[ マップの作り方 > マップコンストラクション > リアルに見せるカギ「実在の車両」の使い方 ]
小一時間で初心者卒業。大人のA列車。ゲームならではのデフォルメを楽しむ。(最終更新:2024年10月10日)
ゲーム「A列車で行こう9」(PS4「A列車で行こうExp.」)では、線路の向きを22.5度単位でしか変えられないため、実在の路線網をその通りの線形で再現できる保証がなく、プレーヤー自身がうまくデフォルメしたり、最初から「架空」ということにしたりするなどの「リアルに見せるコツ」(ゲームの中で自然に見えるようにする工夫あるいは言い訳)を考える必要がありました。これに対して、本作では鉄道各社からのライセンスのもと、実在の車両が登場します。こちらは「リアルに見せるカギ」(これを正しく使えば必ずリアルに見えるというもの)。資金を気にせず遊べるマップコンストラクションモードでは、実在の車両を本物の通りに走らせることも容易です。
※2023年4月発売のPS4版の最新バージョンで、これまでPC版のみに収録されていた車両も一挙に収録されるのを機に、まとめてみました。ただし東京近郊に限ります。「A列車で行こう9」が企画・発表された2009年の前後10年、1999年から2019年までの20年間のトピックをおさらいできればと思います。
常磐線から地下鉄千代田線に乗り入れるJR車が本作には収録されていませんが、JR車が小田急線には乗り入れていなかった時代の小田急線の情景は再現できます。なお、実車の「06系」は、輸送力増強のために1編成だけ製造された、ものすごくレアな車両です。ふつうにたくさん走っていた「6000系」の収録を待ちたいところ。ふつうの通勤電車の加速がいまほどよくなかった時代には、吹っ飛ぶように加速する地下鉄の車両は輝いて見えました。地下鉄線内は地上よりも急勾配が連続するため、加速度の高い車両が投入されます。建設の年代が早い地下鉄では、省エネや温度上昇の抑制を目的に、駅を発車すると下り勾配で加速、停まるほうはブレーキだけに頼らず駅の手前の線路をわざと上り勾配にして速度を落とすといった工夫がされていたのです。(※国電の高架化や複々線化でも、このような勾配がつけられ、駅部以外の高架橋が低くなっている区間もあります。駅間距離が短い区間で加速の足しにするという意味もありそう。)
ところで、東京というイメージと小田急のイメージが重ならないという人も多いかもしれません。「ランドマーク」に「国会議事堂」がないのが玉にキズ関東地方に住んでいても、小田急は小田急沿線の利用者が利用する以外には箱根への観光の足として知られています。神奈川県の(県内を広く含む)イメージということでもなく、箱根という観光地ただ1点のイメージになりがちですが、小田急線は東京の世田谷区と狛江市を通り、多摩川を渡って川崎市西部に入りますが、その先で再び東京都に入ります。「A列車で行こう9」(PS4「A列車で行こうExp.」)でも、小田急を観光のイメージではなく通勤・通学の足として楽しんで(?)みてはいかがでしょうか。
小田急グループ「大山観光電鉄」の大山ケーブルカーは、本気で大山に登る人じゃないと、なかなか行けないようなところにあります。高尾山ほどポピュラーにならないのは、それだけ山が険しいということ。大山ケーブルカーの車両の更新に際しては、ヘリで空輸するしかなかったということです。同じ神奈川県内、横浜市内からもさほど遠くないところに、これだけの山があるというのが神奈川県の魅力でもあります。海が好きで湘南に住もうという人と同じくらい、山が好きだから神奈川に住もうという人がいると思います。
神奈川県と横浜市などによる「相鉄・JR直通線」事業。相鉄「12000系」の実車は6編成の製造、埼京線の車両は7編成が増備されています。「相互直通運転」と「乗り入れ」は微妙に異なります。ここでは、相鉄「12000系」4運用による相鉄の新宿への乗り入れと、埼京線と同系式の車両の増備による平日7運用・土休日6運用の(実質的には『グリーン車なしの湘南新宿ライン』の)相鉄線内への乗り入れという、2つの「乗り入れ」が同時に実現されている格好です。事業の成り立ちや費用の負担が別々ではあっても、利用者にとっては特に区別なくどちらの列車も利用できます。繰り返しになりますが、これは相鉄の事業ではなく、神奈川県と横浜市などによる公共事業(神奈川東部方面線)であることをよく確かめてください。(「相鉄・JR直通線」ではなく「相鉄・東急直通線」のほうの)相鉄「20000系」の内装をちょっと豪華にしたというところだけが相鉄です。
本作ではJR東日本の車両は充実しているので、武蔵小杉から池袋までのJR線(横須賀線・山手貨物線)の情景は再現できるでしょう。車両の新旧(現実に同じ時代に走っていたか)をあえて厳密にはとらえなければ、だいたいそんな感じという車両を並べて楽しむこともできます。また、趣味的には新宿駅のみどころは貨物線だと思うので、新宿駅の全体を再現しようというよりも貨物線にフォーカスしたほうが趣深いと思います。新宿駅には限りませんが、「A列車で行こう9」(PS4「A列車で行こうExp.」)では、1つの列車の始発から終点まで(あるいは自宅の最寄り駅から学校の最寄り駅まで)をなぞるように再現しようとするよりは、1つ2つの印象的な駅をよく再現して、ジオラマと同じように視点を駅に置いてぼーっと眺めるのが楽しいと思います。
根岸線には横浜線の電車が乗り入れていて、感覚的には1/3くらいは横浜線という感じです。本作には京浜東北線の車両が103系・205系・209系・E233系と揃っているので、その勢いで根岸線の情景を楽しもうとすると、横浜線の車両がなかったので困っていました。根岸線は地元の利用者のほかに、横浜駅から桜木町駅や関内駅までの間をちょっとだけ乗る人がたくさんいます。みなとみらい線ができるまでは桜木町駅がMM21地区の表玄関で、関内駅は県庁と野球場の最寄り駅です。関内駅の開業は1964年。根岸線の大船までの全通は1973年、現在の野球場は1978年に完成しています。観客の電車による輸送を前提にしての大きな球場への建て替えは、いわば官製の『私鉄イズム』といったところでしょうか。水道橋駅のような輸送が関内駅でも行なわれるのです。なお、根岸線の線路は大船で横須賀線にも東海道貨物線にもつながっています。ホリデー快速や思わぬ臨時列車、それに神武寺からの新車の甲種輸送などが根岸線を通ります。桜木町からは高島線にもつながります。ATCを搭載した185系による「はまかいじ」という列車もありましたが、この回送列車がなんと高島線を経由していたのです。貨物列車だけでは錆び落としに足りないということもあったのでしょう。185系のような車両が変なところにひょっこり現れるという表現は「A列車で行こう9」(PS4「A列車で行こうExp.」)の中でも便利に使えそうです。
東武伊勢崎線とその周辺には、思いもよらない光景が広がっていました。スペーシアに限らず特急が便利(※JRと比べて朝早くから夜遅くまで特急がある)で、北関東の人は意外と浅草を近くに感じているようです。「溶接の津覇」と呼ばれる館林工場で魔…自由自在な車両の改造をすることでも有名で、JRでいうジョイフルトレインのような電車もあれば、なんと夜行※もあります。新越谷(南越谷)のように、私鉄である東武の側が立派でJR線のほうがしょぼいという駅もあります。複々線区間から車両基地のある南栗橋や東武動物公園まで、地下鉄日比谷線の車両や地下鉄半蔵門線の車両、さらにその先の東急田園都市線からも車両が乗り入れてきます。本作に営団(東京メトロ)8000系が収録されていないことには、東武をまったく理解していないと言わざるを得ません。複線の橋りょう(トラス橋)もありませんので、再現できる情景はかなり狭まります。「SL大樹」ばかりが東武というわけでは、ないのです。
長年の主力車両である東武8000系・東武10000系10030型が本作に収録されていないのが残念でなりません。特に、東武8000系は「A列車で行こう2001」(A2001)の「トレインキット」には収録されていただけに、なおさらです。新型車両が投入されると旧型車両が完全に置き換えられるのは東京のJRに限った話で、特に私鉄では旧型車両も長く愛用され続けるのが大きな魅力になっています。本作では東武の旧型車両と印象が似ている211系や107系100番代を並べる(※実際に伊勢崎駅で並びます)くらいしかできませんが、これをあえて東武なのかJRなのかあいまいにしてぼーっと眺めれば、ちょっとは楽しめるかもしれません。2両編成を3本以上も繋げた通称『ブツ』編成が見られるのも、関東では東武、関西では近鉄くらいのもの。単に私鉄の1つというのでなく、東武には東武ならではの情景があります。なお、東武伊勢崎線では複々線化の完成が急がれた一方で、高架化が難しかった竹ノ塚駅に非常に長い踏切(しかも踏切警手による手動式)が残るなどアンバランスな状態になっており、この踏切では痛ましい事故も起きてしまいました。東武伊勢崎線は高度経済成長期のありようを如実に体現する路線だと思います。
「Fライナーで行こう。」という広告がありました。西武有楽町線がどこにあるのかも、どことどうつながっているのかも、よくわかりません。西武のことを本当に知らなかったので、A9V1やA9V2のときには、なんとなく西武20000系・西武30000系と東急5000系をトンネルに通して直通させていたりしました。A9V1のときから収録されている西武の車両は地上専用でした。それにしても営団(東京メトロ)7000系が本作に収録されていないことは理解に苦しむところ。東武50000系50050型を東武50000系50070型のつもりで使うのはさほど無理のあることではありませんが、東急5000系を東急5050系のつもりで使うのはさすがに帯の色がまったく異なるのでかなり無理があります。(※色覚特性によっては、東急5000系と東急5050系の帯の色の違いは見分けがつかないのだろうとも思います。見分けがつかないゆえに、形式の数字だけ見て若いほうを収録したのかなと思います。東急5000系を収録しておけば副都心線の車両を並べて東急東横線ごっこができるとメーカーには本気で思われているに違いありません。)
山手線のATCがアナログだったときに、ATCを搭載している215系が団体専用列車「21世紀記念列車・215(GO)号」として走りました。2000年の大みそか(12月31日)から年をまたいで走るもので、その1年前の大みそか(1999年12月31日)には「2000年問題(Y2K)」への『対策』として年をまたぐタイミングではすべての列車を駅に停車させておく措置が取られていました。このほかにも215系はおもしろい列車に充当されていますので、ゲームの中でも存分に走らせてあげましょう。ただし、215系といえば、およそどんな列車でも、ほかの列車の合間にのろのろと走るイメージが強いもの。電動車の配置が客車列車じみているので、高速な運転や頻繁な加減速はしにくいのでしょうか。ゲームの中でも適切に速度を落としてあげましょう。
山手線のE235系は、営業運転の開始前に乗車できるプレミアムなツアーとして横須賀線を走りました。
215系は「ホリデー快速ビューやまなし」として千葉から小淵沢までの運転があったほか、255系による「ビューかいじ」の竜王までの運転がありました。竜王まで需要があるというよりは、甲府駅の線路を空けるために竜王まで送り込むということでしょう。そのとき竜王では線路が余っているのかというと、おそらく冬期の石油列車の分があるのでしょう。長野は鉄道王国ですが、ガソリンが高いことでも有名です。そんな長野を走る普通の211系や115系が「A列車で行こう9」に収録されていないことは、あまり知られていません。
公立学校の修学旅行の集約臨時列車(旅行会社の采配のもと、いくつかの学校が相乗りするもの)に185系が充当されている自治体があり、鉄道ファンのみならず185系には特別な思い入れのある人も多いようです。185系のうち耐寒耐雪の仕様になっているものは、東北新幹線が大宮までの暫定開業だったときに上野との間で運転された「新幹線リレー号」や、その後も武蔵野線などを経由して運転された同列車に充当されています。「ホリデー快速」を含め、急行形の165系で運転されていた列車もありましたが、近郊形ながら山登りのためモーターの出力が高く座席番号も設定されている115系に変わっていきました。逆に、185系には特急の折り返しで普通列車に充当されるたいへんおトクなスジもありました。千葉でも「佐原から普通」「成東から普通」「勝浦から普通」「君津から普通」といった普通車としての開放があります。
武蔵野南線には数多くの臨時列車が走ります。車種でいうと583系、なーんてものが走っちゃったりなんかしちゃったりすると、沿線はおおさわぎ。183系・189系のほか、「A列車で行こう9」にはまったく収録されていない「お座敷列車」(改造された485系)もあるでしょう。武蔵野南線には長大トンネルがあり、旅客が乗降できない区間が長く続くため、車両の要件が特殊なようです。どんな車両でも武蔵野南線で旅客を乗せて運転できるというわけではないようです。こうしたことをゲームの中で使用する車種で表現してみるのはいかがでしょうか。
武蔵野南線には旅客の駅がありませんが、当然ながら市街地も通る路線で、私鉄の京王線との交差部には京王だけ駅があります。平日には貨物列車がゆっくり走り、オンシーズン(繁忙期)の休日には臨時列車が、これまた貨物列車のようにゆっくり走るのを、京王線の駅からぼーっと眺めるのです。ゲームの中でも、線路が交差しているのにJR側には駅はないという情景を描いて楽しみましょう。
太平洋側の常磐線を走っていたときのE653系は豪雪地帯で運用できるほどの本格的な耐寒耐雪構造ではありませんでしたが、夏季には秋田から舞浜へ直通する列車に使用されていました。この列車では車中泊の旅程が組まれ、さながら583系を彷彿とさせます。その後、日本海側の秋田・新潟に転用される際に耐寒耐雪構造が強化されています。なお、新潟の直流区間では185系による臨時快速も走っていました。
営団地下鉄が民営化されて発足した東京メトロは自前で特急形やライナーの車両は保有していませんが、相互直通運転を行なっている私鉄の車両での臨時列車など、おもしろい列車が走ることがあります。なお、入換運転ではヘッドライトとテールライトの両方を点灯する社局もあります。
東急300系の実車は10編成あり、10編成とも車体色が異なります。すれ違うときは必ず異なる色の編成どうしになるわけですが、「A列車で行こう9」の中ではそれがかないません。実車には「アルプスグリーン」と「アップルグリーン」の2種類の緑色がありますが「A列車で行こう9」では「グリーン」とのみ表記され、どちらの色を再現しようとしたものなのか判然としません。「アルプスグリーン」は往年のおしぼり「玉電」を再現した塗装ですが、10色の塗装がある中の1色に過ぎず、東急300系を代表する色というわけではありません。東急世田谷線の風景を再現して楽しむにはストラクチャーも足りません。
新型車両をすさまじいペースで製造して短期間で旧型車両をすべて置き換えるようになったのは、新津での車両の製造が本格化してからのこと。総武線や南武線では「黄色い電車ならどれでもいいでしょ(乗れればいいでしょ)」とは言わないまでも、一時期に3~4形式、しかも世代も異なる車両がいっしょに走る光景が見られました。廃車の寸前には修繕が抑制されるため、総武線の103系では配電盤が破裂しましたし、南武線の205系では座席のバネが壊れて座ると痛いような状態で走っていました。
南武線の総延長はさほど長くはなく、中間に折り返し駅があまりありません。そうした折り返し駅の1つである稲城長沼駅が高架化されるときに、変則的な運転が行なわれました。なんと武蔵野南線に入って梶ヶ谷貨物ターミナルで折り返すのです。
南武線と鶴見線では車両の形式や世代が大きくは離れないようにされてきていて、南武線の主力車両が103系だったときは鶴見線や南武支線でも103系(・101系)が、205系が主力だったときには205系(ただし他線区の余剰中間車からの先頭車化改造)が使われていました。特に南武線の103系と鶴見線の103系は、6両編成と3両編成という長さの違いだけに見えたもの。線区に合わせて列車の定員を調節するものだということがよく実感できる例でした。
「A列車で行こうシリーズ」ではマップ(ステージ)が一面の原野(空き地)から始まるもので、ゲームの開始時はもとより、いくらかゲームを進めた段階でもマップの端のほうに残る土地をローカル線に見立てて遊びたくなるものです。本作に収録されている車両を自然に使っていくと、あなたのマップには高麗川駅ができてくるのではないでしょうか。架線柱とパンタグラフを駆使して、電化区間と非電化区間のコントラストを描き出してみましょう。
「A列車で行こうシリーズ」ではマップ(ステージ)の広さを見て途方に暮れながら、線路を思い思いの地点から思い思いの方角へと引いていくことになります。本作を自然にプレーしていくと、あなたのマップには成東駅ができてくるのではないでしょうか。千葉の鉄道(※国鉄)は久留里線を除き、オイルショックまでに電化が完成していて、オイルショックより前の計画に基づいて、毎時2本の電車特急いわゆる「エル特急」が津々浦々まで走破していました。113系には、東京地下駅に乗り入れることができる難燃仕様でATC搭載のものと、そうでない地上専用のものとがありました。千葉なのに横須賀色なのは、どうしてでしょうか。伊東線にも横須賀色の電車が走っていたといいます。電化に際して気動車が淘汰され、千葉の鉄道(※国鉄)といえば、すべて横須賀色の113系に揃った(※常磐線を除く)ので圧巻。まさに「鉄道王国ちば」と呼ぶにふさわしい光景が現出したのです。平日の7時の稲毛駅では、3番線に15両編成の快速電車が2分30秒かなと思うくらいの間隔で3本ほど立て続けにやってきます。このホームの中ほどにある場内信号機は、この朝7時のわずか10分ほどの間の運行をさばくためだけにあるといって過言ではありません。
オイルショックより後の設備投資は抑制や凍結ということになり、複線化が決定されて着工されていながら工事が止まっている区間が各地にあるほか、運行をしやすくする短絡線やデルタ線、車両基地の建設などは、武蔵野線・京葉線や幕張電車区を最後に行なわれていません。成東行きの電車は八街廻りと東金廻りに2分されてしまい、外房線の電車の本数がある大網駅はいくぶんマシなものの、八街駅となると絶望的です。「鉄道王国ちば」とは、砂上の楼閣とまでは言わないまでも、八街の砂ぼこりが見せていたいっときの幻だったのかもしれませんね。
(このページの初版公開:2020年10月6日、「連絡設備費」の初出:2019年3月1日、『架空のJR線』の初出:2019年10月18日)
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