかたは、既製品のGISを触っておもしろがるだけで終わらせず、GISそのものを自作する(ゲーム専用の『ミニGIS』・自分専用の『マイGIS』をつくる)つもりで取り組んでみてください。
(説明)ゲームの中で実際に引く線路や駅の位置は、ゲームの中で空間や距離感(3Dグラフィックとして実際に描画されたときに受ける遠近感などの印象)をよく把握して決めましょう。あらかじめ作図して考えたからといって、それにこだわりすぎるのもいけません。せっかく「地形の自動生成」で自然な地形が得られているのに、じぶんのプランに合わせて強引に地形を編集してしまっては不自然にしかなりません。「地形の自動生成」で生成された地形に合わせましょう。このことを日本語では「柔能く剛を制す」「郷に入っては郷に従え」といいます。
(このページの初版公開:2020年10月6日、「連絡設備費」の初出:2019年3月1日、『架空のJR線』の初出:2019年10月18日)
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