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プログラミングになぞらえてイメージするA列車の「ダイヤ設定」。「24時間運行」からつくる「ダイヤ設定」。「動く運転曲線」「個別発車」とは。(最終更新:2024年10月10日)
A列車で行こう9・Exp.のダイヤ設定で最も重要なのは「ポイント分岐設定」です。設定画面は分かれていますが駅の「折返」とポイントの「分岐」を同時に考えて設定していきます。本作のシリーズではかつて「初心者は環状線にするとポイントの設定が不要で楽」と言われてきましたが、今作では「隣町に高速線路で接続する」ことで、ポイント設定の省略とリアルな運行が両立できます。とはいえ、本作ではポイントの設定こそが醍醐味なのは今も昔も同じ。正確には列車の「発車時刻」と駅の「折返」とポイントの「分岐」の3つの要素を同時に考える必要がありますが、慣れるまでは全列車を同じように動かすことにして、「発車時刻」を細かく考えることは省略してポイントの設定だけに専念するとわかりやすくなるでしょう。
※そもそも「時間拡張」が「450倍」などにされているゲームモードのマップでは列車の「発車時刻」を詳しく決めていくことは困難です。ダイヤ設定を楽しむには「時間拡張」が「30倍」のマップを選んだり、マップコンストラクションモードで自作したりしましょう。
個々の設定画面での設定方法(操作方法)そのものについては公式マニュアル(ヘルプ)をよく読みましょう。検索するときは「時間設定」や「発車設定」などの自分で勝手に考えた適当なキーワードではなく、マニュアルやゲーム画面に出てくる「駅のダイヤ設定」や「ポイント分岐設定」などの用語を正確に入力しましょう。用語が正確に使われていれば情報の信頼性は高まります。正確な用語を使って検索することが信頼できる情報への近道です。
A列車で行こう9・Exp.のポイント分岐設定は、そこにあるポイントを物理的に転換するという発想ではなく、列車ごとに進路を決めておくという発想になっています。プラレール®や鉄道模型のポイントに慣れている人は混乱しやすいので注意しましょう。学校の同好会や鉄研で「連動装置」を自作している人なら理解は万全です。本作はゲームソフトですが、画面上で動いたり設定したりするもの1つ1つが、現実の鉄道ではどのような装置や人員によって動いているのかを知ることが大切です。
※A9V4のニューゲーム「ひしめきあう街」と「砂浜とウォーターフロント」では、複線の路線の終端の駅で、駅の先にループ状の線路を引いて、列車が「折返」もポイントも使わずに、複線の反対側の線路に進むようにされていますが、これでは編成の向きが変わってしまいます。実車で言えば、同一の方向にばかり走行していては部品の摩耗が偏ってしまいます。いくらゲームだからといって、現実の鉄道を無視して画面上だけで考えたことを実行してしまうのは感心されません。専門知識よりも自分の思い付きを優先してしまうのは非常に尊大な態度に見えてしまいます。
A列車で行こう9・Exp.の駅のダイヤ設定は、設定画面が駅ごとに分かれていて、1つの路線(運行系統)全体を通しで見ることがサポートされません。もっとも、視点を特定の1つの列車に置いてしまうとマップ全体での運行のようすがわかりにくくなってしまいます。設定画面が駅ごとに分かれていることは、わかりにくいようで実は、確実にわかるようにするための工夫でもあると言えます。全駅全列車全時刻が掲載されている市販の時刻表のイメージで本作のダイヤ設定をしていこうとすると確実につまづきます。あるいは、しなくてもよい無駄な作業ばかりを延々とすることになってしまいます。路線の中間駅でのダイヤ設定は「停車時間(分)」と「通過」のどちらにするかというくらいしか考える必要がありません。「発車時刻」は始発駅だけで考えます。始発駅で「発車時刻」を変えるだけで済み、中間駅は何も設定を変える必要がないように設定しましょう。
A列車で行こう9・Exp.の設定画面は、プログラミングやパソコンに(20年以上)慣れた人が、自分と同じくらい(20年以上)プログラミングやパソコンに慣れた人しか使わないだろうと思ってデザインしたかのようなデザインになっています。PS4のプレーヤーには大きな戸惑いがあるでしょう。「セーブ」「ロード」「ブランチを切る」「マージする」のほか、「選択」「選択状態」「選択解除」「未選択」などの挙動についても理解しておきましょう。パソコンを使っていてもブラウザーとワープロソフトとプレゼンテーションソフトしか使っていない人には、よくわからない画面だと思います。プログラミングが得意でなくてもよいので、表計算ソフトを使いこなしていれば大丈夫でしょう。
A列車で行こう9・Exp.のダイヤ設定で最も重要な操作は「セーブ」です。一度にすべて設定しようなどと欲張らず、1つ1つの行路などを確実に設定し、正しく設定できたら「セーブ」することです。失敗したときは前回の「セーブ」に戻って続けます(失敗してぐちゃぐちゃになったダイヤを手作業で元に戻そうとする必要はありません)。最近のゲームでは必ずしも「セーブ」という概念のないものも多いので説明が必要だと思いますが、公式マニュアルでも公式ガイドブックでも「セーブ」について説明がない(どのようなときにセーブするとよいのか具体的な教示がない・進行中のゲームを破棄してもよいと明言されていない)のは、やや不親切かも知れません。
設定中に「失敗した!」と気づくことができればよいのですが、必ずしも気づけるとは限りません。どこで何が起きたのかわからないまま、気づくとマップ全体のダイヤが狂っていたり、列車という列車がにらめっこして動かなくなっていたりします。この場合も、以前の「セーブ」に戻って再開し、どこで設定ミスが顕在化してダイヤが狂うのかを突き止めます。A列車で行こう9・Exp.のダイヤ設定は、まさにプログラミングのような作業だと思います。「セーブ」するたびにビルド番号がまた1つ上がりましたな(おたくもですな)といった感じでございます。なお、セーブデータの削除は極力しないようにしましょう。履歴を残すつもりで置いておくと、ふとしたときに再び開いて、マップの発展の経緯を振り返って懐かしむことができます。
身もフタもないことを先に言ってしまいますと、「ダイヤウィザード」が役に立つことは(ほぼ)ないでしょう。A列車で行こう9・Exp.の「ダイヤウィザード」は、「ウィザード」と名のつくいかにも親切そうな機能が「…あります!」とアピールするのに必要な最小限の哀しきララバイ『アリバイ』程度の実装です。「ダイヤウィザード」の使い道は「時間復帰」にあります。「ウィザード」という名前から想像されるような質問に答えていくと自動でダイヤ設定が出来上がるような機能ではないということです。機能の名前がいけないだけで「時間復帰」という機能は便利です。なお、さらに身もフタもないことを言いますと、この「時間復帰」はWindows版にしかないようです。PS4版「A列車で行こうExp.」の「ダイヤウィザード」は本当に何の役にも立ちそうにありません。
A列車で行こう9・Exp.のダイヤ設定では、どんな設定をしてもエラーやアラートの類はいっさい出てくれません。設定内容の妥当性はユーザーに完全に委ねられています。ダイヤ設定に矛盾や不備があると、線路上で列車と列車が鉢合わせして止まってそれっきり、というのがA列車で行こう9・Exp.のダイヤ設定の実際であります。列車を「撤去」してやり直すか、設定がうまくいっていたときのセーブデータを開き直して開き直るやり直すかします。ダイヤ設定のミスによって草むしりと計算ドリルただちにゲームオーバーになるといったことはありません。
ここでは考え方(背景知識)の1例を紹介します。
[ 画像でダウンロード | サウンド(PIXTA:102022833) ]
※鉄道のダイヤやポイントについて、Nゲージや鉄道博物館、現業機関が主催するイベントなどを通じてよく知っている人(客観的に言って決して初心者ではないにもかかわらず「A列車で行こう9」「A列車で行こうExp.」に関しては初心者ということにされてしまっていた多くの人々)がむしろ戸惑う点について大きなサイズの文字で記しましたので、ご笑納ください。どこのページを見てもピンと来なかった人が聞きたかった説明はこれだと思います。言ってしまえば簡単なことではあるのですが、こんなことをどう言えばいいのかわからないということがあったと思います。ここに記した文言とまったく同じ文言を、どなた様もお使いいただけます。
このサイトは、筆者が1999年5月に開設した「フォーラム」からの抜粋(ダイジェスト版)です。「ダイヤグラム総合(仮称)」には「フォーラム」25年分の何かが詰まっています。いまから25年かけて読めとは言いませんが、大学の科目の1つのように、半年もしくは1年かけて、じっくり味わってほしいと思います。リンクを開いて「フォーラム」が出たときに、ページの体裁がこのサイトとは違うことから「関係ないものが出た」「だまされた」などと勘違いして怒る人がいるようですが、とんでもありません。個々の内容について詳しく知りたいときは「フォーラム」の記事をお読みいただく必要がありますし、むしろ「フォーラム」のほうが本体です。自分が最初に見たものは本物で、後から目に入ったものは偽物だと感じてしまう心理的な作用があるといいます。
「A列車で行こう9」はPCゲームですから、このサイト(および「フォーラム」)はPC(Windows)での閲覧を想定して作成しています。ウェブページの本文が丸ゴシック体で表示される環境で読むのはつらいでしょう。スマートフォンで検索して見つけるところまではよいですが、ちゃんと読むときはPCで開き直してほしいと思います。複数の動画を見比べさせたり、PDFを参照させたりする箇所もあるので、スマートフォンでは厳しいです。PC向けのサイトであることを理解しないままスマートフォンでは見づらいことに文句を言うようでは筋違いも甚だしいと言わざるを得ません。PS4版「A列車で行こうExp.」をプレーする人にもPCは使っていただく必要があります。ビバPC。フォースPCとともにあれ!
※逆に「ダイヤグラム総合」の最初のページ(目次)だけを何度も何度も開いては「何も書いてない」と怒る人がいるようなのですが、あまりにもウェブサイトの見かたを知らなさすぎるとしか言えません。2秒でわかることしかわかろうとしない。セッションの概念がないにも程があります。単なるタブの閉じ忘れかもしれませんが。
ある時代までは、「PCができる人」は「プログラミングができる人」と同義でした。そのような時代に生まれたPCゲーム「A列車で行こう」シリーズの長い歴史に敬意を表して、「A列車で行こう9」を遊ぶ前に(高校程度でよいですから)「プログラミングができる」と言えるようになっておくとよいでしょう。職業的な技能として習得を目指すのとは別に、例えば「疑似コード」のように、特定のプログラミング言語に依存せずプログラムの動作(ロジック)を考案・記述できるようになっておくことも非常に重要です。これには学習の初歩の段階で「対話型」の実行環境(「インタプリタ言語」)を体験することが非常に有用と考えられてきています。
それはつまり、抽象的な思考が発達の途中である年齢の小学生や中学生に「A列車で行こう9」は早いということです。もちろん、得意な人であれば「ダイヤ設定」を『なんとなく』できてしまうでしょうが、他人(特に目上や年上の人)にうまく説明することは、まずできないでしょう。
※高校生になりたてくらいの時期までは、どんな知識を持っているかということと「年齢」(学年)とが完全に一致している(ように感じられる)ので、大人は何でも知っているはずだと思いこみやすい。自分が知っていることを知らない人がいると見下すという態度にもつながりやすい。大人の世界は専門がものすごく分かれていて、習っていないことはまったく知らないわけですが、大人なのに知らないことがあるというのを許せないといった気持ちに(子どもは)なりやすい。重役へのプレゼンで胃の痛い若手がごとく校長先生といっしょに給食を食べましょう!
当然ながら、自分が高校生だったときにプログラミングの授業がなかった古い世代の人にあっては、いくら鉄道に詳しかろうとも古今東西のゲームに熟達していようとも、大学または(一般的な)専門学校でプログラミングを習った人でないと「A列車で行こう9」で「ダイヤ設定」を的確に行なうのは非常に困難でしょう。いきおい、ものすごくニッチなテクニックの一つ覚えに陥るか、あまりにも初歩的なことをたどたどしく達成しただけなのにうまくできたと思ってしまうか、両極端になりがちです。ゲームを無視して鉄道の雑学を開陳するばかりという見苦しい大人もたくさんいるでしょう。
※「A列車で行こう」と「シムシティ」をファミコンで遊んだだけで「古参」ぶる人がいますが、とんでもない。PCで遊んでいなければ、遊んだうちに入りません。PS2やPSPのアーカイブで旧作を遊んだ人も不十分です。それよりあとの据え置き型ゲーム機はPC同然なので、ご都合に合わせてどちらでも。ここまでの文脈からして、DS版、3DS版、Switch版はどうでもよい(別の世界の話だ)という感覚が生まれるのは当然です。
「動く仕様書」になぞらえて「動く運転曲線」と理解する
PS4版のプレーヤーには少ないかもしれませんが、Windows版「A列車で行こう9」のプレーヤーにはダイヤグラムを描くことを楽しんでいる人々がいます。ただ、小学校の算数で習うような素朴な方法で描かれる直線のダイヤグラムでは、列車の加減速を詳細に扱うのに向きません。ゲームの中で「速度制限標識」を多用したり、ホームの長さや列車の編成の長さをいろいろ変えたりしたときに実際にうまく走れるのかはダイヤグラムという形式の図面だけではわからず、ゲーム画面で試してみることが必要になります。
現実のダイヤ作成では「運転曲線」を考える必要があります。各駅での時刻を点々と並べて直線を引くだけのダイヤグラムでは扱えない部分です。それでは「運転曲線」というのは、すごく難しいものなのでしょうか。いいえ。あなたが「A列車で行こう9」の画面で列車が発車して加速し、いくらか走ったら減速して駅に停まる、そのようすを見ている、それこそが「運転曲線」です。いわば「A列車で行こう9」というソフトウェアは「動く運転曲線」です。
- 鉄道総合技術研究所(鉄道総研)「運転曲線作成システム(SPEEDY)」
列車の能力(最高速度、加速能力、ブレーキ減速度等)を十分発揮しながら走行したときの各位置での列車速度を示した曲線が速度曲線/速度曲線を元に出発後の列車の経過時間を表したものが時間曲線/二つの曲線を総称して運転曲線と呼びます
設備改良・新製車両の投入などの投資をどのように行えば、より時間短縮効果を得ることができるかといった検討にも運転曲線は役立っています
SPEEDYの基本的な運転曲線を計算する技術は、省エネ運転や閉そく割りの検討のシステムに応用されています
- 東芝情報システム「モデルベース開発とは?」
モデルが動く仕様書となる雑な言い方をすれば、現に目の前で動いているプログラムがあればそれが仕様書だというのが「動く仕様書」という言い方で(やや自虐的に)言っていたときのニュアンスだったと思います。「動く仕様書」という言い方が一種の流行語になったあとからのこのこ出てきて「わが社も「動く仕様書」とかいうものをひとつ」と言わんばかりのお上品な大手メーカーがお上品に「動く仕様書とは」を定義しようとするとおかしくなってしまいます。「動く仕様書」という言い方は雑に使ってこそ。PG(プログラマー)最大の美徳は「怠惰」だということに疑いの余地はないと断言できます。
現に目の前で列車が走っていればそれが運転曲線だというのが「A列車で行こう9」なのです。わざわざ直線だけでダイヤグラムを描く退化したような方法をとる必要が、そもそもありません。「A列車で行こう9」の中だけでできます。それではなぜ「A列車で行こう9」といえばダイヤグラムを描いてみせないといけないような気がしてしまうのかというと、現在のように動画配信ができたわけではない時代の「A列車で行こう7」や、ユーザー間でのデータの交換ができなかった「A列車で行こうDS」などで列車が走っているようすを見せるにはダイヤグラムを描くとよかったというだけのこと。いまは動画で見せるのも容易で、セーブデータを共有することも可能ですから、わざわざダイヤグラムを描くという七面倒なことをしなくてもじゅうぶんだと思います。もっといえば、描かれたダイヤグラムには誤りがあるかもしれませんが、セーブデータには完全なデータがそのまま含まれていて、これを共有しない手はないともいえます。
A列車で行こう9・Exp.のダイヤ設定に関する誤解を解く
- A列車のダイヤ設定に所要時間の計測は不要です
「作成」と「設定」は違います・ダイヤグラムを描くには所要時間の計測が必要ですがゲームの中でダイヤ設定を行なうだけなら不要です(うまく走れたか、うまく追い越せたかを見た目で見るだけでじゅうぶんです)
- A列車のダイヤ設定で全駅全列車全時刻の入力は不要です
ゲームのプログラムに用意されたダイヤ設定の機能の全体像を理解せず、別のソフトを使ったり手で描いたりしたダイヤグラムを見ながら入力しようというのがそもそも適切な態度ではありません(ゲーム内に欲しい機能があるならきちんと要望すべきです)
- A列車のダイヤ設定では駅の設定とポイントの設定が必要です
ポイントの設定方法の全体像を理解せず、むやみに列車や線路ばかりを増やして「超過密ダイヤ」だの「複々線」だのと言葉ばかり飾り立てるのは滑稽ですらあります(時刻表という発想だけではダイヤ設定は完結しません)
- A列車のポイントは分岐側のみの設定で設定値を列車側に持たせる仕様です
鉄道模型のポイントでポイントを理解した人には「インチキなゲーム」と見える・ポイントの転換という物理層を抽象化した運行管理システムの発想に沿っていてむしろリアルだということを知りましょう
- 「不確定要素の事前設定による連動図表の効率的自動生成」鉄道総研報告(2009年1月1日)
配線略図に記載されない不確定要素(過走余裕区間鎖錠/内方信号機閉路鎖錠の信号制御軌道回路/進路表示機表示/入換標識(線路表示式)の信号制御条件/現示時素/進路区分鎖錠の区分方法/進路鎖錠における早期解錠/進路鎖錠における軌道回路短絡不良対策/時間鎖錠/接近鎖錠又は保留鎖錠/安全側線緊急防護装置/方向てこ/CTC関連てこ)/過去には,連動図表の記載漏れにより,異線進入となった事故も報告されているポイントで直進するのか分岐側に進むのか(駅の何番線に入るのか)を車掌と運転士はあらかじめ指示を受けていて、その箇所を通る前に、指示通りの進路が開通しているのかを確かめます。これを知っていれば、ポイントの設定値を列車側に持たせる(ように見える)「A列車で行こう9」の実装も、さほどへんてこなものだとは感じないでしょう。…てこだけに。
本作の「ダイヤ設定」には「個別発車」という設定がありますが、マニュアルでは「任意の発車時刻を、複数指定することができます。」と説明されています。この「任意のなになに」という言葉はプログラミングに特有のもの。本来、プログラムで自動的に(≒パターン化して)処理すべきところに人間が介入して値を上書きする、手動で入力した値を使わせるというニュアンスです。プログラムに任せていれば処理の完了が保証されているのに、わざわざ未知の値を汚らしく入力してしまう「いけないこと」というイメージが「任意のなになに」という言葉にはあります。しかしどうでしょう。国語辞典に「その人の自由意志にまかせること。」と書いてあるからといって「何も制約を受けずに発車時刻を自由に設定できます。」と言い換えてはいけません。プログラミングに特有の「任意のなになに」という言葉すらも理解していないままでは「ダイヤ設定」を的確に行なうのは難しいでしょう。
※専門用語は専門の教科書の中で学ぶべき、業界用語の類は業界に飛び込んでから覚えるべきで、子どもが学習用の国語辞典で引くものではありません。
※「某巨大掲示板のスレ」からウィキに転載されている「短い引込線のポイント時間設定で直進と折返を切り替える」方法は、数学の「別解」を自慢する中学生のよう。「某巨大掲示板」のユーザーなのだから相当の年齢のはずなのに、ゲームの話になると中学生のレベルになる人がいます。それだけゲームがおもしろいということは認めます。
※ウィキに「設定できるのは0~24時の間で」「6~26時まで10分間隔で発車するようなダイヤは設定できない。」と書いてあった。「パッチ113で対応。」と追記された後になお「8時から6時間間隔(8,14,20,26時)で発車するようなダイヤは設定できる。(2時から6時間間隔と同じなので)」と書いている人がいる。「2時から6時間間隔」という読み替えをしないと設定できないのではなく「8時から6時間間隔で26時まで」そのままの設定がちゃんとできます。PS2版「A列車で行こう6」の開発者が発明して今作まで受け継がれているプールのレーンのアレ「発車間隔時間」のUIは、見た目の素っ気なさで誤解されやすい(出来が悪いと思われてしまう)かと思いますが、実は非常にこなれています。「個別発車」が実装されたのはこれよりあと。「発車間隔時間」の使い勝手のよさを理解しないまま「実質、何も設定できない」と思いこまれた上に、「個別発車」が最新の実装だからといって(それ以前の実装が「問題だらけ」だったのを最新の実装が解決してくれたと思いこんで=以後は最新の実装だけを使えばよいのだと思いこんで)、すべてを「個別発車」で設定しようとする極端な態度のプレーヤーが生まれてしまったのだと思われます。
※もう1つ興味深いのは、ウィキで「何も制約を受けずに発車時刻を自由に設定できます。」に続けて「簡単に言えば上記までの停車設定を複合させたい場合。」とも書いてあることです。マニュアルの「複数指定することができます。」の「複数」という言葉に対して、具体的な数的イメージを持っていないようです。「複数」という言葉で言ったとき、それは2~3個、ほんのわずかな数だという暗黙の了解があります。「複数」という言葉を字面として見るだけで意味を考えていないので「複合」という言葉がつられて出てくるのだと思いました。「簡単に言えば」という表現は、自分でもよく理解できていないことを他人に説明しなければならないときに出てきやすいものです。ただ、これはもともと「某巨大掲示板のスレ」からの転載で、もとの投稿は当該のアップデートパッチが出た当日くらいのタイミングで書かれているものであるはずです。当時のユーザーの混乱ぶりをよく記録しているとも思います。
※高専でプログラミングを習った人には、まるで高専の教授のような頑迷さと乱暴さを感じる時があります。専門学校の講師のほうが「普通の人」で「謙虚」だと思います。あと、大学の文系の人にありがちな「VBA」と「JavaScript」ではだめです。部品感覚でできてしまうので全体像をつかむ能力が育ちません。高校の理科の教員ながら、自分が大学生の時にはプログラミングをやっておらず、業務の傍らどうにかこうにか独習した(入試の合否判定にも時間割の作成にも成績をつけるにも使う=つまり学校の業務で使う)「VBA」を授業で使っているというのも(その授業を受ける高校生にとって)危うい。このサイトはほめぱげ「HTML」を「テキストエディタ」で“手打ち”しています。
シミュレーションゲームとは
シミュレーションとは、現実の環境を模した実験環境を構築し、現実にはやりにくい実験をすることです。現実の環境では実験の条件を統制しきれず、現象のメカニズムを解明できないことがあります。また、実験をすることによって環境が変わってしまい、実験を何度も繰り返すことはできないということもあります。シミュレーションでは、条件を固定して網羅的に何度でも実験することができます。いちばん有名なのは、スーパーコンピューターを使った「地球シミュレータ」でしょう。
「A列車で行こう9」は「都市開発鉄道シミュレーション」というジャンルを掲げた作品。現実の都市と鉄道の関係を模した、一種の実験環境です。現実の環境ではいろいろなことが混ざってしまい、効果や特徴などが鈍ってしまって、よくわからなくなっています。ひとくちに都市と鉄道の関係といっても実に複雑です。ゲームの中では、現実にはあり得ないほどくっきりと個々の関係性や施策の効果が見えます。「そういうことだったのか!」と納得できることがたくさんあると思います。「ゲームだからリアルではない(うそっぽい・作り物っぽい)」という言い方をする人もいますが、『リアル』(現実)ではないシミュレーションの環境だからこそメカニズムがクリアーに見えてくるということがあって、そこに生々しいリアリティ(現実味)を感じるということはあるでしょう。
ほかのジャンルのゲームと比べて、シミュレーションゲームのプレーには高いレベルの能動性と総合力が求められます。ゲームを開始すればゲームのほうからおもしろいものを見せてくれるというジャンルではありません。だいたいの場合、プレーヤーが何もしなければ、何も起きないばかりか、あっけなくゲームが終わってしまいます。この「あっけなく終わってしまう」ということを「時間」だけの問題だと思ってしまい、つまりプレーを速く進めれば『勝てる』のだと考え、まるでほかのジャンルのゲームと同じように俊敏性と即応力を追求してしまう人も少なくありませんが、それではシミュレーションゲームというジャンルを理解できているとは言えないのは論を待たないでしょう。
「A列車で行こう9」というゲームでの具体的なことでいえば、「同時発車すると乗客ゼロの列車が発生する」といって怒る(「ゲームの出来が悪い」と言って非難する)ばかりで、自分では何も考えない人がいます。この場合、「同時発車を避ければよい」だけです。このゲームではそういう挙動になっているのだから、それにあわせたやりかたを考える。ゲームシステムを理解してダイヤを組むというのは、例えばそういうことなのです。
「乗客が全員、隣の駅で降りる」という挙動も、「オプション」から「詳細ダイヤグラム」の「乗客対応」を有効にして使いこなすよう、促されているかたちです。そもそも「隣の駅」に停車させるのか通過させるのかも、ゲームが決めてくれるわけではなく、プレーヤーが決めることです。自分で決めるという態度や覚悟を持たず、目の前のゲーム画面で起きることをアサガオの観察か何かのように(他人事のように)述べていてはいけません。
能動的でありさえすればいいかというと、こんどはゲームシステムを無視して現実の鉄道路線の時刻表を持ってきて『再現』しようとする人が出てきます。時刻表には全駅全列車全時刻が掲載されているので、ゲームの中でも全駅全列車全時刻を『手動』で入力しなければ気が済まないようです。でも、時刻表の「時刻」は季節ごとにころころ変わる部分があります。ニュースリリースでは「時刻については最新の時刻表をご確認ください」というような注意書きがあります。ある列車を実際に何時何分に運転するというのは、鉄道会社の計画の中では末端のこと。天候や予期せぬ混雑により列車が遅れることも日常的に見られますし、そもそも国電区間では発車時刻が定められていない駅のほうが多いのです。「A列車で行こう9」というゲームの中でプレーヤーが考えるべきは、個々の列車の具体的な時刻ではなく、そもそもどのようなダイヤを組んで、どのような輸送を実現するのかという、春のダイヤ改正について前年の暮れに発表される概略のレベルのことなのです。
ここで重要なのが総合力。鉄道のダイヤは鉄道の都合だけで完成するものではなく、都市との関係の中で見い出されていくものです。「A列車で行こう9」というゲームでいえば、ゲームシステムの全体像(列車の収支のしくみ・都市の発展のメカニズム)をよく理解して、各駅からの乗客数と定員が見合った列車を運行し、駅周辺の開発を進めたい駅で乗客を降ろす。鉄道と都市の両方をよく見て、同時に考えてプレーしていくための力が総合力ということになります。
「A列車で行こう9」というゲームでは「発電所」がゲームのすべてを支配しています。発電量(発電所の種類と数)に対して電力需要(建物の消費電力)が足りないと、発電部門が巨額の赤字を計上してきます。一刻も早く建物を増やし、発電量を使いきる必要があります。この場合、都市の開発に時間をかける猶予はないでしょう。しかし、「A列車で行こう9」の発表時に「発電所」は「夜景」と関連づけて紹介されていたので、本作の「発電所」を単なる『彩り』としか思わないプレーヤーが多いようです。「発電所」をまったく見ずにプレーしていては、ゲームオーバーになって当然としか言えません。
「3すくみ」という言葉もありますが、同時に考えないといけない要素が3つになると、お手上げになってしまう人がいます。これは上手い下手ということでなく、そもそも難しいということです。シミュレーションゲームとは何だったでしょうか。現実の環境では統制しきれない実験条件を固定することができるということでした。「A列車で行こう9」というゲームでいえば、「発電所」まで同時に考えるのは難しすぎる、ゲームを進めながら「発電所」を増減させてしまうと『堂々巡り』になってしまって収拾がつかなくなるとも言えます。その場合、「発電所」についてはゲーム開始時のまま触らない、固定の条件にするというのが第一の方策でしょう。
※じゅうぶんな発電所がない状態から開始になるマップや、発電所の種類と数を自分で決める必要があるマップコンストラクションモードでは、「火力発電所1基」が基本になると思います。
ダイヤを組む段階でも同じことは言えます。ダイヤを組みながら施設を変えない。施設をどのようにするかというのは先に決めておく。都市の開発をどこでどのくらいの規模や種類(産業)で行なうのかも、先に決める。これは「A列車で行こう9」というゲームが決めてくれることではなく、自分で決めることなのです。シミュレーションの条件をうまく統制する責任は、シミュレーションを行なう自分の側にあるのです。「とりあえず成り行きを見て『出たとこ勝負』で」などという甘言が通じるわけはありません。あえていえば「何もしないで早送りする(ゲームオーバーになる原因を先に知っておく)」というのは有効で、この結果を「ベースライン」にして考えていくとよいでしょう。
シミュレーションゲームの「ゴール」とは何でしょうか。あるいはシミュレーションの結果のよしあしは、何によって判断すればよいのでしょうか。多くのシミュレーションゲームでは時間を制限するなどして、一定時間内に何を達成したかや、そのスピードや効率を「スコア」にして、プレーの内容を評価するものが多いと思います。残念ながら「A列車で行こう9」というゲームには「スコア」を出してくれる機能はないので、プレーヤーが自分で出す必要があります。幸いにも「A列車で行こう9」というゲームの中にはさまざまな数字が出てくるので、それらをうまく使ってプレーの内容を評価する「スコア」を出すことは可能です。いろいろ工夫してみてください。
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