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先人たちが警告するA列車で行こう9の大失敗ダイヤ。「ダイヤグラムを描きながら施設を変えない」「人気投票やコンテストをしない」ほか。(最終更新:2025年2月19日)
勉強のために自分で自分に課す禁止事項。初心者を自認すればこそ自分の学習段階を自分でコントロール。欲張らないのがコツだ。攻略が進んだら『解禁』しよう。
実験計画法では | A列車のダイヤ作成では |
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実験条件の統制 | ダイヤ作成中に駅や線路を変えない |
主効果と交互作用 | 鉄道の収支や乗車率を無視しない |
正規分布 | いびつなことをしない/奇をてらわない |
ノイズ | 人気投票やコンテストをしない |
これは高校の理数探究基礎で習うかもしれないし習わないかもしれない「実験計画法」から大学で学ぶ「品質工学」あるいは「人間工学」や「心理学」への橋渡しをねらった学習課題(のつもり)である。本作の定価は16,800円であるので、新橋のお父さんの高い買い物の言い訳それ相応の学習の機会としなければ大損であるというのが基本的な考え方である。大昔の言い方でいえば『我が家の大蔵大臣』との「交渉材料」である。なお「実験計画法」は従来、高校では理科の生物に配当され、生物という科目の範囲内に閉じた学習活動となっていたが、いうまでもなく「実験計画法」は理科の生物だけで使うものではない。物理と化学で工学部に進むと「品質工学」で非常に面食らうことになる。逆に生物と化学だけで製薬会社に進むからこそ研究倫理がおろそかになるのである。すべての実験は人の手で完全にコントロールされなければならないとする「実験計画法」を訳も分からぬまま叩き込まれるがゆえに、人の手でコントロールできないことは完全に無視してしまうだけでなく、自分の手ですることはすべてコントロールできるという思い上がりにつながりやすい。人間の手がまったく介在しなくても自然界には物理法則があり生態系がある。オオタカの生息地で木を倒せば、オオタカは別の木を自分でうまく見つけるだけである。理科の物理という科目で学ぶ圧倒的に絶対の物理法則がどれだけ絶対であるかを実感するという学びなしに口先だけで研究倫理を唱えても裏付けがない。そのような高大接続の悪さをなくすために理数探究(理数探究基礎)が新設されたのである。「実験計画法」について言えば、用語の暗記や手計算への熟達ばかりに甘んじることなく、なぜ「実験計画法」が必要なのかを論述する上級の資格試験の午後の問題のようなことに取り組んでほしい。
その場その場の思いつきで場当たり的に都合よく駅や線路を変えてばかりいては、結局、どうにもなりません。都合がよすぎてうそっぽくなるか、あれもこれもとよくばりごてごてしすぎるに決まっています。こうしたことを避けるためには、施設や設備は先に決めて変えないということを守るという基本のほかに、一連のことを考えるのに時間をかけ過ぎないことが大切です。最初の30分で目鼻を付け、3連休のうちにあらかた仕上げるというスピードをともなって取り組むことによって、合理性や一貫性を保ちやすくなります。とはいえ、わたしたちはそこまでなんでもすばやくできるわけではありませんし、いつでもまとまった時間を取れるわけでもありません。時間を置くと、じぶんでつくったマップやダイヤですら、意味不明になります。未来のじぶんのために、じぶんで説明書を書き残しておくという考えかたをしてみましょう。じぶんのマップのダイヤグラム(や「ダイヤ」)について、セーブデータや動画やスクリーンショットを見よ(「見たまま」です)というのでなく、文章で説明を尽くすことが有効なのです。
「A列車で行こう9」はゲームです。いくら「食後のデザート」としてダイヤグラムに凝る(ダイヤグラムという形式の図表に頼らないと完成できないような複雑な運行をする)としても、あくまでゲーム内で列車の収支を黒字にし、乗客をマップ内の各地点間で計画的に運ぶことが大前提です。安上がりな鉄道模型だと思って見た目だけでやりたい放題するのは感心されません。
バス停をじぶんの家の前に動かそうとしたり自宅や学校の最寄り駅(をモデルにした、ゲーム内の駅)に全列車が停車するようにしようなどと考えてはいけません。唐突に外国の鉄道のイメージを持ち出したりするなど非常に偏っていたり強烈な独特さのある運行をしてはいけません。ダイヤグラムに文字や絵を浮かび上がらせるようなことをしてはいけません。火花を散らしながらド○フト大量の列車がいっせいに同じ方向に走ったりダンスを踊るように動いたりする公式の動画はあまりにもひどいものです。
ふつうがいちばんです。ふつうのものがいちばんリアルなのです。
会いに行ける地下××どのようなダイヤにするかは、じぶんで責任をもって決めなければなりません。その路線のありように照らして合理的なダイヤであれば、細部が具体的にどうなっていても問題ないという見方ができます。「過密ダイヤ」「最過密ダイヤ」「超過密ダイヤ」や「パターンダイヤ」「ネットダイヤ」「ゆとりダイヤ」などの形式的な区別にばかりこだわり、そうしたわかりやすい特徴を備えていないダイヤグラムがあれば見下すといった態度に陥ってはなりません。このことは「単線ダイヤ」「3倍ダイヤ」はもとより、「環状線」や「複々線」についても同様です。どのような路線にするかは、じぶんで責任をもって決めなければなりません。そのマップの都市のありように照らして合理的な路線であれば、細部が具体的にどうなっていても問題ないという見方ができます。そして、どのような都市にするかは、じぶんで責任をもって決めなければなりません。そのマップの地形のありように照らして合理的な都市であれば、細部が具体的にどうなっていても問題ないという見方ができます。このとき、マップの地形がのっぺらぼう、すなわちマップコンストラクションで開いたテンプレート「平地」であったりすれば、これはもうどうにもならないということなのです。海があり山があり、高低差があるから川ができるというように、まったく物理現象のみから説明されるものでなければ、いかなる合理性も定義しようがないのです。
シミュレーションゲームとは
シミュレーションとは、現実の環境を模した実験環境を構築し、現実にはやりにくい実験をすることです。現実の環境では実験の条件を統制しきれず、現象のメカニズムを解明できないことがあります。また、実験をすることによって環境が変わってしまい、実験を何度も繰り返すことはできないということもあります。シミュレーションでは、条件を固定して網羅的に何度でも実験することができます。いちばん有名なのは、スーパーコンピューターを使った「地球シミュレータ」でしょう。
「A列車で行こう9」は「都市開発鉄道シミュレーション」というジャンルを掲げた作品。現実の都市と鉄道の関係を模した、一種の実験環境です。現実の環境ではいろいろなことが混ざってしまい、効果や特徴などが鈍ってしまって、よくわからなくなっています。ひとくちに都市と鉄道の関係といっても実に複雑です。ゲームの中では、現実にはあり得ないほどくっきりと個々の関係性や施策の効果が見えます。「そういうことだったのか!」と納得できることがたくさんあると思います。「ゲームだからリアルではない(うそっぽい・作り物っぽい)」という言い方をする人もいますが、『リアル』(現実)ではないシミュレーションの環境だからこそメカニズムがクリアーに見えてくるということがあって、そこに生々しいリアリティ(現実味)を感じるということはあるでしょう。
ほかのジャンルのゲームと比べて、シミュレーションゲームのプレーには高いレベルの能動性と総合力が求められます。ゲームを開始すればゲームのほうからおもしろいものを見せてくれるというジャンルではありません。だいたいの場合、プレーヤーが何もしなければ、何も起きないばかりか、あっけなくゲームが終わってしまいます。この「あっけなく終わってしまう」ということを「時間」だけの問題だと思ってしまい、つまりプレーを速く進めれば『勝てる』のだと考え、まるでほかのジャンルのゲームと同じように俊敏性と即応力を追求してしまう人も少なくありませんが、それではシミュレーションゲームというジャンルを理解できているとは言えないのは論を待たないでしょう。
- 「専門家に大迷惑をかけない程度の最低限の“教養”を消極的に証明する手段」(2023年12月31日):
応用情報技術者試験ドットコム自己採点では、主成分分析の概要を問う令和5年秋期午前問2の誤答率が95%を超えていた。「A列車で行こう9」というゲームでの具体的なことでいえば、「同時発車すると乗客ゼロの列車が発生する」といって怒る(「ゲームの出来が悪い」と言って非難する)ばかりで、自分では何も考えない人がいます。この場合、「同時発車を避ければよい」だけです。このゲームではそういう挙動になっているのだから、それにあわせたやりかたを考える。ゲームシステムを理解してダイヤを組むというのは、例えばそういうことなのです。
「乗客が全員、隣の駅で降りる」という挙動も、「オプション」から「詳細ダイヤグラム」の「乗客対応」を有効にして使いこなすよう、促されているかたちです。そもそも「隣の駅」に停車させるのか通過させるのかも、ゲームが決めてくれるわけではなく、プレーヤーが決めることです。自分で決めるという態度や覚悟を持たず、目の前のゲーム画面で起きることをアサガオの観察か何かのように(他人事のように)述べていてはいけません。
能動的でありさえすればいいかというと、こんどはゲームシステムを無視して現実の鉄道路線の時刻表を持ってきて『再現』しようとする人が出てきます。時刻表には全駅全列車全時刻が掲載されているので、ゲームの中でも全駅全列車全時刻を『手動』で入力しなければ気が済まないようです。でも、時刻表の「時刻」は季節ごとにころころ変わる部分があります。ニュースリリースでは「時刻については最新の時刻表をご確認ください」というような注意書きがあります。ある列車を実際に何時何分に運転するというのは、鉄道会社の計画の中では末端のこと。天候や予期せぬ混雑により列車が遅れることも日常的に見られますし、そもそも国電区間では発車時刻が定められていない駅のほうが多いのです。「A列車で行こう9」というゲームの中でプレーヤーが考えるべきは、個々の列車の具体的な時刻ではなく、そもそもどのようなダイヤを組んで、どのような輸送を実現するのかという、春のダイヤ改正について前年の暮れに発表される概略のレベルのことなのです。
ここで重要なのが総合力。鉄道のダイヤは鉄道の都合だけで完成するものではなく、都市との関係の中で見い出されていくものです。「A列車で行こう9」というゲームでいえば、ゲームシステムの全体像(列車の収支のしくみ・都市の発展のメカニズム)をよく理解して、各駅からの乗客数と定員が見合った列車を運行し、駅周辺の開発を進めたい駅で乗客を降ろす。鉄道と都市の両方をよく見て、同時に考えてプレーしていくための力が総合力ということになります。
「A列車で行こう9」というゲームでは「発電所」がゲームのすべてを支配しています。発電量(発電所の種類と数)に対して電力需要(建物の消費電力)が足りないと、発電部門が巨額の赤字を計上してきます。一刻も早く建物を増やし、発電量を使いきる必要があります。この場合、都市の開発に時間をかける猶予はないでしょう。しかし、「A列車で行こう9」の発表時に「発電所」は「夜景」と関連づけて紹介されていたので、本作の「発電所」を単なる『彩り』としか思わないプレーヤーが多いようです。「発電所」をまったく見ずにプレーしていては、ゲームオーバーになって当然としか言えません。
「3すくみ」という言葉もありますが、同時に考えないといけない要素が3つになると、お手上げになってしまう人がいます。これは上手い下手ということでなく、そもそも難しいということです。シミュレーションゲームとは何だったでしょうか。現実の環境では統制しきれない実験条件を固定することができるということでした。「A列車で行こう9」というゲームでいえば、「発電所」まで同時に考えるのは難しすぎる、ゲームを進めながら「発電所」を増減させてしまうと『堂々巡り』になってしまって収拾がつかなくなるとも言えます。その場合、「発電所」についてはゲーム開始時のまま触らない、固定の条件にするというのが第一の方策でしょう。
※じゅうぶんな発電所がない状態から開始になるマップや、発電所の種類と数を自分で決める必要があるマップコンストラクションモードでは、「火力発電所1基」が基本になると思います。
ダイヤを組む段階でも同じことは言えます。ダイヤを組みながら施設を変えない。施設をどのようにするかというのは先に決めておく。都市の開発をどこでどのくらいの規模や種類(産業)で行なうのかも、先に決める。これは「A列車で行こう9」というゲームが決めてくれることではなく、自分で決めることなのです。シミュレーションの条件をうまく統制する責任は、シミュレーションを行なう自分の側にあるのです。「とりあえず成り行きを見て『出たとこ勝負』で」などという甘言が通じるわけはありません。あえていえば「何もしないで早送りする(ゲームオーバーになる原因を先に知っておく)」というのは有効で、この結果を「ベースライン」にして考えていくとよいでしょう。
※どんなに簡単そうな算数でも「つまずいている子」と「ねらい通り解いている子」に分かれてしまいます。次善の策とはいいませんが、せめて「図を用いて求める子」になれるよう指導しましょう。「習ってないからわからない!」とキレる子をみすみす生み出してはいけません。習っていてもいなくても、その場で考える力を養いましょう。中学受験を優先して小学校の授業を軽視すると、中学受験には合格するが「比と比の利用」の単元は理解できていないままといった感じの非常にバランスの悪い人間になってしまいます。お気をつけあれ。
シミュレーションゲームの「ゴール」とは何でしょうか。あるいはシミュレーションの結果のよしあしは、何によって判断すればよいのでしょうか。多くのシミュレーションゲームでは時間を制限するなどして、一定時間内に何を達成したかや、そのスピードや効率を「スコア」にして、プレーの内容を評価するものが多いと思います。残念ながら「A列車で行こう9」というゲームには「スコア」を出してくれる機能はないので、プレーヤーが自分で出す必要があります。幸いにも「A列車で行こう9」というゲームの中にはさまざまな数字が出てくるので、それらをうまく使ってプレーの内容を評価する「スコア」を出すことは可能です。いろいろ工夫してみてください。
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