ゲームの中でも豊かな色彩を楽しみたい。これを否定するかのような実装がなされている。日本では男性の20人に1人の割合で、見えにくい色のある人がいる。粘り強く色彩と向き合っていきたい。
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※翻訳結果についてのおことわり(in Japanese)
最終更新:2023年12月1日
作品において色は非常に重要な表現であるにもかかわらず、これまでゲームの作り手の色覚について言及することははばかられていた。明らかに(偶然ではなく系統的に)「色がおかしい」場合においてすら、そうした指摘をできなかったことに反省と後悔がある。色覚が違えば考え方まで違う。ゲームの中の何かが「おかしい」と感じられるとき、そこには色覚の違い(に由来する発想の順序や枠組みの違い)があるのではないかと想像してみよう。
「A列車で行こう9」の画面では、いろいろな物の色がおかしい。実物がモデルなら、その色を正確に再現するのみだが、「A列車で行こう9」の色のおかしさは「再現の上手い下手」という域にとどまらない。作者がじぶんで色を決めるべき場面での色使いが相当におかしいとか、色というものをシステマティックに考えた形跡がないような仕様や実装を目にすると、これは大まじめに一生懸命に製作してなお、こうなっているのだと思わされる。ふざけているわけでも手抜きをしているわけでもなく、色がわかっていないのだということに思い当たるのである。見えにくい色のある人が、日本では男性の20人に1人の割合でいるとされる。おかしな対立に陥ることなく色彩を楽しんでいきたいという決意のもと、あえて指摘するものである。
実物をモデルにして実物の通りの色を再現すれば済むものについて指摘するのはたやすいし修正するのも容易である。ここでは初めに、そういう簡単なことでは済まない、作者がじぶんの責任で配色を決定しないといけない場面での色彩の考えかたについて、基礎中の基礎のみを簡単におさらいする。なお、色彩設計は、それだけで1つの会社や職業になるほど高度に専門的な業務であるので、必ずしも作品の作者がじぶんだけで(独力で)できる必要はないことを申し添える。(できないことを責めるわけではないことを理解して読んでほしい。)
「A列車で行こう9」という作品の「色」について、何が起きていて、どう問題なのかということを理解するのは、色覚多様性について通り一遍の研修などを受けただけでは難しい。上司として部下の色覚多様性に『配慮』する(色覚に由来するいかなる問題も起きないように監督する)といった責任を伴うでもない学生や新人には、およそ考えもおよばない領域である。見えない色が特にない(どの色も見える色覚特性である)というだけでは、何も思わない人のほうが多いと思われ、現に「A列車で行こう9」の「色がおかしい」という話をあまり見かけない。気が置けない間柄の人に色覚多様性の当事者がいれば、率直な話を聞けるだろう。詳しくは「カラーバリエーション」「車両の選び方(カタログの作り方)」を熟読してほしい。
信号機の灯具の色 |
青緑色が純緑色に、橙色がレモンイエローになってしまっている 中継信号機は電球色だが緑みの混じった白っぽい色になってしまっている (実物の光色はsRGBなどの色域を越えて鮮烈。動画や写真ではなく実物を見てほしい。その印象を、sRGBでできる範囲でじゅうぶんに表現してほしい) |
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レールの色 |
レールは鉄だから赤みのある茶色だが、赤みのほとんどないダークグレーになってしまっている 実際のレールは明るい色をしているが、かなり暗い色になってしまっている (ポイントのレールは材質が異なる) |
E653系の色 |
グリーンレイク色(エメラルドグリーン)がただの緑色に、紫みのあるブルーオーシャン色がただの青色に、同じく紫みのあるスカーレットブロッサム色がただの赤色になってしまっている (絵具でいえば白を混ぜた色だが、ゲーム画面では白がまったく混ざっていない原色のような色になってしまっている) |
国鉄特急色 |
PS4版ではやや直されているようにも見えるが、わたしたちが期待する色にはなっていない (旧型車両の色は実車でも褪色の進行度がまちまちで、どの状態の色を再現すると好ましいかはケースバイケース) |
赤い紅葉 |
ゲーム画面に赤い紅葉はなく、黄色い紅葉は緑みが強すぎて美しくない。ゲーム内の日付に従って葉の色がグラデーションで変わっていくが、変わる途中の色が非現実的で非常に汚い (現実に近年は気候変動であまり美しい紅葉は拝めない年が多いが、ゲームの中では理想的な紅葉のイメージが提示されたい) |
わたしたちは豊かな色彩を楽しみながら生きている。ゲームの中でも色彩を楽しみたいと思うのは自然なことであるが、これを否定するかのような実装(色彩を無視したり軽視したり極端な偏りのある扱い)がなされているのは不快なことである。このページのタイトルを「色がおかしい」という糾弾調のものにせざるを得ないことは、どうかお許しいただきたい。
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(このページの初版公開:2020年4月29日、要望24の初出:2019年4月1日、要望16の初出:2020年1月27日、要望12の初出:2020年7月1日)
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