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ゲームで追体験する鉄道工学と鉄道史:列車の運行制御を体系的に知ろう。(初版公開:2020年3月28日、最終更新:2024年11月21日)
[ 列車の運行制御(コントロール) | 列車と路線(ルート) ]
このページでは、ゲームでの「ダイヤ設定」に必要な考え方を、駅とポイントに着目して説明しています。路線網のつくり方と列車については「列車と路線(ルート)」をご覧ください。
運行制御の考え方 | ゲームでの「ダイヤ設定」 |
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列車の運行制御を体系的に知ろう。必ず実際の鉄道を参考にしよう。“正解”(お手本)が必ずある。「自分流」で勝手な表現(※ゲーム内での操作や設定)をしてはいけない。
※パッケージ版「A列車で行こう9」は「For Sale In Japan Only」であることから、このページでの説明は日本国内の事情に限る。
車両を運行するための軌道を「線路」と呼ぶ。静態保存の車両の展示場所に敷かれたレールは「線路」ではない。完成検査を受ける前の軌道と廃止後に放置されたものも「線路」ではない。
線路は「複線」が基本で、「単線」は特殊な場合と考える。列車は「左側通行」である。1本の線路に着目した場合、その線路を走る列車の進行方向をある1方向だけにする(逆向きには走らせない)ということである。
すべての線路は「駅構内」と「本線(駅間)」のどちらかに属する。
駅構内 | 本線(駅間) | |||
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連動駅 | その他の駅(停留所) | 駅間 | ||
ポイント(分岐器) | 置いてよい (ポイントを置いたら 「連動駅」) | ← → | 置いてはいけない (ポイントを置きたい場所は 必ず駅か「信号場」にする) | |
発車時刻 | 必ず定める (「採時駅」) | 定めなくてもよい (路線が長い・ 途中の駅が多いときは 「採時駅」) | (駅ではないところで 停車してはいけない) | |
通過 ※停車せず 通り抜けること | 原則として禁止 (⇒「通過線」) | してよい | ← | |
折返し | してよい | 原則としてしない (逆線走行しない) | (駅ではないところで 停車してはいけない) | |
車止め (行き止まりの線路) | つくってよい | ↑ | つくってはいけない (駅ではないところで 行き止まりにしない) |
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この文脈でいう「駅構内」は、利用客のための「駅構内図」という用語でいう「構内」とは別の概念である。信号についていうときは「場内」と呼ぶ。「場内」という意味で「駅構内」という場合があり、そのときは「連動駅」の「場内」を指している。なお、かつてポイントがあった駅で、現在はポイントがなくても「場内信号機」がある場合もある。卑近な話をするなら、駅のホームでカメラを構えれば出発信号機を撮れるが、場内信号機を撮るためには改札を出てかなり歩かなければならないし、必ずしもカメラを構えられるような場所とも限らない。こうした事情から、なぜか出発信号機と閉そく信号機については詳しく知っていても、場内信号機についてはほとんど何も考えていない(存在すら忘れている)ような鉄道ファンが少なくないことを指摘しておく。
先に、(実際の鉄道での)列車の運行制御を理解した。次に、ゲームでの「ダイヤ設定」への落とし込み方を考えてみよう。
「デフォルト」:ほとんどの場合にそのまま使える「ふつう」の設定値。
「じぶんで決めて」:最初から決まっているわけでなく、ゲームソフトが決めてくれるわけでもないという意味。
「先に決めて」:決めたら変えない(固める)という意味。
「A列車で行こう9」のシナリオマップ(ニューゲーム)には、ポイントが1個もないものが多い。そうした中では「夕日町計画」「砂浜とウォーターフロント」でのポイントの使い方は参考になるだろう。
実際の鉄道では、駅構内のポイントと信号機を“正しく切り換え”ることで、列車と列車が衝突しないようにしている。ポイントと信号機の切り換え方の組合せを辞書式で列挙し、この切り換え方は許可する、それ以外の切り換え方は禁止するということを事前に決め、「真理値表」という形式で表現する。この「真理値表」を電気的な論理回路で実装し、“正しい”切り換え方しかできないようにすることで安全を守るのが「連動装置」である。
本作では複数のポイントと列車の動きを連動させてコントロールするしかけは用意されていない(※特に、信号機を赤にして他の列車を待たせるというしかけがない)が、実際の鉄道の「連動装置」の考え方を学び、これを仮想的に模擬するつもりでポイントを設置し「ダイヤ設定」「ポイント分岐設定」を完成させていこう。
ポイント分岐設定 | 駅のダイヤ設定 | |
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駅への進入 (到着) |
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駅からの進出 (出発) |
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- A列車で行こう9・Exp.のダイヤ設定(2024年1月11日)
- プログラミングになぞらえてイメージする「ダイヤ設定」
- 「24時間運行」からつくる「ダイヤ設定」
- 時間帯により「発車間隔時間」を使い分ける/ポイントの「時間指定」を応用する
- 「運行予定」は操車場(車庫)で使おう/「運行予定」と「連結」を組み合わせて使う
- 「ホーム据え付け」の時刻を揃える/「発車間隔時間」で2つの発車時刻を指定する
- 「縦列留置(押し込み)」「入換」を楽しもう/「連結」を組み合わせて使う
- 「停車時間」に違いをつけてみよう/折返しで種別が変わるダイヤを組んでみよう
- 単線区間のダイヤを「到着待」で組んでみよう/「到着待」を応用する/運転停車を活用しよう
- 方向により「巡航速度」を変える/「定速」「抑速ブレーキ」を表現してみよう
- 「機回し」と「編成の向き」/「高速線路」と「編成の向き」/ホームの停車位置/「運休」の使い方
2022年10月14日、日本の鉄道は150周年を迎えました。鉄道に関する用語には独特の古臭さがあって日常生活の中では使わないようなものが多いですが、よく確かめてみれば、さほど難しいことは言っていないことがよくあります。鉄道に関する用語は、鉄道に関する法令などに基づく正式なものから、現場で呼びならわされてきたもの、趣味の雑誌(趣味誌)やオンラインのコミュニティ(※パソコン通信や掲示板)で独自に発達したもの、マスメディアで使われるもの(※新聞独特の短縮や言い換えを含む)など、さまざまなものが入り混じっています。意味がわかればどの言いかたでもいいというのでなく、その場にあわせることが重要です。
どのような言葉をどのように使うかは、あなた自身が責任を持つことですが、その指針になるよう、ここに簡単な用語集を用意しました。
始発の駅 (連動駅) | 途中の駅 (停留所) | 終点の駅 (連動駅) | ||
出発 | ⇒ | 停車・発車 または 通過 | ⇒ | 到着 |
「途中駅」という用語があるわけではないので「途中の駅」と表記する。これにあわせて「始発の駅」「終点の駅」と表記する。口頭では「途中」「終点」と言い、「の駅」とは言わない。
「始発」という用語は、▼1日の最初(朝一番)の列車を指す「初電」の意味と、▼その列車の出発地点(折返しでの発車)という意味の2通りで使われることに注意。
(1) | 本線 (幹線) | ⇔ | 支線 (枝線) |
(2) | 本線 (営業列車が通る線路) | ⇔ | 側線 (営業列車が通らない線路) |
(3) | 本線 (主本線) | ⇔ | 副本線 (主本線より使用頻度が低い駅構内の線路) |
対義語が何であるかを確かめさせるとよい。
(1) | 設定 (メニューなどの項目) | ⇒ | 設定項目 |
(2) | 設定 (値を入力すること) | ⇒ | 入力 |
(3) | 設定 (入力された設定値) | ⇒ | 設定値 |
(4) | 設定 (想像でこさえた物語) | ⇒ | ストーリー(筋書き) または キャラクター(役柄) |
「設定」ほどあいまいな多義語もなかろう。
(1) | ダイヤ | ⇒ | 運行の概要または開業後の予定 (新聞やテレビのニュースで言う) | 「ダイヤ改正」 「想定ダイヤ」 |
(2) | ダイヤ | ⇒ | 運行計画 (事業者が運輸局に提出する書類の実物や その内容または届出の手続きそのもの) | |
(3) | ダイヤ | ⇒ | ダイヤグラム (算数で習う図表の形式) | 「ダイヤ作成」 |
(4) | ダイヤ | ⇒ | 列車運行図表(部品市で放出される実物) 公式情報(JR各社が交通新聞社に提供する情報) | 「鉄道ダイヤ情報」 |
(5) | ダイヤ | ⇒ | 宝石 | 「天然ダイヤ」 「合成ダイヤ」 |
(6) | ダイヤ | ⇒ | 三菱または武田菱(菱紋) | 「スリーダイヤ」 |
上には上がいた。いずれにしても「時刻表」ではないことに注意。
「三角線」とも呼ぶが、JR三角線と紛らわしい。デルタ線は、列車の方向転換ができるようにするために造る場合と、方向転換せずに運転できるようにするために造る場合がある。路線網が段階的にできていった結果としてデルタ線を成す場合もある。ゲームの中でデルタ線にするときも、ねらいをはっきりさせたい。貨物列車の機関車の付け替えを不要にする、特急列車を直通させるなどの目的では、ゲームの中でもちゃんとデルタ線のメリットが享受できる。デルタ線とは、このような目的や用途を説明する用語である。列車の運行制御(コントロール)は、分岐・合流部の駅や信号場で行なう。そこにはなんら特殊なことはない。デルタ線においても基本は複線である。古い駅や操車場などで急曲線を用いて短い線路で結んだものでは、単線でも足りる場合がある。この場合、一帯の線路を俯瞰してデルタ線と呼ぶよりは、「短絡線」「連絡線」「接続線」と呼んで、特別な目的でつないだ線路のみに着目するほうが直感的である。デルタ線とは、形だけを見ていうものではないということである。
機回し線は、方向転換が不要となった電気機関車の時代以降に重宝された配線の形態。機関車けん引列車の折り返しにかかる時間を大幅に短縮し、輸送力向上に貢献した。鉄道史の上で、蒸気機関車の次は電気機関車であることに留意。日本でも戦前から山岳地帯を中心に電気機関車の導入が進んだ。気動車や交流型電車が普及するまで、各地の都市間輸送や通勤通学輸送(定員が多い列車)では客車列車が活躍を続けた。なお、寝台列車は(朝に到着する)終点の駅で折り返し発車する列車ではない(次の出発は夜や翌日以降)ので、機関車をうしろにして推進運転で操車場へ回送される。上野では尾久との位置関係で必ず推進運転になるが、宮原や梅小路には(本線から)そのままの向きで入ることができる(=操車場の中で機関車を付け替えて客車の入換をするので、必ずしも「機回し」するとは限らない)。機回しや入換は(本線での)「運転」には該当せず「移動」や「走行」と呼び分けられる。線区に適合する保安装置を搭載しない車両や故障した車両を動かすとき、「機械」などを走らせるときは、その車両以外は線路に入れない「線路閉鎖」を行なう。
蒸気機関車の方向転換について転車台とデルタ線のどちらが有利になるかは、線路の用地、燃料費の高騰、機関士の充足数といった事情による。これらの確保が困難であれば冗長な線路での冗長な運転は許されず、転車台を造って人力で回せということになる。日本の国鉄に残る蒸気機関車のための「扇形機関庫」は、点検や整備のための蒸気機関車の入換と方向転換を集約したもので、蒸気機関車の時代の中ではかなり新しい部類である。扇形機関庫への出入りも自走であるため転車台は完全な屋外とされ、機関庫は蒸気機関車の排煙により真っ黒に煤ける。もともとの「扇形庫」は、1等車などの豪華な客車を完全な屋内で丁重に整備するための建物で転車台も屋内にあったが、蒸気機関車のための扇形機関庫に至っては美観を保つという発想はない。なお、国鉄からの払い下げによって立つ地方私鉄にも目を向けると、蒸気機関車の時代は国鉄より長い。転車台の払い下げもあるが、ケチな切り方のチョコレートケーキさすがに扇形機関庫をもらってくることはできないので、きちんと扇を広げた形の扇形機関庫は国鉄の幹線ならではの情景である。
分岐器の速度制限 | 絶対信号(連動装置) | ポイント(分岐器) | |
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追い越し | 最小限に留めたい (分岐側65km/hなど) |
本線側は出発進行で進入させたい 通過もできるとなおよい |
1日の転換回数を少しでも減らしたい 毎日必ず列車が通ってレールを磨くようにしたい 亀や落ち葉が挟まらないようにしたい |
折り返し | 両渡り線などで45km/h以下 停車後に非常ブレーキ(転動防止) 折り返し発車時は流しノッチ |
45km/h以下(場内注意で進入) 通過禁止 |
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追い越し設備なしでの急行運転についてはこちら。上永谷駅の施設は折り返し能力を確保するためのもので、信号や速度制限などは追い越しを目的としたものにはなっていなかったはずだ。上永谷駅で発車の順序を変えることで追い越しと同等の効果を得ている。サービスとして申し分ないが、技術に関する文脈では本来の追い越し設備や追い越しのある急行運転と見分けたいもの。守谷駅では入出庫線を複線化する工事に際して本線にも分岐器が挿入され、これにより初めて守谷駅での追い越しが可能となった。流山おおたかの森駅は2面4線だが、通常は折り返しをしないことにより、上り線と下り線を別々に扱え(渡り線のポイント転換のため上り線の列車が下り線の列車を待つ必要がなく、上り下りの間で相互に影響しない)、スムーズに追い越しが行なえる(副本線側への分岐器にかかる速度制限が最小限、本線側は出発信号を進行現示にして高速に進入可能、最短の時隔で追い越しができる)ようにされている。2面4線だというだけで必ず追い越しができるというものではないこと、追い越しと折り返しは信号上の要件としては対立するものであることに注意して、ゲームの中でもうまく表現しよう。なお、首都圏新都市鉄道のダイヤは京急仕込みである。いわば京急の施設やダイヤのレガシーな部分を捨てエッセンスを凝縮したものがTX(つくばエクスプレス)として結実しているのである。京急の味わい深さとTXのつまらなさを否定はしないが、それでもいまから学ぶなら京急よりTXをおすすめする。東急は法令ハッカソン見ていてこわい。
線路終端部の信号と速度制限 | |
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線路終端部 (車止め) |
場内信号の注意現示(45km/h以下) 第二場内信号などの警戒現示(25km/h以下) 車止めまでにATSなどで減速(15km/h以下) 停車後に非常ブレーキ(転動防止) 折り返し発車時は流しノッチ |
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